二兎を追う者は一兎をも得ずという諺がある。
「欲張ってはいけない。目の前の物事に集中しろ」
という格言なのだと思う。
日本人はこういう格言が大好きだ。
足ることを知り清貧を好む。
それは古来から大切にしてきた
日本人の美意識なのだろう。
私もそれを否定するつもりはない。
ただその美意識を誤解しないで欲しいだけだ。
良い格言を誤解し、都合よく曲解し、
周りの人に押しつける。
これは日本人の悪い癖である。
格言とはもっと奥深いものだ。
決してその本質を見誤ってはならない。
人は走りながら考えることはできないし、
背水の陣など敷いてはならないし、
努力が必ず報われるとは限らないのである。
二兎を追うものだけが二兎を得る。
それは古人の教えとは何ら矛盾しない事実だ。
硬い頭を柔らかくし、
古人の教えをいま一度ひも解いてみたい。
古人はこう言っている。
同時に二兎を追うのはやめておけ。
そんなことをしたらどちらも取り逃してしまうぞ、と。
おっしゃる通りである。
人は走りながら考えることはできない。
同時にふたつの物事をこなすのは不可能である。
だがそれは今この瞬間の話。
つまり二兎を追ってはいけないのはこの瞬間だけ。
1時間後に別のウサギを追いかけ、
また1時間後に別のウサギを追いかけても、
なんの問題もない。
そんなことは当たり前じゃないかと
頭の固い人は言うだろう。
だったらなぜ副業やダブルワークを
否定するのだろうか。
二兎を追うもの一兎も得ず。
本業に集中しなさい、それがあなたの為だ。
などと、したり顔で言うのだろうか。
同時にいくつもの仕事を持つことはできる。
そんなことは当たり前ではないか。
今この瞬間はひとつの仕事に集中し、
次は別の仕事に集中し、
またその次は別の仕事に集中すればいい。
家事や子育てに忙しい主婦なら
普通にやっていることである。
重要なのは今この習慣に他のうさぎを追わないこと。
1時間前に逃したウサギを悔やんだり、
1時間後に追いかけるかもしれないウサギを
心配したりしない。とりあえず今は忘れる。
目の前のうさぎに100%集中する。
時間管理やスケジュール管理は
そのために存在するのである。
国語と算数の宿題ばかりやっていたら、
夏休みの最終日に絵日記だけが残る。
こうなったらもうお手上げだ。
毎朝、昨日のことを思い浮かべて絵日記を書く。
それが終わったら算数の宿題をやり、
昼ご飯を食べたら国語の宿題をやる。
3つやっても遊ぶ時間は山ほどある。
尚、同日配信のメールマガジンでは、コラムと同じテーマで、より安田の人柄がにじみ出たエッセイ「ところで話は変わりますが…」と、
ミニコラム「本日の境目」を配信しています。安田佳生メールマガジンは、以下よりご登録ください。全て無料でご覧いただけます。
※今すぐ続きを読みたい方は、メールアドレスとコラムタイトルをお送りください。
宛先:info●brand-farmers.jp (●を@にご変更ください。)
1件のコメントがあります
今の一瞬を過ぎたら、何も無しで次の一瞬一瞬に好きなことに、可能性に取り組む状態が一番幸せなことではないかと感じました。いつも深いコラム、ありがとうございます。