社員教育を有料化せよ

有名洋菓子店での残業が社会問題になっている。
パティシエになりたい若者相手の
「やりがい搾取」というわけだ。
パティシエになりたいなら訓練が必要である。
それは自分のプライベートな時間を削ってやるべきだ。
それが会社側の主張。

経営者の感覚からすれば当然のことであるが、
今の時代はこれが通用しない。
仕事が終わった後にパティシエの訓練をする。
これは残業であるから残業手当を払わなくてはならない。
そして残業を増やし過ぎてはならない。

できれば業務時間内で終わらせるように。
それが日本で人を雇用する条件なのだ。
だが就業時間にパティシエの訓練などしたら
人手が足りなくなってしまう。
だったらもっと人を雇えばいい。
ではその人件費はどうすればいいのだ。

「値上げすればいいだろう」というのが
役人たちの発想である。
安売りばかり考えているからダメなのだ。
安売りがよくないのは私も同意見である。
だがどうしても違和感が残る。

そうまでして育てたパティシエが「一人前になったので
辞めさせてもらいます」と言ってきたらどうするのだ。
辞めることは社員の権利だ。
一人前になっても定着してくれる保証はない。
だったら育てるだけ損ではないか。

そこで経営者は考える。もう育てるのはやめよう。
人のスキルに依存しない仕組みをつくろう。
そうやってケーキはセントラルキッチンで
作られるようになる。
これは働く側にとっても不幸なのだ。
残業代などいらないから訓練させてほしい。
そういう前向きな人材もたくさんいるのである。

だが日本の法律ではそれが許されない。
だったらどうすればいいのか。
答えはひとつしかない。教育を有料化するのだ。
これはパティシエだけの話ではない。

営業も、開発も、人事も、広報も、
すべて有料で教育する。
働きたい人はお金を払って研修を受ける。
きちんとスキルが身についたら採用する。
これなら高い報酬を払っても元が取れるし、
できない人材を抱える心配もない。

自腹だから受ける側も真剣になる。
いい事づくめではないか。
社員のことを想ってタダで研修しても
労働とみなされてしまう。
払うか、払わせるか、どちらかしかないのだ。

採用してから育てるのではなく
育ててから採用する。
育てる費用は本人に払ってもらう。
その分給料を上乗せすればいい。
これは理想論で言っているのではない。
必ずこうなるだろうという私の未来予測である。

 

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1件のコメントがあります

  1. そもそも、国の教育は明治時代の国民国家(軍隊・サラリーマン養成等)を作るための国のための教育、会社の社員教育は会社のための教育である。自分の育成や自己投資を国や会社などの第3者に依存するのは、よくよく考えてみれば、恐ろしいことだと感じました。
    自分の長男が4月から就職しますが、自ら自分を育成、及び私は親(社長)としての経営教育をしていこうと感じました。
    コラムの動画作成と配信、ありがとうございます。

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