第19回 正社員は「出世のプロ」

この対談について

住宅業界(新築・リフォーム・不動産)の「課題何でも解決屋」として20年以上のキャリアを持つ株式会社ランリグが、その過程で出会った優秀な人材を他社に活用してもらう新サービス『その道のプロ』をスタートしました。2000名以上のスペシャリストと繋がる渡邉社長に、『その道のプロ』の活用方法を伺う対談企画。

第19回 正社員は「出世のプロ」

安田
私は境目研究家なので、「プロとアマチュアの境目」っていうのを何回か研究したことがありまして。

渡邉
ははぁ、面白いテーマですね。一般的には「お金を稼いでるか稼いでいないか」が基準だと言われますけど。
安田
でも今ってネットがあるので、素人みたいな人でも稼げちゃったりするわけですよ。

渡邉

確かに。YouTuberなんかは遊んでいる動画を流すだけで稼げたりするわけで。でも稼いでいるという意味ではプロには違いないと。

安田

ええ。一方で、正社員として給料はもらっているけど、全然売れていない営業マンもいる。そういう人はプロと言えるんだろうかと。


渡邉
確かに(笑)。私の基準を言わせてもらえば、プロって「支払ってもらった費用以上の価値を提供できる人」だと思うんです。そういう意味でその営業マンはプロではないですね。
安田
私もそう思います。でも、入社間もない新卒の子でも給料は出るじゃないですか。どう考えてもプロじゃないのに、お金は稼げている。

渡邉
価値を提供するどころか、むしろ会社の費用で研修を受けている立場ですから。そういう人をプロと呼ぶのは確かにおかしいですよね。
安田
ええ。そう考えると、プロとして自立してない人が社員になる、あるいは社員でい続けるわけで。つまり社員=アマチュアなんじゃないかと。

渡邉
ああ、なるほど。大胆な意見ですが、納得感はあります。
安田
「何のプロですか?」と面接で聞かれて、「部長のプロです」と答えるっていう笑い話もありましたけど。でも、実際にそう思っている部長さんって多いんじゃないかと思うんですよ。

渡邉
ああ、そうかもしれませんね。
安田
以前知り合いの社長から、「すごい会社の営業マネージャーだった人を年収600万円で採用できた!」って自慢されたんです。元々年収1200万円~1300万円だった人らしいんですけど。
渡邉
へえ、それは確かにラッキーとも思えますけど。
安田
でしょう? ただ、実際に営業をやらせてみたら全く売れなかったという(笑)。

渡邉
笑。でも、あり得ない話じゃないですね。マネージャーとしての実績って判断が難しいんですよね。部下が優秀だっただけ、会社の仕組みがよかっただけ、というケースも往々にしてあるので。
安田
そうそう。大きい会社だと、マネージャーは何もしてないのに部の売上はいい、なんてケースは普通にある。そういう意味では、大きい会社の営業マネージャーなんて、名誉職みたいなもので。

渡邉
その人が何のプロなのかって言われたら、「社内の評価制度に則って給料を上げていくプロ」なのかも(笑)。
安田
笑。社長にかわいがられたりとか、社内の昇進制度を理解してその通りに行動したりとか。だから「出世のプロ」なんですよ、たぶん(笑)。

渡邉
なるほど(笑)。でも今の時代は、大きな会社でもいつ潰れるかわかりませんから、出世=安心ってわけでもないんですけどね。
安田
そうそう。しかも、その会社での出世の手法が他の会社でも通用するとは限らないわけで。
渡邉
そうでしょうね。むしろほぼ通用しないんじゃないかな。
安田
そうなんですよね。一方で、会社にもまともな人もいるじゃないですか。出世より顧客満足を真剣に考えている人。でも皮肉なことに、そういうまともな人から独立していくんですよねえ。

