第352回「新卒1社目の常識が違う」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第351回「大学はどうなっていくのか」

 第352回「新卒1社目の常識が違う」 


安田

研修期間中の新卒社員の中から、なんと4000人も退職者が出ているそうです。

石塚

そういう時代ですよ。

安田

モームリさん経由だけで90人も最初の1週間で辞めたそうです。

石塚

毎回これ言ってますけど。原因は就活の早期化ですよ。

安田

辞める理由は「入ってみたらブラックだった」「入社前に聞いていたのと労働条件が違う」「猛烈なワンマン社長だった」などが多いみたいです。これも早期化が原因でしょうか。

石塚

はい。僕はそう思います。今の就職活動ってデジタル化・テック化が進んでいる割に、ものすごく労力がかかるんですよ。

安田

どんな労力ですか?

石塚

会社ごとにいろんなお題があって。「動画を撮りなさい」とか「この課題やりなさい」みたいな。とりあえず会えばいいのにって思うんですけど。

安田

労力がかかるのと離職はどう関係するんですか?

石塚

学生はもう面倒くさくなっちゃう。そこに新卒人材紹介会社から案内が来て、友達に「一緒に行こうよ」って誘われて、行ってみたらチューターさんが全部そういうのを聞いてくれて。

安田

ほほう。

石塚

「そういう余計なエントリーとかしなくていいから。うちが紹介するところの説明会に行ってみたら」って感じで、行ったらスタートして決まる。

安田

え!そんなに簡単に決めちゃうんですか。

石塚

今リアルタイムで長女が就活やってるんですけど、周りは全員決まったそうです。みんな内定1、2社目で決めるんですって。

安田

これだけ選べる状況なんだから色々見りゃいいのに。

石塚

情報が溢れすぎて分からなくなるみたいです。

安田

Amazonのレコメンドで本を買っちゃう感覚でしょうか。

石塚

おっしゃる通り。「これでいいや」みたいな。内定が出たら「もう終わり」にする人が多い。

安田

昔とずいぶん違いますね。内定を出した人に就活をやめさせるのが大変だったのに。

石塚

飲み会におけるビールみたいなもんですよ。「まずはみんなビールでいいよね」みたいな。

安田

なんと。そんなに軽い感覚ですか。

石塚

突き出しを食べて「あんまり美味しくないから次行こうか」みたいな。

安田

入社してすぐに辞める人は「どこに行ってもダメな人材だ」って言われていたじゃないですか。

石塚

今は「合わない職場は1日でも早く辞めた方がいい」って意見の方が多いです。僕もそっちですね。合わないなと思ったらすぐ辞めた方がいい。

安田

企業の採用担当者もそう考えるんですか?

石塚

はい。ただし「なんで合わなかったか」「なぜこうなったか」をちゃんと自分で考えること。そこをきちんと答えられれば全く問題ありません。

安田

そこが明確ならすぐに辞めてもいいと。

石塚

社会人の基礎はどこかで学ばなきゃいけないから。ベースキャンプをどこに張るのかはちゃんとこだわった方がいいと思います。

安田

その判断をするのにある程度の期間が必要だと思いませんか?そもそも給料もらいながら社会人の基礎を教えてもらって、文句が言える立場じゃないと思うんですけど。

石塚

合わない理由って人それぞれだから。僕は合わない場所で無理やりやらなくてもいいと思う。今は選べる時代だし。

安田

じゃあ「3日で辞めました」って人が、次ですごくいい職場に出会うこともあると。

石塚

はい。あると思います。今は社会背景も変わってるし時代も変わってるから。

安田

会社という組織自体が合わない人はどうしたらいいんですか?どこかで我慢すべき?

石塚

お勤めが無理だったらフリーランスを目指すとか。お父さんにお金を出してもらって飲食店をやるとか。今の時代はいろんなやり方があるじゃないですか。

安田

社会人の基礎を学ばないまま自分でやるんですか?

石塚

どこかの会社の雇用契約をしばらくやらないと「社会人としてのベースは作れない」っていう考え方ですよね。ある意味それも色眼鏡かもしれませんよ。僕はそんなの必要ないと思う。

安田

必要ないですか?

石塚

これまでの「当たり前」っていうものをちょっと置いて考えなきゃいけない。もうそういう時代ですから。

安田

経営者はよくよく考えて新卒採用をしなくちゃいけないですね。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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