2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第197回「焼肉事業の未来」
うちの奥さん、ミライザカがワタミとは知らなかったみたいで。
「鳥メロ」とか(笑)
いろいろ名前を変えてやってますよね。
最近は焼肉事業を増やしてます。
焼き肉はコロナ禍でも強いそうですけど。ワタミも成功しますか。
焼肉っていわゆる「素材型業態」だから。要は切って焼くだけじゃないですか。
まあそうですね。だからこそレッドオーシャンな気がするんですけど。
焼肉って結局「いかに安く、いい肉を調達するか」だけの勝負なんですよ。
なるほど。
「安田さんの肉のカットはすごいぜ」なんて、あんまりないじゃないですか。
個人の焼肉店だったら、こだわってそうですけど。
その違いがすごく影響するかっていうと、ほとんどの人は分からないわけですよ。
確かに。カットの違いなんて分からない人のほうが多いでしょうね。
つまりオペレーション費用があまりかからない。シェフやコックを置かなくても焼肉ってやれるわけです。だから人件費を縮められる。
自分で焼いてくれますからね。
そう。自分で焼いてくれる。だからワタミは焼肉をやるんだと思う。
なるほど。ワタミさんが焼肉を始めたのはそういう理由があるんですね。
「いまごろ?」っていう感じですけど。まあ、しょうがないですよね。居酒屋業態が時代には合わなくなってきたので。
居酒屋はもうだめですか。
むずかしいでしょ、このコロナで。
焼肉もずいぶん前に牛角が出て、真似するところも増えて。安売り競争になってるイメージですけど。まだ利益が出るんですか。
やり方ですよね。とにかく調達をがんばって、おいしくて安い肉が調達できれば焼肉は儲かります。
つまり規模ですか。
そう。
じゃあ、一気に店を増やして調達力を上げれば、勝ち目はあると。
渡邊さんはそう考えてるんでしょうね。
石塚さんはどう思います?勝てると思いますか。
いや、勝てないと思います。
勝てないですか。
と思います。ワタミぐらいの店舗数だと。
価格で勝負するには少なすぎると。
だから値段を2割引いてでも、たくさん売りたいんですよ。要するに「たくさん売るから、まけろ」って業者に言うはず。
もっと店を増やすのはどうですか。
これからそんなに増やせるのか。焼肉を食べたい人がそんなにいるのか。
調達力を上げるためにはどれぐらいの店舗数が必要なんですか。
まあ、少なくとも200・300ですよね。
そこまで持っていくつもりじゃないですか。渡邊さんは。
社長は「居酒屋業態をぜんぶ焼肉に変える」ぐらいのことを考えてるでしょう。
もう居酒屋はやめる?
やめるつもりなんでしょうね。
居酒屋ってそんなに儲からないんですか。
居酒屋は宴会需要がないと、ぜんぜん儲からない。
へえ〜。
いちばんおいしいのは焼酎とか。最初の1杯目が売れれば、あとはぜんぶ利益なので。
一杯で元が取れるんですか。
だからお酒って儲かるんですよ。ところが今は飲酒しちゃいけないし。集まっちゃいけないから。酒を飲んでもらわないと居酒屋って利益が出ないんです。
コロナもそろそろ落ち着いてきましたけど。元には戻りませんか。
家飲みもかなり定着したし。あと、ノンアルコールに振る人たちも出てきて。「お酒やめたらスゲー体調いい」って。
確かにそうですね。
ましてや最近の若手は会社での飲み会をすごく嫌がるし。ますます宴会需要がなくなっていきますよ。
焼肉屋の場合は酒がなくても儲かるんですか。
いや、やっぱり焼肉も同じですね。アルコールを伸ばしてもらわないと。
単価が高い割にローテーション早そうですけど。
それはありますね。高いし高回転だし。
生肉なので出されたら焼いちゃうし。焼いたら食べないといけないし。
安田さん、焼肉屋に3時間もいないでしょう?
いないですね。下手したら1時間で終わっちゃいます。
カルビでビールとか、もう無理でしょ。
無理です。
となると高齢化社会は、なかなか厳しいものがあるじゃないですか。
たしかに。
だから食材の調達業者さんをたたいて、とにかく「量を売れ」「量を売れ」ってことだと思う。
それが正しい戦略なんですか?
いや渡邊社長も飲食業のことがわからなくなってきてる。
そうなんですか。
はい。社長のブランクというか、経営者の劣化を感じますよ。
長い間やりすぎたんですか。
逆じゃないですかね。ずっと社長業をやってないじゃないですか。
現場感がなくなってるということですか。
残念ながら。ああいうことをやっているようだと、もうむずかしいなって。
安くしてもたくさん売れないってことですか。
と思います。
安くしたらたくさん食べそうですけど。
それだったら自分の家で焼けばいいじゃないですか。
外食はまた別じゃないですか?
寿司はわかるんです。寿司って、あれだけのバリエーションのネタを自宅でって、なかなかむずかしい。握るのも大変だし。
焼肉は違うんですか。
焼肉は自分の家で焼けば十分ですよ。いろんな調理器具があるから家で焼いてもおいしいんです。アウトドアで焼いたっていいし。
でも焼肉屋ってまだまだ人気ありますよ。
それは非日常性が高い焼肉屋です。「今日は焼肉行くぞ」「おお~!」ってなるような。
家では食べられないワンランク上のお肉ってことですか。
そうです。だけど渡邊さんが考えているような店ではそうならない。それで「うまくいく」と思ってる渡邊さんは、発想がもう古いんです。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。