グラデーション経営

会社とは器みたいなものである。
人、金、商品、情報が詰め込まれた器。
だが冷静に考えてみれば
器の外側にも同じものが存在している。
人、金、商品、情報。
それらは社会を構成する要素そのものだ。

では会社とは一体何なのか。
それは公私を分けるラインである。
この線から内側は我が社の所有物である、というライン。
そのラインによって同じものが二分されている。

我が社の社員とそれ以外の人間。
我が社の資金とそれ以外の金。
我が社の商品とそれ以外の品物。
というように。

このラインを死守することは
会社経営の最重要課題でもある。
勝手に人が入って来ない。
勝手に金や商品が出ていかない。
そのために出入り口を入念にチェックする。
境目を明確にすることは自社を守ることだ。

だがこの構造に変化が起き始めている。
我が社の社員とそれ以外の人間。
我が社の顧客とそれ以外の人間。
ここに線を引くことが
致命的な戦略ミスに直結してしまう。

囲い込めば囲い込むほど、
その組織は弱体化していくのである。
これまでの常識で考えるならば、
一番大事なのは我が社の社員。
そして我が社の顧客である。
この二つは明確な仕切りによって優遇されてきた。

次に関係が深いのは社外の関係スタッフ。
派遣や外注先など。
そしてまだ顧客にはなっていない顧客予備軍。
すなわち見込み客である。

ガチガチの身内とは言えないものの、
利益に貢献するパートナーであり、
未来の顧客になる可能性の高い相手。
その貢献度や見込み度によって、
近い親戚から遠い親戚まで関係性は広がる。

そしてそれ以外。
つまり我が社とは何の関係もない人々。
その三つが明確に分けられてきた。
身内と、親戚と、他人。
その線引きによって明確に付き合いを変える。
その経営スタイルはもはや時代に合わないのだ。

会社と社会とのつながりはグラデーション化していく。
正社員、契約社員、業務委託、それ未満。
優良顧客、通常顧客、見込み客、それ未満。
これまで最も大きな価値をもたらしたのは
正社員と優良顧客だった。
そこを囲い込んでおけば事業が成立した。

だが時代は変わった。
今最も大きな価値をもたらすのは、
それ未満の領域である。
薄く、緩く、なだらかにつながり続けるこの領域が、
広ければ広いほど企業価値は増大する。
明確な線引きをせず、出入り自由な緩い関係を築き、
快適な居心地を提供する。
それが利益を最大化する次世代型グラデーション経営。

 


尚、同日配信のメールマガジンでは、コラムと同じテーマで、より安田の人柄がにじみ出たエッセイ「ところで話は変わりますが…」と、
ミニコラム「本日の境目」を配信しています。安田佳生メールマガジンは、以下よりご登録ください。全て無料でご覧いただけます。

 

感想・著者への質問はこちらから