仕組み化の終焉

仲間と数人でやり始めた事業が軌道に乗ってくる。
実績が積み重なり、取引先も増え、
会社は拡大期へと移行していく。
その時、多くの社長が考えるのは
会社の仕組み化である。

もっと稼ぎを増やすために。
さらに会社を大きくしていくために。
一段上の企業へとバージョンアップするために。
仕組み化とは即ち組織を作り上げていくことだ。

このステージの会社はキーになる仕事を
社長ひとりで担っているケースが多い。
たとえば新規顧客をひとりで開拓してくる、
スーパー営業マンの社長。
たとえば納品を一手に担うスーパー技術者の社長。

当然のことながら
ひとりでこなせる仕事量には限界がある。
そこがボトルネックとなって売上は頭打ちになる。
それがこのステージの会社に共通する課題だ。

そこで社長は考える。
自分がやってきた仕事を仕組みで代替わりできないかと。
これは正しい判断である。
個人のスキルに依存している限り
会社の成長には必ず限界が訪れるからだ。

個人でやってきた仕事を組織の仕事に変えていく。
仕組み化は成長のための正しいステップなのだ。
たとえば社長個人の営業力に頼っていた
新規開拓を仕組み化する。
広告によって見込み客を集め、マニュアル化された
営業プロセスを社員が実行していく。

たとえば社長個人の技術に頼っていた
納品を仕組み化する。
納品すべき商品の型を決め、
決められたプロセスに沿って社員が納品をする。
ボトルネックであった社長が外れることで、
会社は一気に拡大し成長し続ける。
めでたし、めでたし、というわけだ。

だがここで大きな問題にぶつかることになる。
それは競合他社の出現である。
個人に依存している事業は
拡大しにくい代わりに真似もされにくい。
仕組み化された事業は
拡大しやすい代わりに真似もされやすい。

当然と言えば当然の帰結である。
ある一定の能力があれば誰にでもこなせる仕事。
それを作り上げることが仕組み化なのだ。
当然のことながらそのプロセスは
他社の社員にもこなせてしまう。

同じ切り口の営業。同じ型の商品。
そうなると勝負は価格競争へと移行する。
価格で勝つためにできるだけ多くのロットを取りに行く。
営業と商品はさらに標準化されていく。
売上が大きくなればなるほど利益率は下がる。

会社の利益を確保するためには
コストダウンが必須となり、
仕組みを回し続ける社員の収入は頭打ちになる。
採用に苦戦するようになり、定着率が悪くなり、
コストが嵩んで利益が出なくなる。

人に関するコストが損益分岐点を超える。
それが仕組み化終焉の合図なのである。
仕組み化のその先へと時代は移行していく。

 


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