企業利益ゼロの時代

オンライン化が進むほどに企業の利益が減っていく。
このトレンドは小売業界ではもはや常識である。

店舗を持たず、店員も雇わず、
最低限の利益を乗せてオンライン販売する。
同じ商品であれば消費者は当然安いほうを選ぶ。
オンラインなら家まで商品を届けてくれる。

量販店は仕入れ力で対抗するが必ず限界が来る。
実物を見てから買いたい人にとっても、
実店舗はもはやショールームでしかない。

見て、触って、オンラインで購入する。
知名度はなくてもコメントを見れば
オンラインショップの信頼度は分かる。

利益が出なくなった家電量販店が、
今ではリフォームや家具まで販売している。
経営者がここから学ぶべきことは何だろうか。
それはオンライン化がもたらしたものの本質である。

できるだけ安く仕入れて、できるだけ高く販売する。
これが商売の基本原理である。
しかし右から左に商品を流すだけでは限界がある。
そこで多くの日本企業は材料に加工を加えて
付加価値を生み出してきた。

しかし、そこにも限界が来ている。
なぜ限界が来るのか。
人件費の安い新興国の技術力がアップしたから。
それは事実ではあるが本質ではない。
これは起こるべくして起こった結果なのである。
つまり自由競争の結果なのだ。

できるだけ安く仕入れるためには大量の仕入れが必要だ。
そこで企業は拡大へと突き進み市場の寡占化が起こる。
寡占化した企業同士が談合することは許されないので、
仕入れと販売の競争はさらに続く。
気がつけば商売の原理原則に反する
逆転現象が起きている。

できるだけ安く仕入れたいが、
高く買わないと良い材料を買い負ける。
できるだけ高く売りたいが、
安く売らないと消費者が離れてしまう。
利益を確保するために
企業は人件費を圧縮しようとするが、
やり過ぎると優秀な人材が他社に流れてしまう。

ぎりぎり高く仕入れ、ぎりぎり安く売り、
必要な人材を繋ぎ止めるために相応の報酬を支払う。
これしか方法がない。
そうやって最終的に企業利益は
ゼロに近づいていくのである。
オンライン化はこの競争を加速させたに過ぎない。

利益は残らないが社員はちゃんと生活できている状態。
それが企業競争の行き着くゴールである。
会社の利益=そこで働く人の報酬。
そうなると経営者にはリスクを背負うメリットがない。
稼ぎたい人は企業経営を目指すのではなく、
ハイスペックな個人事業を営むようになるだろう。

 

この著者の他の記事を見る


尚、同日配信のメールマガジンでは、コラムと同じテーマで、より安田の人柄がにじみ出たエッセイ「ところで話は変わりますが…」と、
ミニコラム「本日の境目」を配信しています。安田佳生メールマガジンは、以下よりご登録ください。全て無料でご覧いただけます。
※今すぐ続きを読みたい方は、メールアドレスコラムタイトルをお送りください。
宛先:info●brand-farmers.jp (●を@にご変更ください。)

 

感想・著者への質問はこちらから