第32回 お客さんの希望をなんでも叶えてくれる場所

この対談について

「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。

第32回 お客さんの希望をなんでも叶えてくれる場所

安田

マハロコは美容室や飲食店などの垣根を超えて、もはや「マハロコという独自の世界」を作っていますよね。ただ多くの経営者は「世界観で売る」ってことが苦手なんですよね。言い方を変えると、抽象度を上げてビジネスを考えられないというか。


岩上

ああ、確かに。むしろ「どういう美容室なの?」とか「何が得意なの?」ってどんどん具体化しがちかもしれないですね。その方が「売り」が明確になって、集客もしやすいですから。

安田

そうですよね。もちろん具体化も大事なんですけど、抽象化ができない人が多い印象です。特に2代目・3代目の経営者さんは「この商売はこういうもんなんだ」と枠にはまっちゃいがちというか。


岩上

先代がやっていたことを、そのまま「当たり前のこと」として受け入れているんでしょうね。もっとも僕は子どもの頃から「なんで美容室という看板じゃなきゃいけないんだろう」と思ってたタイプでしたけど(笑)。

安田

いや〜、そこが不思議なんですよ。生まれ育ったご実家が美容室で、つまり岩上さんも「2代目」ですよね? そんな環境で育ちながら、なぜマハロコのように「美容室の枠」を超えた場所を作ることができたんですか?


岩上

そうだなぁ…。今言ったようにもともとそういう性格だったから、というのはあると思います。でも今のようにコンテンツの幅がどんどん広がっていったのは、「お客様からの要望があったから」ですね。

安田

ほう、なるほど。お客さんのリクエストに答え続けた結果が、今のマハロコだと。


岩上

そうですそうです。「施術の相談」というコミュニケーションを取りながら、お客様の「楽しみ事」に便乗してきた、とでもいいますか(笑)。

安田

ふーむ、もう少し詳しく教えていただいてもいいですか?


岩上

例えば結婚式の二次会プロデュースの仕事は、結婚式のヘアメイク相談に乗っている時に「二次会どうしようかな〜」と相談されたのがきっかけです。

安田

なるほど。お客さんもまさか美容師の岩上さんが担当してくれるとは思ってなかったでしょうけど(笑)。


岩上

そりゃそうでしょうね(笑)。でも話を聞いてたら「じゃあ僕がやろうか?」となっていって。他にも、洋服屋さんをやっているお客様から「この店、展示会の会場によさそうだなぁ」って話が出たので、「じゃあやっちゃう?」みたいな(笑)。

安田

なるほどなぁ(笑)。なんというか、「お客さんの要望があった」というのは事実なんでしょうけど、それをスルーせず、自分ごとにして実現しちゃうのが「いかにも岩上さん」って感じです。「お客さんがどうしたいのか」に真剣に寄り添った結果というか。


岩上

ありがとうございます。でもなんというか、僕自身もそれが楽しいんですよね。施術中のコミュニケーションの中から、「この人とあんなこと始めたらもっと楽しくなるかも」って常に考えてますから(笑)。

安田

いいですねぇ(笑)。それで言うとマハロコって、お客さん自体も「普通の美容室のお客さん」と違ってませんか(笑)。


岩上

どうでしょうかねぇ(笑)。でも皆さんスタッフとのコミュニケーションに心地よさを感じてくださっているのは確かですね。実際に施術するスタッフだけでなく、アシスタントの子たちもすごく可愛がってくださるんですよ。

安田

へぇ〜そうなんですね!


岩上

ある時「〇〇君、そろそろシャンプーしてくれない?」ってアシスタントの子に声をかけてくれたお客様がいて。「今日、お着替えをお持ちだったらやることもできますけど(笑)」って僕が冗談で言ったら、「着替えはないけどやってみようかな」って仰ってくださって。

安田

へぇ〜。でもそのアシスタントの子はまだあんまり上手じゃないわけでしょ? お客様はそれでもいいんですかね。


岩上

お客様としては、その子の技術の成長を応援したいって思ってくれているんです。

安田

だから多少服が濡れても大丈夫よ、って言ってくれるわけですね。実際やってみてどうだったんですか?


岩上

それが全然「多少」どころじゃなくて(笑)。シャンプー終わったら、背中一面びしょ濡れで(笑)。

安田

えーっ?!(笑) それでもお客さんは怒らないんですか?


岩上

全く怒らず、むしろ「まだまだ伸びしろがあるね~、ここからが楽しみだね~」なんて言ってくれるんですよ(笑)。だからお客様も、お店と一緒に育ててくれている感覚なんだと思います。

安田

うーん、これぞマハロコ、という感じですね(笑)。それにしても、お客様の要望でコンテンツが増えていくって、どんどんメニューが増えていく料理屋さんと似ているなと思ったんですよ。


岩上

ああ、短冊に書かれたメニューが壁いっぱいに貼られているようなお店ですよね(笑)。

安田

そうそう(笑)。そういうお店だって、岩上さんと同じように「お客さんに寄り添って、お客さんが喜ぶものを提供している」わけじゃないですか。でも、そんな努力に見合う儲けがあるかっていうと、あんまりない気がして。一方、マハロコはちゃんと儲かっている。この違いって何なんでしょうね?


岩上

うーん、そうだなぁ。強いて言うなら、「サービス」や「商品」というより、マハロコという「世界」や「場」に対してお金を払ってもらっているから、じゃないですかね。

安田

ははぁ、なるほど。お話を聞いていると、確かにそんな感じがしますね。


岩上

だからこそ、枠にとらわれず柔軟にビジネス展開ができている、ってことなんだと思います。だからとしてはこれからも「世界」や「場」としての魅力をさらに上げていきたいなとは思っています。

安田

なるほどなぁ。今日のお話は、飲食業界の方にとっても大きなヒントになりそうなことがたくさんあったと思いますよ!


対談している二人

岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表

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美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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