持つべき金銭感覚

孫正義さんが創業時たった2名のアルバイトに向けて語った逸話。
「ウチは豆腐屋のように1兆2兆とお金を数える会社になるのだ」と、
情熱を込めてソフトバンクのビジョンを熱弁したそうだ。みかん箱の上で。

あの孫正義から直接ビジョンを聞き、すぐ横で一緒に仕事ができる。
もし今このアルバイトを募集したら何千人という応募者が殺到するだろう。
しかしこの2名のアルバイトは1週間でソフトバンクを去ったそうである。

まさかこんな未来が待っているとは想像もしなかったのだろう。
もしそのまま残っていたら孫さんの片腕になっていたかもしれない。
伝説のアルバイトとして講演やテレビに引っ張りだこに
なっていたかもしれない。

そんなものは結果論であると多くの人は言うだろう。
会社を作っていきなり「1兆2兆」と語るような
怪しい経営者についていけるはずがないと。

じつは今、子供に金銭感覚を教えることが大きな課題になっている。
電子マネーで育った子供たちにはお金のありがたみを伝えにくいそうだ。

ピッとやれば何でも買えてしまう。
友達のお菓子まで一緒にピッとやってしまう。
これは由々しき事態だと大人は思う。
そのお金を稼ぐために親はどれほどの苦労をしているのか。
是非そこを理解させるべきだと。

まずは現金を使わせろという意見がかなり多い。
お金の原理とありがたみを理解するには現金が一番だというのだ。
確かに親は苦労してお金を稼いでいるかもしれない。
だが子供に苦労をさせたくないのであれば、
教えるべき金銭感覚はそこではないだろう。

苦労や我慢の対価がお金だというような価値観は、
絶対に子供たちに刷り込んではならないのである。
そもそも親である私たちは本当の意味で、お金という
ものの稼ぎ方、使い方を理解しているのだろうか。

お金は単なる記号でしかない。
ありがたいのは家族のために頑張る親の姿勢であって、
お金そのものではない。こんなものは単なる記号だ。
やりようによっては1兆2兆だって動かせるぞと教えればいい。

孫さんだからそれが許されるのか。
いや順番が逆だろう。お金に縛られていないから、
あそこまで自由な発想ができるのである。

お金がないこととお金に縛られることは別次元の問題だ。
子供をお金で縛ってはいけない。
教えるべきはお金を稼ぐ苦労ではなく、
お金を使うことによる無限の可能性だ。
現金など単なる紙切れ。子供の感覚は正しいのである。

 

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