さよなら採用ビジネス 第46回「業界が消滅するとき」

この記事について

7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第45回「ホントに使えるのは誰?」

 第46回「業界が消滅するとき」 


安田

大企業には、いろんな部署あるじゃないですか。営業部とか企画部とか人事部とか。

石塚

はい。

安田

「ここのトップがいちばん力ある」っていう部署は、決まってるんですか?大手の場合。

石塚

わかりやすいのは社長直轄、もしくはそれに近い部署ですね。次の社長が選ばれるのは、だいたいここの担当役員からです。

安田

それは、その社長の出身部だったりするんですか?

石塚

割とそこから出ることが多いです。たとえば商社で言うと、経営企画や事業投資を決定する部門がいちばん強いと思います。

安田

事業投資部門ですか。

石塚

はい。で、事業投資部門は多くは社長直轄だから、そこに自分が配属されたら「俺は本線いってるな」って思うでしょうね。

安田

なるほど。

石塚

そのカンパニーの中の事業投資を決める部門。商社であれば、ここが中心。

安田

でも「先代社長の事業投資で失敗して……」みたいな話、最近多いじゃないですか。

石塚

まあ、巧みにゴマカシますけどね(笑)

安田

ゴマカスんですか?

石塚

もちろん(笑)

安田

どうやってゴマカスんですか?人のせいにするとか。

石塚

それもよくありますね。

安田

あるんですか!

石塚

後継社長に譲って「アイツが駄目なんだ」みたいな。

安田

「それ、アンタが始めたんでしょ!」って反論しないんですか?

石塚

そういうのは抑え込まれます。「いまの社長がだめなんだ、無能なんだ」みたいに。

安田

ひどい。

石塚

こうやって院政が始まるわけですよ。大企業って大概、社長より会長のほうが力持ってますから。

安田

そうなんですか?

石塚

だいたい日本ってそうじゃないですか。権力の二重構造が好き。

安田

確かに。好きそうですね。

石塚

たぶん昔からですよ。将軍よりも実権を握っている人とか。自民党でも「総理より力を持ってる実力者がいる」という二重構造。

安田

自民党はずっと、そういうイメージですよね。

石塚

神輿と、その神輿を指示して担がせる人はまた別みたいな。日本人がとても得意な権力構造ですよね。

安田

大企業も同じですか?

石塚

そうだと思います。アメリカ人が見ると訳わかんないでしょうね。

安田

ややこしく見えるでしょうね。

石塚

「CEOはおまえだろ?なんでいちいち意向を気にしなきゃいけない人がいるんだ?」と。

安田

本来いないはずの権力者が隠れてると。

石塚

商法上は、ただの取締役。だけど実は最高顧問です、みたいな。

安田

ややこしい。ところで大企業の人事部ってどうなんですか?力ありそうですけど。

石塚

力のある会社と、人事が傍流っていう会社が、はっきり分かれてますね。

安田

たとえば、どういう業種ですか?人事が力もってるのは。

石塚

基本的に製造業は、人事部って出世ポジションですね。

安田

そうなんですか。

石塚

はい。大手製造業は人事を経由するのが出世コース。上げる場合、必ず1回人事をやらせる。

安田

若手社員の評価って、人事部が決めるんですか?

石塚

そのとおりです。勤務評定を全部握っている部署なので。一方で、商社は人事がそんなに力をもってない。

安田
へぇ。商社の人事部長とか偉い感じするんですけど、そうでもないんですか?
石塚

やっぱり経営企画とか事業投資部門が主流ですね。

安田

大手の社長って「3年ぐらいで交替する名誉職」ってイメージですけど。実際どうなんですか?

石塚

大手の社長もだいぶ若返りましたね。この10年で。

安田

そうなんですか?

