原因はいつも後付け 第50回 「『失敗しない』を選び続けた先にあるもの」

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原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

《第50回》「失敗しない」を選び続けた先にあるもの

「やってみたけど上手くいかなかった」
私たちはこの状態を失敗と呼びます。

ここで本音を書かせてもらうなら、私は出来れば自分が失敗している姿を人に見られたくありません。なぜなら、失敗している姿を見られるのは恥ずかしいし、成果を出している姿だけを見られた方が周りの人からスゴいと思ってもらえそうだから。

こう考えてしまうのは何も私だけではないと思います。

「成果は出したいけど、失敗して笑われたくない。」
こんな時、私たちはどうすれば良いのでしょうか?


「やったけど上手くいかなかった」という失敗。
この失敗を避ける一番確実な方法は何か?
その答えは「やらない」という選択をすることでしょう。

「やらない」という選択。
それは短期的に見れば、失敗でもなければ、成功でもない。
言わば、何も起きない状態。

失敗するのは恥ずかしいし、失敗すればお金と時間の損をする。

だから多くの人が、「失敗しない」ことが確実な「やらない」という選択をするのかも知れません。「やらない」という選択さえしておけば、自分が失敗して恥ずかしい思いもせずに済むし、自分が失敗していなければ他人の失敗を笑うことも出来るでしょう。

ただ、私自身がこれまで数々の失敗を繰り返し、笑われてきた中で分かったこと。
それは、自分が何かしらのチャレンジをしてきた経験のある人は、他人の失敗を安易に笑ったりはしないということ。

私が創業して失敗を繰り返し、同業オーナーの中で笑いものになっていた時、あるバーのオーナーだけは私の失敗を笑うことなく、本気で応援してくれていた事を覚えています。

そして先日、ふと思い出してネットでそのオーナーのお店を調べてみたら、現在も人気のお店として営業されている一方、その他のお店のほとんどはもう営業していないようでした。

この事実から私が感じるのは、そのオーナーは自身も失敗を繰り返してきた経験があるからこそ、私の失敗を笑うことなく応援してくれたのであり、「やってみる」という行為を繰り返しているからこそ、今もなお人気店として営業を続けることができているのではないかと言うこと。

これは逆を返して考えるのなら、他人の失敗を笑うということは、失敗することの重要性を分かっていないことに他ならず、失敗をしない人やお店は、短期的に他人を笑うことが出来たとしても、長期的な成果を手にするのは難しいのではないか、と言うことです。

私は冒頭で「失敗している姿を見られるのは恥ずかしい」と書きました。
これまで相当数の失敗をしてきましたが、この気持ちがなくなることは未だにありません。

ただ、それでも「やってみる」という行為を繰り返すのは、「やってみる」の積み重ねこそが、期待した成果へ近づく確実な方法であり、「やらない」という選択を積み重ねた先にあるのは、短期的には何も起きない状態ではあるものの、長期的に考えれば何も起きないことの積み重ねこそが、本当の失敗ではないかと思うからです。

「やってみたけど上手くいかなかった」という事実。

私たちはつい、この「上手くいかなかった」という結果だけに囚われがちですが、大事なのはその結果よりも、むしろその結果を導いた「やってみた」という原因の方なのではないでしょうか。

原因があるから結果があるとするならば、「成果を出す」という結果は「やらない」という原因から生まれることはなく、「やってみる」という原因からしか生まれないということ。

そう考えることができれば、短期の結果に対する多少の恥ずかしさがあったとしても、長期の成果へ近づいていることを思えば、「やらない」を選んだ人たちから笑われるなんて安いものだ、と私には思えるのです。


8月から「やってみる」の実践で始めた、質問に動画で答える新企画。
成果に近づける事を考えれば、短期の結果に対する他人の目なんて気にしなくて良いと思うのです。

 

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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