第119回 若い頃の苦労は「買ってでもすべき」という勘違い

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第119回 若い頃の苦労は「買ってでもすべき」という勘違い

安田

藤原さんは若い頃にかなり厳しい環境を経験されたと仰っていましたよね。苦境は人を鍛えるとよく言われますけど、若い頃の苦労は買ってでもすべきだと思われますか?


藤原

いや、私はそうは思っていなくて。「苦労の定義」が大事なんですけど、誰かに決められたことや自分が望まないことを無理に頑張ることが苦労だとするなら、若いからといってそれをやるべきだとは思いません。

安田

なるほど。ハードワークそのものを否定しているわけではなく、その中身の問題だと。


藤原

ええ。自分がこれだと思えること、時間を忘れて集中できることってあるじゃないですか。でもそういうことの中にも壁や苦しい場面は必ず出てくる。そこに対して逃げずに向き合うという意味での苦労はやった方がいいと思いますね。

安田

心が拒絶するようなことを我慢してやり続ける苦労を、20代だからといってやる必要はないということですよね。


藤原

そうですね。仮にゲームが好きだったらとことんやればいい。でもゲームを追求していく過程で苦しいことは必ず出てくるはずなので、そこからは逃げずに向き合うべきだと思います。

安田

なるほどなぁ。ちなみに藤原さんは息子さんが3人いらっしゃいますよね。子育てのとき、食べ物の好き嫌いってどうされました? 体が本当に拒否しているものもあれば、食わず嫌いもある。栄養を考えたら食べた方がいいけど、無理やり食べさせるのもどうなのかと。


藤原

無理には食べさせなかったですね。伝えた上で自分で判断しなさいという感じで。一番上の娘が中学生の頃、七味を山ほどかけるくらい辛いもの好きで。さすがにやめた方がいいとは伝えましたけど、強制はしませんでした。見ていて心配になるほどでしたけど(笑)。

安田

そこまで辛いもの好きだと確かに心配になりますね。今もお好きなんですか?


藤原

いや、今28歳ですけど、全然好きじゃなくなったみたいです(笑)。そういうのを見ても、結局子どもに無理やり何かをやらせることはできないというのが私の実感です。

安田

そうですよね。極端に食べたくなることもあれば、どうしても受け付けないものがあっても不思議じゃない。


藤原

ええ。それを無理やり変えようとしても長続きしないし、本人にとってもハッピーじゃないですから。

安田

ただそこの境目が難しいんですよね。前回の思考領域の話にもつながりますけど、嫌だと思っていたことがスイッチ一つで得意になることもあるわけで。とはいえ「20代は何でもやれ」では少し乱暴な気もしますし。


藤原

それでいうと、私は子どもにも部下にも「まずは自分で決める。そしてそれに対して責任を持つ」ことを求めてきた気がしますね。自分で決めたことなら、案外踏ん張って頑張れるものだと思うんです。

安田

なるほど。となると、「若い頃の苦労を買うべきかどうか」は、そもそも自分が買ってでもしたい苦労かどうかがまず大事だということですね。


藤原

そうですね。つまりそのことをやると自分で決めたのかどうか。勉強をやった方がいいと言われても、野球の方が大事だと思うならそうすればいい。ただし結果の責任は自分で取るんだよという話ですよね。

安田

よく言われるのが、音楽やスポーツで食べていける人は何万分の一で、勉強ならクラスのトップ3に入れば十分生きていける。だから取り返しがつかなくなる前に、基礎的な仕事の能力は上げておけと。これについてはどう思います?


藤原

私はそうは思わないですね。取り返しがつかないって、何に対してなのかと。確かに音楽しかやってこなかった人がサラリーマンとして雇われるのは難しいかもしれない。

安田

まぁそうでしょうね。履歴書に「音楽だけやってきました」と書いても、受かる会社はほとんどないでしょうから。

藤原

でも別にサラリーマンじゃなくたっていいわけですから。何をやったって食べていける社会で、どこまでいっても取り返しがつかないなんてことはないと思います。

安田

食べていくくらいは何をやっていてもできると。確かにそうですよね。そもそも無難に食べていくことが人生の成功というわけでもないですし。

藤原

そうですよ。何をもって自分の人生が幸せだと思えるのか。その定義を自分で決められるように導くというか、それが大事なんじゃないかと思うんです。

安田

興味を持ってやりたいことに一生懸命取り組んで、たとえ結果がついてこなくても、それ自体が人生の醍醐味ですもんね。ジェットコースターに乗って怖くて後悔したとしても、それもひっくるめてジェットコースターの体験ですし。

藤原

そうそう。私がそう思えるようになったのは親の影響かもしれません。両親とも大学を出て名の知れた会社でサラリーマンを全うした人たちなんですが、高校からほぼ勉強せず大学も受けなかった私をまったく否定しなかったんです。

安田

それはすごいですね。普通なら「今やらないと将来困るぞ」と言いそうなものですけど。

藤原

そうなんです。自分で責任を取るなら好きにやれという感じの親だったので。私自身がかなり道を外れてきた人間ですけど、どこまで行っても取り返しがつかないなんてことはないだろうなと思えるのは、親のおかげかもしれませんね。

安田

結局は自分の人生ですからね。自分で後悔せず満足するなら、それでいいということでしょうね。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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