行動力の罠

結果を出す人と出せない人の違いは行動力であると言われる。どんなにいい話を聞いても、どんなたくさん本を読んでも、本人が行動しないことには何も変わらない。それは事実だろう。ではなぜ人は行動しないのか。そもそも行動する気のない人がなぜ本を読んだり、話を聞きに行ったりするのだろうか。

行動する気がない人はそもそも行動しない。講演に行ったり熱心に本を読んだりしない。その時点で行動はしているのである。ではなぜ結果が出ないのか。書いてあることや教えてもらったことを実行しないから。本当にそうだろうか。多くの人は実行を試みるのではないか。やったけれど結果が出ないのだ。

それは行動量が足りないからだと反論する人もいるだろう。結果を得たいならとにかく量をこなすこと。人の2倍では足りない。3倍でも4倍でも努力する。イチローも大谷翔平もそうやって結果を出してきたのだ。こういう話を聞くたびに私は違和感を覚える。果たして本当にそうなのだろうかと。

量によって質を超える。確かにそれはひとつの方法ではある。だがそこには大きな落とし穴がある。行動力に依存する人が陥りがちな罠。それは足し算思考である。「とにかく行動あるのみだ」と量にものを言わせるタイプは新たな行動をどんどんプラスしていく。どんなに忙しくても根性で乗り越えようとする。

だが人間である以上、持ち時間には限界がある。どうしても結果に対して近視眼的になってしまう。成果が感じられないと「この方法はダメだ」と次々入れ替えてしまう。これでは長期的な成長戦略が描けない。短期的な結果ばかりを積み上げても、想像を超える大きな成果を手にすることは出来ないのである。

小さな結果は確かに素早い行動力に比例する。だが大きな結果を得たいなら、行動するのではなく変化することを意識しないとダメだ。変化するには順番がある。まず今やっている何かをやめること。やめて空いた時間に新たなトライを入れる。入れ替える。これなら長期的視野でじっくり成果に取り組める。

そんな悠長なやり方は嫌だという人もいるだろう。だが大きな成果は短期では手に入らない。長期視野こそがイチローや大谷翔平の本質なのである。全てを入れ替える必要はない。入れ替えるべきは2割。今やっていることに足すのではなく今やっていることと入れ替える。それが結果を出す人の行動である。

 

 

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