値上げの作法

大企業が続々と初任給を引き上げている。あっという間に初任給30万円が当たり前の時代になるだろう。初任給が上がれば全体の報酬も引き上げられる。若年労働者がどんどん減っていくこの国において、真面目で元気な若者は奪い合いになっていくのである。

いかにして報酬を引き上げていくのか。いかにして残業を減らしていくのか。いかにして休みを増やし、労働環境を整えていくのか。中小企業においてこの課題は避けようのないものになっていく。どう考えても解決策はひとつしかない。それは値上げである。

コストを下げることによる収益維持はもはや限界だ。単価が下がり、現場は忙しくなり、どんどん人が辞めていく。もう頭を切り替えるしかない。コストを下げるのではなく売上を増やすのだ。ただし単に顧客数を増やすだけではこの課題は解決しない。仕事が増えてさらに現場が忙しくなるだけだ。

顧客を増やすのではなく単価を上げることによる収益アップ。ここに取り組む以外に方法はない。値上げなどしたら顧客が減ってしまう?もちろんそうなるだろう。だが全ての顧客が離れていくわけではない。「高いけどあなたから買いたい」と言ってくれる顧客を増やしていくのだ。そのために必要なのが「高い理由」である。

「私たちの商品は確かに高い。なぜならここにこだわっているから」という説明。言い訳ではなく共感してもらえる理由をきちんと語ること。それが値上げの作法だ。礼を尽くして語ることで「そこにこだわっているのなら共感できる」「だったら高くても買いたい」と言ってくれる顧客が増えていく。値上げにはこのステップが必須だ。

出来れば既存の商品とは違う商品に仕立てること。全く異なる新商品を作る必要はない。既存商品の見せ方を変えることで新たな商品へと仕立て直すのだ。新たな顧客は仕立て直した商品だけで集客する。ここが軌道に乗り出したら既存の顧客にも値上げを打診する。これまでの価格ではここまでのサービスしか出来ません。このレベルの仕事はこのように価格がアップします。そう提示することで離れていく顧客もいるだろう。それは仕方のないことである。

安さだけで選ぶ顧客を減らし、価格以外の価値を買ってくれる顧客を増やしていく。既存の顧客にただ値上げをお願いするのではなく、意志を持って顧客を入れ替えること。これが令和の値上げ戦略である。

 

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