第21回 “デメリットのある儲け話”に乗るべし

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第21回 “デメリットのある儲け話”に乗るべし

安田
今回は、「投資」をテーマにお話を進めていこうかと。

鈴木
はいはい、いいですねぇ。
安田
私は常々、社長の仕事は「時間とお金の投資」だと思っているんです。会社の「お金」、そして社員の「時間」をどう使うのか。この2つが上手であれば、自然とお金は増えていきますよね。

鈴木
そうですね。逆に言えば、そのどちらか一方でも使い方を間違えてしまえば、お金は減ってしまう。
安田
仰る通りです。とはいえ当然、なんでもかんでも投資すればいいってものじゃない。

鈴木
確かに。全部の投資話に乗っていたら、あっという間に破産するでしょう(笑)。
安田
ええ、本当に(笑)。鈴木さんも長く会社を経営されているので、いわゆる「儲け話」っていろいろ持ちかけられたと思うんですが。「良い儲け話」と「悪い儲け話」って、どうやって見分けているんですか?

鈴木
儲け話の良し悪し……。どうだろうなぁ。
安田
投資にしろ株にしろ、営業マンは皆「これをやったら会社がよくなりますよ」と言うわけじゃないですか。かといって、それを信じてすべて受け入れていたら、それこそすぐ破産しちゃうわけで。何を基準に取捨選択するのかなと。

鈴木
そうですねぇ。最初からメリットばかりを言う人に対しては、「ホントか~?」って疑いの目を向けてしまいます(笑)。
安田
あぁ、わかります。メリットを羅列されればされるほど、どんどん胡散臭く感じますよね。営業のあるあるというか(笑)。

鈴木
ですよね(笑)。そういう意味では、デメリットまできちんと話してくれる人の方が、確実に信用度は上がります。
安田
確かに、「デメリットがちゃんと見えている」ということは大事ですよね。他には何かありますか?

鈴木
儲け話を持ちかけられる「タイミング」も大事かもしれないです。
安田
ほぉ、タイミングですか。それは会社の経営がうまくいっている時の方がいいということですか?

鈴木
そうですそうです。安田さんもご存知だと思いますが、よく保険の営業さんから「決算対策しませんか?」って話がきませんか?
安田
あぁ、決算の数ヶ月前になると営業かけられるやつですね(笑)。「税金を払うくらいなら、この保険に入る方がお得ですよ」って。

鈴木
そうそう、それです(笑)。でもその手の商品って、会社の利益が出ていることが前提の話であって。そうじゃない時に営業にこられても、「いやいや、何を言ってるのよ……」って呆れちゃう(笑)。
安田
ちゃんと下調べしてから営業にこい、と(笑)。なるほど、そういう意味でも「タイミング」は大切ですね。

鈴木
というか、ちょっと話がズレてしまって申し訳ないんですが、「節税対策」というのも考えもんだと思うんですよ、僕。
安田
え、そうですか? 「税金で持っていかれるくらいなら、何か別のことに使った方がいい」と思う人は多そうですけど。

鈴木
いや、というのも先日、「節税のために買ったものでタメになるものなんかない」って話を聞いたんですよ(笑)。で、思い返してみれば確かに、その通りだったような気がして(笑)。
安田
鈴木さん、実は私も同じことを思っているんです(笑)。税金を国に納めることって、ある意味「金融機関への信用を積み上げるための投資」だと言えるんじゃないのかなと。

鈴木
あぁ、本当ですね。税金を支払うことで「社会的信用」というメリットが得られると。うん、それなら気持ちよく税金が支払えそうです(笑)。
安田
笑。ところで、会社だけじゃなく鈴木さん個人にも、儲け話を持ちかけられることがあると思うんですが。

鈴木
そうですね、小さなものから大きなものまで、いろいろあります。
安田
その中で、どういう話には乗って、どういう話には乗らなかったのか。その境目を教えていただけますか?

鈴木
もうこれは完全に「誰から言われたか」ですね。話の内容を吟味して決めるわけじゃなく、「信用している人」からの話なら乗ろう、と。
安田
ほぉ、なるほど。ちなみにどんな話がありましたか?

鈴木
そうですね、近年の話だと仮想通貨とか。僕自身もよくわからない分野の話だったので、「これくらいのお金だったら捨ててもいいや」という金額でやりましたけど(笑)。
安田
ああ、なるほど。儲からなくても別にいい、ということですね。もしかして鈴木さん、他人から提案される儲け話には、そもそもあまり興味ないんじゃないですか?(笑)。

鈴木
あはは、そうですね(笑)。そもそも僕は、儲けたいんだったら自分の頭を使って考えたいタイプなので。自分の見知らぬところで利益が出ても、あんまり嬉しくないんですよ。
安田
ははぁ。株なんて、まさにそれですよね。

鈴木
ええ。僕は基本的に「自分の苦手なこと・わからないもの」で儲けようとは思ってなくて。なんかそういうのを賭け事やギャンブルみたいに感じてしまうというか。
安田
いやぁ、同感です。私も人の会社に自分のお金を突っ込むくらいだったら、自分で事業をやったほうがはるかに楽しいって考えるタイプです。

鈴木
一緒ですね(笑)。会社経営って自分でコントロールできる範囲が広いし、だからこそ損をしても「しょうがない」と納得できるじゃないですか。だから僕は「儲け話」というものにあまり興味がないのかもしれませんね。
安田
なるほど。そう考えると、鈴木さんにとっても私にとっても、会社経営ほど面白い儲け話はなさそうですね(笑)。

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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