原因はいつも後付け 第55回 「稼げそうな事とやりたい事」

 // 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

《第55回》稼げそうな事とやりたい事

1号店のバーを開業する前、私は法人を顧客にする会社の営業マンでした。
その会社を退職する時、周囲の人たちからこんな心配をされた事を覚えています。

「なんでバーなんてやるのか?」
「そんな畑違いの業種をはじめて大丈夫なのか?」

確かに、こんな心配をされるのは当たり前かも知れません。なぜなら、営業職をやってきたのであれば、その経験を活かせる業種を選んで事業を始めた方がはるかに安全に思えるからです。つまり、それまでの経験を優先したほうが「稼げそう」ということです。

じゃあ、何で全くの異業種であるバーを開業したのか?
それは、どうしてもバーを「やりたかったから」なのです。


《稼げそう、は粘れない》

稼げそうなことを仕事にするか、やりたいことを仕事にするか。
新しく商売を始めようと考えた時、この選択に悩む人は多いのではないでしょうか?

もちろん「稼げそう」と「やりたい」が一致していることがベストだと思います。
でも当時の私はこの2つが一致していなかったため、どちらを優先すべきか悩んだ結果、「やりたい事」を優先した訳です。

「稼げそうな事」と「やりたい事」。
この2つを考えた時、どちらかが絶対に正しいという答えはないと思います。

ただ、これまでの経験から自分なりの考えを書かせてもらうのであれば、「やりたい事」を優先して考えたほうが良いのではないか、と感じるのです。

その理由は、自分が本当にやりたい事を選んだ方が、成果が出るまでしつこく粘ることができるという実感があるからであり、これは逆に考えるのなら、「稼げそう」という理由だけで選んだ仕事は、稼げないという現実を目の当たりにした時に成果が出るまで粘ることは難しく、粘ることのできない仕事は長期で考えれば「稼げない」のではないかと思うからです。

《困難を乗り越える原動力》

やりたい事を商売に選んで18年間やってきた中で思うこと。
それは商売を続けていく上で困難な時期というのは必ず訪れるということ。

これは「稼げそうな事」を選んだにせよ「やりたい事」を選んだにせよ同じでしょう。

そして、そんな困難な時期が来るのは避けられないからこそ、それを乗り越えるための原動力が必要であり、その原動力となるのは「稼げそう」という動機よりも、「本当にやりたい事」を選んだという自分に対する信頼だと思うのです。

「稼げそうな事」と「やりたい事」。

どちらを選んだほうが絶対に正しいという答えはないのかも知れませんが、私がもし起業をする時に「稼げそう」という動機で自分の経験を優先した事業を選択していたのなら、これまでの困難を乗り越える努力が出来たのかと言われると、とてもそうは思えないのです。


2009年、自社の困難な時期を乗り越えるきっかけとなった13号店がオープン。
やりたい事を自分で選んだと言えるからこそ、困難を乗り越える努力ができると思うのです。

 

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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