二極化するスモールビジネス

採用コストはとんでもなく高い。採った人材は給料を払いながら育てなくてはならない。忙しい時期には頭を下げ、たくさんの残業手当を払いながら働いてもらう。それでも辞める社員が出てくるのだから経営者は大変である。この先、中小企業は間違いなく二極化していく。正確に言うなら、どちらかを選ばないと経営はもう成り立たないのである。

ひとつ目は徹底的な定着率アップ経営。定着率の悪さは採用では決してカバーできない。経営者はこれを肝に銘じておくべきだ。それはリピートのない美容室や飲食店を見ればよく分かる。新たな顧客を開拓するためにクーポンを配り続ける。広告費と割引とで余裕がなくなる。サービスの質がどんどん落ちていく。既存顧客の離脱が加速する。これと全く同じことが社内で起こる。

社員を雇用するなら定着率を極限まで高めること。まずは報酬を増やし休みも増やしていく。だがこれだけでは離職は止まらない。社員一人一人に向き合い、悩みを聞き、成長をサポートし、褒めるべき時は褒め、休ませる時には休ませ、嫌がる社内慣習は減らし、ここにいる理由を増やし続けていく。

社員のためにそこまでやっていられるか!こっちはちゃんと給料を払っているのだ。高い社会保険料まで負担させられているのだ。感謝されこそすれ文句を言われる筋合いなどない。と言いたい経営者の気持ちはよく理解できる。だが雇用をするならこれしか方法はないのである。

どうしても納得できない。やりたくない。できない。というのであれば潔く雇用は諦めよう。雇用にこだわらなくても組織を作ることは出来る。私の周りで増えているのは雇わない経営である。雇用を減らし、優秀な業務委託を増やしていく、という選択。おすすめは卒業を前提とした採用である。

期間限定社員として採用し2〜3年後に個人事業主になってもらう。重要なのは独立志向の人材を採用すること。目標があるから彼らは自分ごととして仕事に取り組む。アドバイスにも感謝して耳を傾け自発的にスキルアップしていく。だが社員だとこうはいかない。なぜ休みの日に仕事をしなくちゃいけないのだと考えてしまう。

雇用するならいかに心地よく働いてもらうかを全力で考える。それが嫌なら卒業を前提に採用し、自前の業務委託集団を組織化していく。中小企業にはこの二つ以外の選択肢がない。中途半端な組織は人不足で淘汰されていく。

 

この著者の他の記事を見る


尚、同日配信のメールマガジンでは、コラムと同じテーマで、より安田の人柄がにじみ出たエッセイ「ところで話は変わりますが…」と、
ミニコラム「本日の境目」を配信しています。安田佳生メールマガジンは、以下よりご登録ください。全て無料でご覧いただけます。
※今すぐ続きを読みたい方は、メールアドレスコラムタイトルをお送りください。
宛先:info●brand-farmers.jp (●を@にご変更ください。)

 

感想・著者への質問はこちらから