母から受け継いだ指輪をネックレスに、片方なくしたピアスをペンダントに、思い出の詰まった2つのリングを溶かして1つに――。魔法のようにジュエリーを生まれ変わらせるジュエリー修理・リフォーム専門店「Refine」(リファイン)。代表の望月信吾さんに、お客様に感動を届けるジュエリーリフォームの魅力、そして波乱万丈な人生についてお聞きする対談企画です。
第41回 ジュエリーを通じて描く、夫婦の第二の人生設計
今日は「定年後の夫婦の働き方」をテーマにお聞きしたいんですが、望月さんの奥様は学校の先生をされているとか。奥様が定年退職した後は、お二人でRefineのお店を運営する選択肢もあったりするんでしょうか。
いやぁ、ないと思います(笑)。妻は宝飾業や接客にまったく興味がないので。
確かに興味がないと難しいですよね。でも今の時代、夫婦で稼ぎを分担したり、家事や子育てを協力し合うのが普通になっていますよね。そう考えると、定年後の夫婦の在り方も随分変わってきたんじゃないかなと思うんです。
確かにそうでしょうね。まぁ僕ら世代だと、「男が働いて女が家を守るんだ」みたいな古い価値観がそのまま残っていたりしますけど。
そうそう。特に男性がそういう傾向が強くて、ずーっと古い価値観で生きているから、奥さんが愛想を尽かして熟年離婚になっちゃったりとか。でも、私たちより下の世代は考え方もアップデートされているでしょうし、定年後に夫婦で蕎麦屋を始めたり、喫茶店をやるようなケースも増えていくんじゃないかなと思っていて。
確かにそういうご夫婦、増えてますよね。街を歩いていても、夫婦が仲良くやっているお店をよく見ます。
そうでしょう? そういう意味では宝飾業界も、夫婦で始めるのに面白い分野だと思ったんです。もともとジュエリーが好きなご夫婦だったら、きっと楽しみながら働けるんじゃないかと。
言われてみれば、夫婦でやるお蕎麦屋さんの宝石版みたいな感じかもしれませんね。あまり派手に儲けることはできないかもしれないけれど、のんびり長く続けられる仕事だとは思います。
そうですよね。コンビニのフランチャイズや、一時期流行した高級食パンのような「儲け優先」のビジネスとは違いますよね。ともあれ、より専門性が高い仕事ではあるわけで、真剣に知識を学んでいく必要はあるでしょうけど。
仰るとおりで、かなり奥深い世界なので、ある程度勉強して頂く必要はありますね。「素人感」が出るとお客様も気づきますから。仮に夫婦でやるとしても、「接客は好きだけど、宝石や加工には興味なし」っていう人は続けにくいんじゃないかな。
それはそうでしょうね。ちなみに役割分担するのはどうです? 例えば旦那さんがリフォームや修理の技術を学んで、奥さんが接客やジュエリー選びのセンスを発揮する、みたいな。お互いが補い合う感じで、個人的にはいいんじゃないかと思うんですけど。
お店全体としてお客様に信頼いただけるのであれば、担当分野があってもいいんじゃないかな。まぁでも、「私は接客担当なので、ジュエリーのことは一切わかりません」みたいな感じじゃ難しいでしょうね。ウチに関しても、コンビニ感覚の修理店じゃなくて、「ここは専門的な技術のある店だ」という信頼感でもっているようなものですから。
なるほどなるほど。「便利さ」「手軽さ」よりも「プロに頼む安心感」が重要だと。確かに自分がジュエリーリフォームを頼むなら、そういうお店に頼みたいです。そう考えると、「定年後に夫婦で始める商売」として考えたとき、「本気でジュエリーが好きで、じっくり学ぶ覚悟があるか」が問われることになりそうですね。
そうですねぇ。例えばうちのスタッフでも、本当にジュエリーが好きな人はお客さんに選ばれますけど、ただ愛想よく接客しているだけではリピートしないんですよね。
ふーむ、なるほど。愛想がいいだけじゃダメで、宝石の作りや加工、そしてお客さんの思い出に寄り添う姿勢が必要なんでしょうね。そこが「素人感」と「プロ意識」の境目という感じがします。
ええ、やはりそういう世界かなと。だから「夫婦二人で時間つぶしがてら」ぐらいの気軽さだと厳しいかもしれません。しっかり向き合う覚悟があった方が仕事自体も楽しめると思いますし。
なるほど。つまりジュエリーに対する興味やプロとして信頼していただくという想いが前提で、その上で「接客担当」「技術担当」みたいな役割があってもいい、ということなんですね。
そうですね。でもそう言われてみると、どちらかに振り切ったほうがいい場合もありそうです。技術も接客もどっちも中途半端だと結局は苦しくなる。職人のような技術一筋でもいいし、徹底的に接客にこだわって加工は外注する、というスタイルでもいいのかもしれません。
なるほどなぁ。逆に言えば、同じRefineでも、お店ごとに多少カラーが違っていてもいいってことなんですね。でもいずれにせよ「宝石が好き」であることは外せない要素だと。
そう思います。僕も「定年後に夫婦で何かをやる」という考え方には共感するので、もし興味を持ってくれる方がいたら嬉しいですね。
対談している二人
望月 信吾(もちづき しんご)
ジュエリー工房リファイン 代表
25歳で証券会社を退社後、父親の経営する宝石の卸会社に入るが3年後に倒産。その後独立するもすぐに700万円の不渡り手形を受け路頭に迷う。一念発起して2009年に大塚にジュエリー工房リファインをオープンして現在3店舗を運営。<お客様の「大切価値」を尊重し、地元に密着したプロのサービスを提供したい>がモットー。この素晴らしい仕事に共感してくれる人とつながり仕事の輪を広げていきたいと現在パートナー募集中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。