石塚

はい。激務なんだと思います。

安田

激務ですか。

石塚

いや、激務ですよ。だって判断間違えたら倒産するんですよ。

安田

まあ、そうですね。そういう時代ですもんね。

石塚

昔みたいに安泰って言えないじゃないですか。いつどうなるか分かんない。

安田

何が変わっちゃったんですかね?

石塚

まず、1つの事業で永続して収益が上がらなくなってる。そして、競合が思わぬところから出てくる。

安田

たしかに。ぜんぜん違う業界から出てきますもんね。

石塚

ぜんぜん違うところから「えーっ!?」みたいな。「こんなところから来るのか!」と。

安田

むかしは、商社だったら商社どうしの争いでしかなかったですもんね。

石塚

今は商社を飛び越えて、国籍とかもぜんぜん関係なく、たとえば暗号通貨かもしれないし、GoogleとかAmazonみたいな存在かもしれない。

安田

どこから来るか分からない。

石塚

ワンクリックで調達も可能になったら「いらねえじゃん商社」みたいな。

安田

確かに。

石塚

メガバンクもそうですよね。決済方法が変わったら「銀行がいらない」って話になるかもしれない。

安田

「地銀の7割が潰れるかもしれない」って言われてますよね。

石塚

いやあ、もう9割ぐらい、無くなると思いますよ。

安田

本当ですか?

石塚

逆に銀行って、社会にとってなぜ必要なんでしょう?

安田

うーん。貯金とか両替もしてくれますけど、基本的には「事業資金を貸してくれる」ってことなんじゃないですか。

石塚

そうですよね。でも独自の審査基準もないし、事業の育成を踏まえての融資とか、そんな能力ないでしょ。

安田

でも、生き残ることを考えたら、そこのスキルを磨くしかないですよね?

石塚

おっしゃる通りなんですけど、さっき言った「想定もしない競合」が出てきて、もう間に合わない。

安田

もうすでに競合が出てきてると?

石塚

クラウドファンディングを通せば、事業資金も集まるじゃないですか。

安田

でも日本の場合、有名人でもない限り、億単位の資金は集まらないですよ。

石塚

たとえばIT・Web業界って、いま華僑みたいな制度ができてるんですよ。

安田

華僑みたいな制度?

石塚

ネットで成功して、億万長者どころか百億万長者までいるじゃないですか。

安田

いますね。

石塚

そういう人たちが、みんな後輩に出資するんですよ。

安田

それはどういう仕組みなんですか?

石塚

渋谷のランチミーティングですね。

安田

ランチ?

石塚

前にもちょっと触れましたけど、先輩に起業を相談する。ランチに来いといわれる。「石塚もそろそろ起業か。おまえ、ここどうするんだ?うんうん。分かった。」となる。先輩はおもむろに関係者にLINEする。

安田

出資者を集めるってことですか?

石塚

みんな渋谷周辺に会社あるから。LINEでランチ召集されて集まる。そこで「コイツオレの後輩で石塚っていうんだよ。今度会社やるんだ。3人で出資しない?」となる。

安田

そんな簡単に?

石塚

起業っていうと1人のカリスマが起ち上げて、というイメージですが、今はまったく違うんです。

安田

えっ?違うんですか?

石塚

「ゴレンジャー方式」といいますか(笑)「社長が赤レンジャーだったら、CFO誰つけて、商品企画はコイツ、システムはコイツにやらせて」とチームが組成される。そこに「じゃあ3億出資するから行け!出撃!」みたいな(笑)

安田

すごい。

石塚

ここに銀行が介在する価値もなければ、ベンチャーキャピタルでさえ危ういじゃないですか。

安田

なんで、そのチームに銀行も入らないんですか?

石塚

バカみたいですけど、銀行って営業に出るときにスマホすら持てないんですよ。

安田

え!そうなんですか?

石塚

スマホ持ってない。そして銀行はメールすらない。

安田

メールもないんですか!

石塚

だから、もう事業モデルとしてかなり厳しい。終焉迎えてるかもしれない。


石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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