泉一也の『日本人の取扱説明書』第44回「大衆文化の国」

泉一也の『日本人の取扱説明書』第44回「大衆文化の国」
著者:泉一也

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

 

音楽、舞台、絵画、彫刻、建造物。西洋ではこうした芸術は大富豪が牽引した。「メディチ家」を覚えているだろうか。ダビンチやミケランジェロといったルネサンスを代表する芸術家のパトロンとなった大金持ち一家だ。大富豪から生まれた芸術は後々の高級ブランドビジネスに繋がっている。グッチにエルメスにシャネルなど世界の高級ブランドはほぼヨーロッパ発祥である。

一方、日本では富豪がパトロンとなった芸術も多々あるが、民衆から生まれた芸術文化が圧倒的に多い。俳句や和歌は詩の文化であるが、4500首が編纂された「万葉集」には天皇や貴族ばかりでなく、防人に乞食に遊女までが詠っている。民謡、浪曲、落語は現代にも伝承されており、民謡は日本に4万以上、落語家は現在800人を超える。大衆文化が花開いた江戸時代の元禄文化(上方)と化政文化(江戸)はどちらも町民文化である。俳句のTV番組「プレバト」で何度も優勝をしている梅沢富美男さんは大衆演劇の役者兼座長である。彼の読んだ一句を紹介しよう。

「頬紅き 少女の髪に 六の花(むつのはな)」

寒い中、頬を赤らめた少女の頭に雪が。その情景が見えてくる。口の悪い下町親父がそんな繊細で純な詩を詠むのだ。

もう一人紹介したい人物がいる。時代劇「遠山の金さん」のモデルになった奉行の遠山景元(左衛門)。こんな話がある。老中水野忠邦が中心となった天保の改革において、町民の贅沢を取り締まるためと大衆文化を禁止する命を景元に出した。なんと景元はその禁止令を曲げて現場を守り、忠邦と対立したのだ。もちろんのことに大衆芸術家たちから絶大な人気を得たことで、景元は大衆演劇にヒーローのごとく取り上げられ、現代にその話が残ったわけだ。ちなみに金さんが当たり役となった杉良太郎さんは、天災が起こると被災地の現場にいち早く駆けつけ、寄付やボランティアを率先している。杉さんから景元の魂を感じる。

ブルー・オーシャン戦略は、未知の新大陸を探しだす作業ではありません。
新たなブルー・オーシャンは今いるレッド・オーシャンの中に無数に存在するのです。

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