第73回 情弱ビジネスの残り寿命

この対談について

住宅業界(新築・リフォーム・不動産)の「課題何でも解決屋」として20年以上のキャリアを持つ株式会社ランリグが、その過程で出会った優秀な人材を他社に活用してもらう新サービス『その道のプロ』をスタートしました。2000名以上のスペシャリストと繋がる渡邉社長に、『その道のプロ』の活用方法を伺う対談企画。

第73回 情弱ビジネスの残り寿命

安田

情報に疎い人を狙ってノウハウを売りつける「情弱ビジネス」ってありますよね。これっていつ頃から出てきたんだろうと思いまして。


渡邉

わりと最近ですよね。ネットで検索したらすぐに答えが見つかる時代になったからこそ、「自分でわざわざ調べない人向け」のビジネスが成り立つというか。

安田

ああ、確かに。ワイキューブ時代も新卒採用のノウハウを教えたりしてましたけど、あの頃は今ほど調べる方法がなかったから商品として成り立っていたんですよね。今同じようなノウハウを売ろうとすると、「情弱ビジネス」になってしまうかもしれませんけど(笑)。


渡邉

いやいや、そんなことはないと思いますけど(笑)。でも当時から状況がかなり変わったのは事実でしょうね。昔は「情弱」なんていう言葉自体なかったですし。

安田

そうですねぇ。ネットがなかったから、情報源と言えばもっぱらテレビや新聞で。そこでいち早くいい情報をキャッチするのが経営者の仕事だったじゃないですか。ノウハウだってそう簡単に手に入らないから、お金を出して買うのが当たり前でしたし。


渡邉

ノウハウに関しては、今も昔も同じかもしれません。そもそも「相手の知らない情報を提供する」というビジネス自体は決して悪いものではありませんし。ただ「情弱」っていう言葉が出てくると一気にネガティブな印象になりますよね。

安田

そうそう。「ちょっと調べたらそのくらいわかること」を、調べない人相手に売るビジネスなわけで、どちらかというと「買っている人を揶揄している」感じがするんですよね。


渡邉

ああ、「その商品は情弱にしか売れないよね」みたいな。とはいえ、たとえ簡単に調べられることでも、時間を節約したい人にとっては価値はあるのかもしれませんよ。

安田

まぁ、そう考えることもできますけど。でもやっぱり、まっとうなビジネスとは思えないんですよね。簡単に調べられることを「すごい情報ですよ!」と誇張して売っている場合もあるだろうし。


渡邉

まぁ、明確な嘘を言わない限り、自社製品をある程度誇張してPRするのは仕方がない気がしますけど。いずれにせよ、「どんな情報を得たか」よりその情報をもとに「どういう行動をするか」が重要ですよね。

安田

確かに確かに。情報の質だけじゃなく、それを次のアクションに繋げられるかどうかが重要だと。


渡邉

ええ。そういう意味では提供者のブランド力が求められるビジネスですよね。「あの人が言うなら自分もやってみよう」と思えるなら、情報の価値はぐっと上がると思います。

安田

うーむ、なるほど。ただね、やっぱり情報やノウハウを提供するだけのビジネスは、これからどんどん厳しくなると思うんですよ。ネットがますます発達してきて、どんな情報でも手軽に手に入る時代になってしまったわけで。

渡邉

本当にそうですね。AIも精度が高いものは今も有料ですけど、無料版の精度もどんどん底上げされていますもんね。やがては無料AIでも大抵のことはできるようになっちゃうんじゃないかなぁ。

安田

そうですよ。AIってあと数年で1000倍賢くなるって言われてますから。下手な専門家よりもよっぽど詳しくなっちゃいますよ。


渡邉

医者より詳しく病気の症状を教えてくれる日もすぐかもしれませんね。

安田

そうそう。私が今やっている商品開発も、いずれAIに置き換わるかもしれないなと思うんです。今だって「この業界でこういう切り口で新商品を考えて」って指示したら、すぐに10案くらい出てきますからね。


渡邉

うーん、確かに。だけど「その情報をどう活用するか」というところでは、まだまだ人のサポートが必要な気がします。

安田

ほう、なるほど。でも例えばリーダー研修のように毎回決まったプログラムをやるものは、AIだけでもできちゃう気がしません? むしろそっちの方が成果が大きくなりそうな気もするんですけど。


渡邉

単純に同じ内容を話すだけならそうかもしれませんね。でも目の前の受講者一人ひとりの状況や目的に合わせて伝え方を変えたり、モチベーションを上げるような働きかけをする、みたいな対応は難しいんじゃないかなぁ。

安田

ふーむ、つまりコーチングなどの部分ですよね。


渡邉

そうですね。とはいえ中小企業の経営者って意外と新しいことを知らない人も多いですし、パッケージ化されたノウハウもまだ数年は残るかもしれません。ChatGPTすら使っていない人もたくさんいますし。

安田

知っていても、実際に仕事で使っているのはわずか2%くらいだと聞きますからね。

渡邉

全体に普及する一歩手前という感じがしますね。チャットツールもある時期から一気に普及しましたけど、同じように浸透するにはあと5年くらいはかかる気がします。

安田

なるほど。確かに現実的に考えたらそうかもしれませんね。私自身はあと1年くらいでその時期が来る前提で、ビジネスモデルを見直してますけど。

渡邉

さすが、安田さんは早いですね(笑)!

安田

いやいや、早すぎても難しいんですよ(笑)。タイミングを見極めるのが一番大事ですからね。


対談している二人

渡邉 昇一(わたなべ しょういち)
株式会社ランリグ 代表取締役

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1975年、大阪市に生まれる。大学卒業後、採用コンサルティング会社ワイキューブに入社。同社の営業、マーケティングのマネージャー、社長室長及び、福岡などの支店立上げを担当し、同社の売上40億達成に貢献した。29歳の年に株式会社ラン・リグを設立し、今期20期目。述べ900社以上の住宅会社のマーケティング、人材コンサルティング支援と並行し、500店舗以上が加盟するボランタリーチェーン「センリョク」など、VC、FC構築にも多数携わる。また、自身が司会を務め、住宅業界の経営者をゲストに招き送る自社のラジオ番組は、6年間で、延べ300回以上の配信を経て、毎月2万人以上の業界関係者が視聴する番組に成長した。今年5月には、2000人以上のプロ人材とのネットワークを生かした~社長の右腕派遣サービス~【その道のプロ】を本格リリース。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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