交換の流儀

無人島であろうと、引きこもりであろうと、
人と関わらずに生きていくのなら、お金は必要ない。
なぜならば、お金は
「役割を交換する」ための、道具だからである。
誰かのために、何かをやって役に立ち、
お金というものを受け取る。
受け取ったお金を使い、自分のために、
何か役に立つことをやってもらう。

たとえば、引っ越し屋さんで働き、
受け取った報酬で美味しいものを食べる。
それは、力仕事をする代わりに、食事をつくってもらう、
という役割の交換である。
たくさんの人と役割を交換できれば、
人生はとても快適なものになる。
不得意なことは、どんどん他人に任せられるようになるからだ。
自分は自分の得意なことだけをしていればいい。

だが無人島だと、こういう訳にはいかない。
力仕事も、料理も、洗濯も、掃除も、畑仕事も、
全て自分でやらなくてはならない。
当然のことながら、お金を稼ぐことも、
お金を貯めることも、無意味である。
お金は、他人と関わることによって、初めて意味を持つからだ。

引きこもりも、
本当に人と関わらずに生きるのなら、お金は必要ない。
あるいは生活に必要なものを、
全て与えてもらえるのなら、お金は必要ない。
他人からは、一切何も受け取らない、という人。
受け取るが、こちらからは
お金も含めて何も渡さない、という人。
そういう人にとって、お金は無縁のものだ。

お金とはあくまでも、交換の道具なのである。
だが私たちは、その事実をよく忘れてしまう。
その結果、お金を稼ぐことが目的になったり、
お金を貯め込むことに喜びを感じたり、
お金を使わないことが美徳になったり、してしまうのだ。

見返りを求めず、相手のためにひたすら何かをやってあげる。
すると、やってあげた事のクレジットが貯まる。
それが貯金である。
だから貯金は意義のある、素晴らしい行為だ。
という見方も出来るだろう。
だがそれは間違った見方だ。
実際、与え好きな人は、失うことを厭わない。
与えるのが惜しい人、無いと不安な人、
貯め込むのが好きな人が、貯金をするのである。

大事なのは貯め込むことではない。
どんどん交換することこそ、重要なのだ。
誰かの役に立ち、お金を受け取り、
そのお金を渡して、誰かに役立ってもらう。
これは言い換えるならば、得意なことで役に立ち、
苦手なことをひとつなくす、という得意と不得意の交換だ。

この交換が進めば進むほど、
得意なことをやる時間が増え、不得意なことをやる時間が減る。
つまり、人生はどんどん豊かになる。
そして、そういう人が増えれば増えるほど、
社会は豊かで便利になっていく。
いい事ずくめなのである。

まったく知らない、あかの他人であっても、
お金を払えば商品が買える。サービスを受けられる。
お金とは、見ず知らずの人と役割を交換するための、
飛び道具なのだ。
たくさんの人と、得意を交換し合って生きていく。
そのためにお金はある。
やりたくもない仕事をやって、ひたすら貯金を増やす、
というのは本末転倒なのである。


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どうすれば企業は生き残っていけるのでしょうか。私は今後、中小企業の経営は二極化していくと予想しています。それは「人を雇い続ける経営」「人を雇わない経営」です。

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