その71 スキル

昔からある有名なエピソードで、
中途採用の面接に来た中年男性が「どんなことができますか?」と問われて

「部長ならできます」

と答えた、というのがあります。

これ、ざっとぐぐったところ15~20年前の時点で
「こんな古い話が今でも使われている」とコメントされていました。
一体どれくらい前にバズって、どれくらい長い間親しまれてきたネタなんでしょう。

今は世間がそこから二歩三歩進んでさすがにこの話も賞味期限切れかと思いますが、
サラリーマンの既得権益というべき部分をしゃぶりつくしてきた
ノースキル中年というものが
いかに多くの人々に疎まれてきたのかがうかがえるものであります。

このネタの時代と現在では若い人を中心にしたリクルート環境も
ずいぶん異なるようです。
当時は「年齢(ポテンシャル)」「学歴」などが求められることであったと思いますが、
いまは「スキルそのもの」が優先されているように見えます。
フリーランス、キャリアアップの時代に
指標化できる評価の軸がなければ何もできませんから、
一にも二にもスキルで測る、というのは当然のことかもしれません。

ただ、スキルというのは永遠に伸びるわけではありません。
どんなジャンルのどんなスキルであっても
「能力」である以上は生物的な限界があり、
加齢に飲みこまれていくことは避けがたいものです。
優秀な人がある程度努力でカバーすることはできたとしても
あくまで自分自身に対してのことであり、
いつの世も若い人、優秀な人が出てくる中で
他者との競争に勝ちつづけることは難しいでしょう。

だからこそ、真に社会で強さを発揮しつづける人というのは
スキルに依存するキャリアを送ってはいないはずです。
若いころはスキルを武器とし、
年を取ってきてからは人との関係性など自分の築いてきた資本を
活躍を続けるための元手としているでしょう。
そもそもスキル自体は個人の属性に過ぎず、
求められているのはそこから「できること」なのですから。

「部長ならできます」の人は、
過去持っていた肩書きにすがるだけで
マネジメントなど具体的なスキルを示せないことを
物笑いにされてきたわけです。

しかしこれから先、
スキルを滔々と語ることはできるが
具体的な「できること」を示せない人というのがいつか、

「スキルならあります」

と物笑いにされる日がくるのかもしれません。
 

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著者自己紹介

「ぐぐっても名前が出てこない人」、略してGGです。フツーのサラリーマン。キャリアもフツー。

リーマン20年のキャリアを3ヶ月分に集約し、フツーだけど濃度はまあまあすごいエッセンスをご提供するカリキュラム、「グッドゴーイング」を制作中です。

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