この対談について
株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。
第1回 私、社長をやめます。
第1回 私、社長をやめます。
鈴木さんは岐阜県の美濃加茂市でのうひ葬祭という葬祭会社さんをやっているわけですが、社長になったのは何歳の時でした？
33歳でしたね。今から22年前です。
22年前ですか。それで、何歳で社長をやめる予定なんでしたっけ。
60歳でスパっとね、退こうと思っています。だからあと5年。
つまり社長を27年間。どうですか、まだ5年はあるわけですけど、27年ってやっぱり長かったですか？
どうなんでしょうね。長かったような、短かったような。
社長を任された当初はどんな気持ちだったんですか。33歳の鈴木さんとしては。
「大丈夫かな。できるかな」なんて思いましたけど。それまでは社長、社長っていうのは私の父ですが、その下で専務をやってまして。そのポジションが意外と気に入ってたんですよ。
へえ、どうしてですか？
だって、いいじゃないですか。ある程度好きなことはできるし、それでいて責任は社長が取ってくれるんですから（笑）。もうちょっと専務のままでいいかなと思ってたんですけどね。
ということは、思っていたタイミングより早かった？
早かったですね。とはいえ、腹はくくってました。というのも、僕が30歳のときに母が亡くなりまして。父と母は夫婦であると同時に仕事のパートナーでもあったわけですよ。
なるほど。つまり、奥さんと同時にビジネスパートナーを失ってしまったと。
そうです。それで父のモチベーションがガクンと落ちてしまって、「もうお前やってくれよ」と漏らすようになっていたので。
なるほど。予想よりは早かったけど、心の準備はある程度できていたと。ちなみにいま振り返ってみてどうですか？もう少しゆっくり社長になりたかったとか。
いや、あれはあれで最適なタイミングだったと思いますよ。やっぱり若い時のがエネルギーはありますから。そのエネルギーが社長っていう肩書にもマッチしたと言うか。
わかります。世の中を見ても、若い時に任された社長の方がうまくいってる感じですよね。失敗することも含めて、早い方がいい。
僕もそう思いますね。50歳60歳で社長になってもね、若いときほどのエネルギーはなかなかね。肉体的にも若い方が元気だし。
確かに経営って、エネルギー有りきですよね。エネルギーをどっちに向かって出すかを決めるのが社長の仕事とも言える。
確かに。若いからその使い方はあんまりわかってないけど、とにかくエネルギー自体は満ち満ちているから、いろんな挑戦ができる。
そう思います。ところで60歳で社長を辞めるというのは以前から決めていたんですか？
決めてましたね。いま話していたような理由で、あまり長く居座りたくはなかったので。
後を継ぐのは息子さんということですが、いま何歳なんでしたっけ。
27歳。だから社長に就任する頃には32歳とかかな。
まさに鈴木さんが社長になったのと同じようなタイミングで。
そうなりますね。
ちなみに、辞めた後はどうするんです？左うちわで隠居暮らしって感じですか。資産も十分お持ちでしょうし、月旅行に行ったりね。
前澤さんみたいにですか？無理に決まってるじゃないですか（笑）。
でも真面目な話、どうするんですか。新しいビジネスをしたりとか。
そうですね。やっぱり人生を充実させるのに仕事ってのは必要だと思っていて。お金をたくさん稼ぎたいというよりは、何て言うんでしょうね、社会的な役割のためというか。
そうですね。誰かの役に立っているという実感がないと、しんどいですよ。
そうそう。もちろんお金で苦労するのも嫌なんだけど、お金だけあってやりがいがない人生というのもね。
私も以前ちょっとだけお金持ちの時期があったんですけど、振り返ってみればやっぱり虚しかったですよ。その虚しさを埋めるためにまたお金を使ってね。
ポルシェとか乗ってましたもんね。
乗ってましたね。運転苦手なくせに（笑）。そうやって必要のないお金を必要のないことに使ってたから虚しかったんでしょうね。
そういったことを学んだ二人が、「イケイケどんどん」から卒業すると。
そういうことです。我々と同年代の人はもちろん、いま会社員をやっている若い方たちにもぜひ読んでもらいたいですね。
対談している二人
安田 佳生（やすだ よしお）
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク（BFI）代表。
