本当の原因

有給休暇の取得が義務化され、
残業規制がこの先厳しくなり、
最低賃金もどんどん値上げされていく。
国は中小零細企業を潰す気なのか!
と腹を立てる経営者もたくさんいることだろう。

どうやら国は本気で
労働法改革をしようとしているようだ。
その目的はもちろん生産性の向上である。
人口が減り続ける我が国において
GDPを伸ばしていく唯一の方法。
それは一人当たりの生産性アップしかない。

いくらなんでも数千万、数億人の
外国人労働者を受け入れる訳には行かないからだ。
では一人あたりの生産性を高めるには
どうしたらいいのか。
我が国の頭脳が出した答え。
それが労働法改革なのである。
つまりは労働時間を強制的に削減させること。
時間あたりの給料を強制的に上げさせること。

労働時間が減り、時間あたりの収入が増える。
労働者にとっては願ったり叶ったりである。
ただし、仕事がなくならなければ。
これだけ労働力不足が叫ばれる現代社会であれば、
生産性の低い企業には退場してもらった方がいい。
それが国の出した結論である。

結果的に生産性の高い会社だけが残り、
労働力はそこに吸収されていく。
削減された労働時間を余暇に使えば消費が増える。
稼ぎたい人は副業すればいい。
そうすればGDPはさらに増えていく。

どちらに転んでも結果は良好だ。
この楽観的な政策が吉と出るか凶と出るか。
それはやってみなくては分からない。
この乱暴なやり方に対して異を唱える経営者は多い。
だが考えるべきは、
もう少し根本的な問題ではないだろうか。

問題の本質は何か。
なぜこんな切羽詰まった状況になってしまったのか。
その答えは、強制されなければ動かない、
凝り固まった脳みそにある。
休みが増え、労働時間が減り、給料が増える。
なぜ経営者は自らこのテーマに
取り組まなかったのだろう。

生産性の向上はどの会社にとっても
至上命題であるはずだ。
生産性が高ければ収益は増える。
待遇が良くなる。
質のいい労働者が集まる。
さらに生産性は上がる。
いいことばかりだ。
だがそれに取り組もうとはしない。

そんなことは不可能だと思い込んでいるから。
つまり思考が停止してしまっている。
劇的な生産性アップは無茶な欲求からしか生まれない。
楽をして大量生産したい!
という欲求から機械化は始まった。
無茶な欲求こそがイノベーションの源泉なのである。
無茶な欲求を手放した時、経営者の役割は終わる。

 


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