渡邉
そうなんですよ! 場合によっては、お客さんもその人について行っちゃう。
安田
そりゃそうですよ。自分の出世しか頭にない人より、真剣に取り組んでくれる人の方がいいですもん。結果、ありがたい黒字社員から会社を去っていく……しかもお客さんを連れて(笑)。

渡邉
悲しいですねぇ(笑)。でも実際、そういう優秀な個人にとっては会社なんてあまり意味がないですからね。ピンハネされているとまでは言いませんけど、独立したら確実に何倍かは稼げるので(笑)。
安田
会社側はそういう人材をどうすれば繋ぎ止めておけるんでしょうね。

渡邉
いや〜、難しいんじゃないですかね。独立してもうまく繋がっていくっていう形でやっていくのか……でもそれなら自社で育てたりせず、最初からプロの人に発注した方がいいような気がしますし。
安田
そもそも「完全に社内出世志向の人」ばかりを採用するのはどうでしょう。

渡邉
なるほど。社内出世志向の人、つまり「出世のプロ」ばかりを集めると。
安田
そうそう。出世のプロを採る。もっとも、「仕事をちゃんとしてくれる」出世のプロじゃないとダメですけど。
渡邉
笑。あるいは、「この会社の社長になりたい、役員になりたい」みたいなタイプですよね。こっちはまだあり得ると思うんですよ。というのも最近の若い方って、自分でリスクを背負って独立するタイプの人が少なくなってきてるじゃないですか。
安田

ああ、そうですね。そういう意味では、会社のリソースを使った独立、いわゆる社内起業や暖簾分けのようなことも増えてくるんでしょうね。

渡邉
先日一緒に飲みに行った社長も、これからどんどん暖簾分けを促進しようとしていて。リフォーム業界って敵になったらシェアを取られるので、敵にならないように抱え込むっていうことを仕組みとして考えてるみたいですね。
安田
ある程度黒字社員になったらパートナー化しましょうというわけですね。その場合、その人の稼ぎをあまり多く取ると離れていっちゃうので……
渡邉
離れないような形にしようと思うと、最大でも20%から25%ぐらいでしょうね。
安田
そうですよね。ただ、ゼロから育ててパートナー化するんだとしても、将来的な会社の取り分が20%しかないとすると、育てるコストをどこから出すかが課題になってきますよね。
渡邉
う~ん、確かに。新人を採用して育てるためには、給料の何倍も稼いでくる黒字社員の存在が必要ですからね。
安田

そういう意味でも、「育てて独立させる」より、「最初から独立してる人と契約する」のが主流になってくるんじゃないのかなって気がします。

渡邉
なるほど。そうなると会社の意味が劇的に変わってきますね。
安田
というか、世界ではすでにそれが普通なんですよね。辞めない前提で若いうちは給料を抑えて、おっちゃんになったらたくさん払いますみたいなのがもう通用しないので。
渡邉
確かに、若いうちから払っていかないと皆辞めちゃいますからね。
安田
もう1回組織作りとか採用とかをゼロから考え直さないといけない時代かもしれませんね。
渡邉
難しい時代ですね。

 


対談している二人

渡邉 昇一(わたなべ しょういち)
株式会社ランリグ 代表取締役

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1975年、大阪市に生まれる。大学卒業後、採用コンサルティング会社ワイキューブに入社。同社の営業、マーケティングのマネージャー、社長室長及び、福岡などの支店立上げを担当し、同社の売上40億達成に貢献した。29歳の年に株式会社ラン・リグを設立し、今期20期目。述べ900社以上の住宅会社のマーケティング、人材コンサルティング支援と並行し、500店舗以上が加盟するボランタリーチェーン「センリョク」など、VC、FC構築にも多数携わる。また、自身が司会を務め、住宅業界の経営者をゲストに招き送る自社のラジオ番組は、6年間で、延べ300回以上の配信を経て、毎月2万人以上の業界関係者が視聴する番組に成長した。今年5月には、2000人以上のプロ人材とのネットワークを生かした~社長の右腕派遣サービス~【その道のプロ】を本格リリース。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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