2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第288回「寿司屋の修行は何年がベストなのか」
寿司職人になるのに「昔ながらの修行」って必要だと思いますか?
賛否両論に分かれてますよね。堀江さんみたいに「下積みなんて必要ない」って人もいるし。「それが大事なんだ」って人もいるし。
僕は能力によって「下積みコース」と「下積みいらないコース」を分けたらいいと思います。
あー、なるほど。下積みしなくてもできる人に下積みさせる必要はないと。
全くない。安田さんなんて絶対に下積みいらないですよ。下積みを命じた瞬間に横向いちゃうでしょ。
確かに下積みは嫌いですね。玉拾いをさせられて卓球部を3日で辞めました。
「自分で考えて試行錯誤しながら」って方がやる気が湧く。 そういう人には下積みよりもお店1軒任せて「自分でなんとかしなさい」って方がいい。
下積みにもよると思うんですけど。意味のない下積みは嫌ですけど。
寿司を握る技術とかは、センスがいい人だったら短期の研修で十分できると思う。
だけど寿司って伝統芸じゃないですか。
まあ歴史があるのは分かります。
そこを引き継いでいくのに、ある程度の時間は必要な気もするんですけど。お店や仕事に深みが出ないんじゃないのかなって。
それは自分のお店に何を求めるかどうかですよ。
確かにそうですね。
だから僕は2コースに分けたらいいと思っていて。伝統的なものを継承してコツコツやりたいって人は修行すればいいし。早く店を持って稼ぎたいって人は10年も修行する意味がない。
有名店で修行することでブランド力は尽きますけどね。
たとえば「鮨さいとう」みたいな名門で 1年だけ修行して。「どこにいたの?」「鮨さいとうにいました。」って言えるじゃないですか。
東大に入って1年で辞めちゃう感じですね。確かに起業目的ならそれで十分ですよね。
リクルートもそういう使われ方をするじゃないですか。
そうですね。元リクルートの〇〇です。みたいな。
そうそう。
50歳までリクルートにいる人に脚光は当たらないですもんね。
当たらないですよ。だから1年だけちょこっとやらせてもらって。ブランドを使わせてもらう。
そんな人を採用してくれますかね。名門の寿司店が。
今、人手不足だから。
あー、なるほど。確かに。能力があれば採ってもらえるかも。
僕は下積みがすべて不要とは言ってなくて。それはサラリーマンでも同じで。自分でやりたいって人には選択肢があった方がいい。
そりゃそうですね。
料理の奥深さや趣を学ぶ時間も必要かもしれない。でも趣を食べに来る人もいるけど「ただうまいもの食べたい」って人もいっぱいいるわけで。
確かに。多くの人は奥深さなんて求めていないかも。趣を食してる人なんてほとんどいないですよね。
5%未満でしょう。
つまり「 どういうビジネスをやりたいか」によると。
おっしゃる通り。
人生をかけて寿司を極めたいんだったら、ちゃんと修行した方がいいかもしれない。
そうなんですよ。10年、15年という修業の中での人間作りみたいな。それこそ落語とか歌舞伎とかの修行のやり方と同じ。
儲けや利益を超えたところで技を極めるっていう。 そんなことより「自分でお店をやって稼ぎたいんだ」って人には10年は無駄だと。
そう感じるでしょうね。
それより商売のコツとかを学んだ方がいいのかも。今は2、3年修行して海外で寿司店をやったら稼げるわけですからね。
ASEANで稼ぐんだったら3年もいらない。3ヶ月の寿司アカデミーで勉強すれば十分だって聞きます。
稼ぎたいのか。こだわりの店がやりたいのか。まずここを決めなくちゃいけないですね。
はい。趣のある店ってAIでは作れないから。ただし、それを分かってくれるマーケットがこれからどれぐらい残るのか。そこもよく考えなきゃダメですよ。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。