安売り脳を捨てろ

もっと給料を高くしてほしい。
だけど物価が上がるのは嫌だ。
この矛盾が日本を貧乏にしていく
最大の要因だと言われている。

労働者=消費者という図式がある以上、
売価を上げられなければ報酬は増やせない。
簡単な算数なのだが庶民にはこれが見えない。
だから冒頭のようなセリフが出てくるのである。

給料は増やして欲しいが
モノやサービスが高くなるのは嫌だ。
結果的に国力は落ち、円安となり、
輸入に頼るエネルギー・食糧・資材は高騰していく。

だが給料は増やせない。
企業利益が増えていないからである。
物価は上がるが給料は増えないという、
最悪のシナリオが現実のものとなっているのだ。

そもそもの原因は価格を上げられないこと。
この一点に尽きる。
とはいえ庶民の気持ちもわかる。
今でも貧乏なのだ。
さらに物価が上がったらやっていけない。

給料は増やして欲しいが物価は安いほうがいい。
マクロで見れば矛盾するが、
庶民にはそんなことを考える余裕はないのである。
国家として見たら大きな問題ではあるが、
この感情を理解できなくはない。

私が理解できないのは売る立場の社員の感情である。
給料は増やして欲しいが値上げするのは嫌だ。
売りにくくなるしお客さんに嫌がられる。
仕事がやりにくくなる。値上げはしないでほしい。
自社の商品を安売りしたがる社員心理。
これが私には到底理解できない。

なにもマクロ経済について
語っているのではない。ミクロもミクロ。
売価を上げないと君の給料を増やせないよ、
という話なのだ。
しかし彼らは平気でこう言う。
給料は増やしてほしい。だけど値上げは嫌だと。

お客さんには出来るだけ安い価格で
良いサービスを提供して喜んでもらいたい。
そうすることで仕事のストレスも減る。
だけど給料が上がらないのは嫌だ。
そんなのは耐えられない。
いったいどうしろと言うのだろうか。

実はこの価値観を生み出しているのは
経営者自身なのである。
人も資材もできるだけ安く仕入れ、
できるだけお金を使わず売上を上げていきたい。
この心理が社員にも伝わっていくのだ。

経営者の価値観は必ず社員に伝播する。
良い商品やサービスが高いのは当たり前。
いい仕事をするにはお金がかかるのだと信じること。
99%の自信では足りない。
ウチはいい商品なのだから高いのは当たり前だと、
100%信じて経営すること。

そのために自分自身もいいものを高く買う。
その結果としていいものを高く売る。
これが経営者の持つべき脳みそだ。
安いことに慣れきった安売り脳を
経営者が持ったらおしまいなのである。

 

この著者の他の記事を見る


尚、同日配信のメールマガジンでは、コラムと同じテーマで、より安田の人柄がにじみ出たエッセイ「ところで話は変わりますが…」と、
ミニコラム「本日の境目」を配信しています。安田佳生メールマガジンは、以下よりご登録ください。全て無料でご覧いただけます。
※今すぐ続きを読みたい方は、メールアドレスコラムタイトルをお送りください。
宛先:info●brand-farmers.jp (●を@にご変更ください。)

 

1件のコメントがあります

  1. そのために自分自身もいいものを高く買う。
    その結果としていいものを高く売る。
    これが経営者の持つべき脳みそだ。
    安いことに慣れきった安売り脳を
    経営者が持ったらおしまいなのである。
    →その通りだと思う。日本の経済的な低迷は、殆どの原因が政府でもなく、従業員でもなく安売り脳に劣化した経営者の習性だと思います。経営者が変われば、政府に依存せずとも従業員も変わる。そう思っている今日この頃です。

時合 健生 へ返信する コメントをキャンセル