原因はいつも後付け 第34回 「付き合うべき人は誰なのか?」

// 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

《第34回》付き合うべき人は誰なのか?

営業マンを辞めて1号店のバーを開業した時に驚いたことの1つ。
それが、全く電話が鳴らなくなったこと。

営業マン時代は頻繁に鳴っていた携帯電話の着信もなくなり、お店の電話も鳴りません。
あまりに鳴らないために故障しているのかと思って、お店の電話から自分の携帯に掛けてみたことすらあります。案の定、故障はしてませんでしたが、笑。

でも今から考えてみれば、これって当たり前のこと。
営業マン時代に相手が話をしたかったのは、会社の信用がある私であり、その会社を辞めて何の実績もないバーを開業した私に用のある人間なんて、いる訳ないのですから。


それから18年が経った現在。
事業を少しずつ大きくしていくにつれ取引先も徐々に増えていき、多くの人や会社に取引をしていただけるようになりました。

開業してゼロになった信用を、年月を掛けてコツコツ積み上げてきた訳です。

そんな時に起きた新型コロナウイルスによる売上の激減。
売上が順調だと思って取引をしてくれていた会社にとっては、想定外だったと思います。
そんな状況を目の当たりにして、いま私が感じていること。それが、

「こういう時ほど人や会社の本性が出やすい」と言う実感。

事業が順調に拡大している時は、多くの人や会社が取引を求めて来てくれるもの。
でも、いざこういう状況に自分が置かれてみると、人や会社の本性が見えてきます。

順調な時は協力的だった相手が、売上が減ったら離れていってしまう。
こんな事が実際に起こる訳です。
これは何も相手を非難している訳ではありません。

商売でやってる以上、取引するにあたり自社の利益を期待するのは当然でしょう。
原因が何であれ、売上が激減した会社から取引先が離れていくのは仕方のないことです。

そして今、こうして人の本性について書いている私だって、無意識のうちにどこかの取引先に同じことをしている可能性だってある訳です。

平常時にはなかなか見ることが出来ない、自分と関わる人たちの本性。
決して相手を疑ってかかった方が良いという事ではありません。

何が言いたいのかと言うと、
「こういう状況の時ほど、本当に付き合うべき人が誰なのかを考える良い機会」という事。

1号店を開業して以来、事業の拡大と共に取引先が増えていくことに私は喜びを感じていました。
なぜなら取引先が増えることは、自分が世間に認めてもらえた証だと感じていたから。
これは事業を起こされたオーナーなら、みな同じではないでしょうか?

でも今回、新型コロナの影響で売上が激減して私は感じたのです。
商売をする上で大切なのは、取引先の「数」ではなく、「質」ではないかと。

幸い、今のような状況においても「こんな時だからこそ、力を貸したい」と言ってきてくれる取引先もあり、取引に困っている訳ではありません。

「取引に自社の利益を期待するのは当然」
これは私が先ほど書いたことであり、これが間違っているとは思いません。

ただ、あまりにお互いが目先の利益だけを期待した関係は寂しいような気がするのです。
事業をやっていれば、良い時もあれば悪い時もあります。

お互いが依存し合うのではなく、お互いが自立していること。
ただ、それでもどちらかが困った状況の時は、助け合って乗り越えていけるような関係。
それこそが本当に付き合うべき相手なのではないかと思うのです。

「本当に付き合うべき人は誰なのか?」

これを見極めるのは事業が順調な時ほど困難であり、逆に言うならこんな時にしか本当に付き合うべき人を見極められる機会なんてないのかも知れません。

 

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計28店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。

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