第118回 苦手なことは「スイッチ」が押されていないだけ?

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第118回 苦手なことは「スイッチ」が押されていないだけ?

安田

「思考領域」というものについてお話ししたいんですが。ラジオって周波数によって入る番組と入らない番組がありますよね。あれと同じように、人間の脳にも思考の周波数みたいなものがあるんじゃないかと最近思ってまして。


藤原

なるほど。確かに具体的な話が得意な人もいれば、抽象的な議論のほうが好きな人もいますよね。それは単なる好みの話ではなくもっと構造的なものだと。

安田

そうなんです。哲学者みたいに宇宙の真理を考える人って、普段の生活でちゃんと歯磨きできないなんて話を聞いたことがあって。それって優劣ではなく、思考にも得意領域があるということだと思うんですよ。


藤原

そう言われるとそうですね。私はメールマガジンをそんなに苦労なく書けているので、つい誰でも少し頑張ればできるんじゃないかと思ってしまう。でもそれはちょっとおこがましいことなのかもしれない。

安田

そう考えると、全ての人に抽象的思考を期待するのは無理があるんじゃないかと。もちろん、得意な思考領域のちょっと先くらいであれば、訓練で多少はわかるようになると思いますし、自分では苦手だと思い込んでいるだけの分野もあるとは思うんですけどね。


藤原

向いていることをやっていると、時間の経過を忘れてしまったりしますよね。気づいたら何時間も経っているのか、それともしょっちゅう時計を見てしまうのか。そのあたりが向き不向きの一つの指標になるのかもしれませんね。

安田

他の人がすごく時間をかけていることを、自分は簡単にできてしまう分野もありますからね。ちなみに私は大学時代に数学を専攻したんですけど、もともと苦手だったのでアメリカの大学で分数の足し算からやり直したんです。


藤原

分数の足し算からですか。それはまた思い切ったリスタートですね(笑)。

安田

ええ(笑)。でも基礎からやったらできるようになって、最後は数学の先生をやるくらいまで得意になりました。ところがある分野を境にいきなりわからなくなる。微分積分はポンポン理解できたのに、N次元みたいな話になると全くついていけなくなって。


藤原

N次元ですか。私もそこはついていけないですね。でも大学院に行くような人にとっては当たり前なんでしょうね。

安田

そうそう。数学の大学院に行くような人に聞くと、そこにつまずきがないんですよ。「仮にN次元と置いてるだけですよ」と言われるんですけど、自分の想像が追いつかない。そのときに、自分は数学で飯を食っていける頭じゃないんだなと。


藤原

ははぁ、その感覚はわかります。でも安田さんがさっき仰った「思い込み」の話でいうと、もしかしたらスイッチの押し方が人によって違うのかもしれないなとも思います。

安田

ほう、なるほど。それは面白い見方ですね。


藤原

上手にスイッチを押してくれる先生と出会えば、安田さんもN次元がすっと入ってくる可能性はあるんじゃないかと。苦手なことをいつまでもやらないのは合理的だけど、まだスイッチが押されていないだけという可能性もある。

安田

確かにそうかもしれない。人間って他の動物より頭がいいって言われますけど、あれも思考領域の差のような気もして。動物って自分を客観視することがないじゃないですか。自分を第三者的に眺める視点、いわば自分を抽象化できるところが人間特有の思考領域なんじゃないかと。


藤原

犬は人間に感じられない匂いを感じたり気配を察知したりするわけで、人間が持っていない能力を持っている。つまり得意領域がそもそも違うということですよね。

安田

ええ、まさに。だから人間が頭がいいというよりは、得意な領域が違うだけなんですよ。鏡を見せると犬は驚くと言いますけど、犬は犬で人間にはない能力を持っているわけですから。


藤原

確かに確かに。それでいうと、犬と人間は根本的に脳の構造が違いますけど、人間同士の差はそこまでではないはずですよね。ちなみにうちの息子の話なんですが、私自身は学業の落ちこぼれで大学も行っていないんですけど、息子が今度博士課程に進むんです。

安田

へえ、それはすごいですね。お父さんが大学に行っていなくても関係ないということですか。

藤原

ええ。ただ彼を見ていても、別に天才だというわけでもない。ただ何かしらのスイッチが押されてクリアになった瞬間があったように見えるんです。だから向き不向きとか思考領域というのは、自分で決めつけないことが大事なんじゃないかと。

安田

なるほどなぁ。それでいうと、鍛えるのとは逆に衰えていくということもあるかもしれません。京大出身の知り合いは星の王子さまが何度読んでも意味がわからないらしいんです。箱の中にヒツジがいるという発想がどうしても理解できないそうで。

藤原

それは興味深いですね。具体思考を鍛えすぎた結果、抽象的な感性のほうが衰えてしまったということなのかもしれません。

安田

そうなんです。もしかしたら生まれたときは、全ての領域の思考ができるように生まれてきているのかもしれない。ある部分を鍛えるがゆえに、別の部分が表裏のように衰えてしまうという。

藤原

得意を伸ばすことと引き換えに、別の可能性を閉じてしまっている。そう考えると思考領域は固定されたものではなく、育て方次第で変わりうるものなのかもしれない。だからこそ自分で決めつけないことが大事なんでしょうね。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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