第96回 仕事の質を高める「お酒との上手な付き合い方」

この対談について

地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。

第96回 仕事の質を高める「お酒との上手な付き合い方」

安田

前回、「晩ご飯が人生最大の喜び」という話をしましたが、そこで欠かせないのがお酒の存在ですよね。ただ、年齢とともにその付き合い方が難しくなってきませんか? 私は最近、飲んだ翌日のパフォーマンス低下が気になって仕方がないんです。


スギタ

わかります。若い頃はいくら飲んでも平気でしたけど、今は残りますよね。ただ、僕の場合は結構飲んでも、次の日はわりとパチッと起きられちゃうんですよ。

安田

えっ、それはすごい。二日酔いで動けない、みたいなことにはならないんですか?


スギタ

もちろん限界を超えて飲んで「今日は終わった……」と後悔する日はありますよ(笑)。でもワイン1本くらいなら翌日の仕事にも支障が出ないんです。健康診断の数値も肝臓を含めてオールAで。だからつい「まだ大丈夫だ」「仕事もできてるし」と飲み続けてしまう。

安田

なるほど、体が丈夫な分、ブレーキがかかりにくいんですね。私も以前は365日欠かさず飲んでいたんですが、アトピーが出たり体が痒くなったりして、「これは飲みすぎだ」と強制的に気づかされました。それからは休肝日を作るようにしたんです。


スギタ

僕も365日飲むタイプだったので、休肝日を作る辛さは想像できます。最初は週に1日抜くだけでも地獄ですよね?

安田

そうなんですよ。たった1日なのに、我慢しているストレスがすごくて。その反動で翌日に倍くらい飲んでしまったりして(笑)。でもそこから「週2日抜く」に挑戦して、代わりにお茶と羊羹を楽しむようにしたら、だんだん慣れてきたんです。今では1週間飲まないこともザラにあります。


スギタ

すごい変化ですね。そこまでいくと、飲んだ時の感覚も変わりませんか?

安田

変わりました。久しぶりに飲むと、翌日の頭の回転が明らかに鈍るのがわかるんです。「昔はこれを普通だと思っていたけど、実はパフォーマンスが落ちていたんだな」と気づきました。もし若い頃に酒を飲んでいなければ、もっといい仕事ができていたかもしれないと後悔するくらいです(笑)。


スギタ

安田さんのお仕事は執筆や思考などの知的生産活動がメインですから、脳のコンディションには敏感になりますよね。僕の場合は、ケーキパンを作るという体を使うオペレーション業務も多いので、多少頭が重くても体が動けばなんとかなっちゃう(笑)。

安田

なるほどなぁ。とはいえ、お酒がない人生なんて考えられないとも思うんです。美味しいお寿司やフレンチに行った時、そこにお酒がないなんて人生の損失じゃないですか。


スギタ

間違いないです。料理とお酒のペアリング、そしてその場の空気感や情緒を味わうこと。それを含めての「食事」ですから。僕もおせちやカラスミを食べる時は日本酒がないと始まらないと思いますし、その幸福感は健康に変えられない価値がありますよ。

安田

そうなんですよね。だから結局、「量より質」にシフトしていくしかないのかなと。毎日だらだら飲むのではなく、美味しい食事の時だけ最高のお酒を飲む。逆に言えば、カレーみたいに「お酒がなくても成立するご飯」の日は飲まない。そうすれば、週に3日は休肝日にできる(笑)。


スギタ

「中3日でカレーを挟む」作戦ですね(笑)。それなら無理なくお酒を減らせそうです。実は僕も2、3年前に、娘の高校受験の願掛けで1ヶ月間完全に断酒したことがあるんですよ。

安田

えっ、1ヶ月もですか? それは自主的に?


スギタ

いや、娘に頼まれたんです。「私が受験勉強している間、パパのダル絡みが面倒くさいから酒を止めてくれ」って(笑)。

安田

ダル絡みするんですか(笑)。

スギタ

どうやらしているみたいで(笑)。それで2月の1ヶ月間を一滴も飲まずに過ごしたんですが、やってみると意外と苦じゃなかったんです。むしろ驚いたのが、「夜の時間がものすごく長い」ということでした。

安田

わかります! シラフの夜ってこんなに長いのかと驚愕しますよね。


スギタ

そうなんです。その1ヶ月で本もたくさん読めたし、映画も見られたし、めちゃくちゃ有意義な時間が過ごせました。ただ、お酒を飲まないと食事がすぐ終わっちゃうじゃないですか。そうすると僕は「ごちそうさま」ってすぐ自室に引きこもって本を読み始めちゃうんですよ。

安田

ああ、リビングからパパがいなくなっちゃうわけですね。

スギタ

そうなんです。そうすると娘たちが「パパがいないと面白くない」と言い出して、「部屋に引きこもられるくらいなら、ダル絡みされてもいいからここで飲んでくれ」って(笑)。

安田

結局飲むことになるんですね(笑)。でもその「飲まない時間の豊かさ」を知っているのは大きいですよね。お酒を飲む楽しさと、読書や映画に没頭できる楽しさ。この二つを天秤にかけて、自分でコントロールできるようになれば最強です。

スギタ

そうですね。どちらか一方に偏るのではなく、飲む日はとことん楽しんで、飲まない日は別の趣味を楽しむ。そういうバランス感覚を今年は大事にしていきたいですね。

安田

いいですね。私も羊羹とお茶の日を楽しみつつ、たまにはスギタさんと美味しいお酒を飲みたいと思います。

 


対談している二人

スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役

1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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