みなさん一度はSNSやネットで目にしたことがあるであろう、「新幹線で自分の指定席を狙ってきた迷惑な人をなんとか撃退した話」。
これはじつはイヤな話ではなく、人気コンテンツです。
迷惑をかけてくる相手には、豊富なバリエーションが存在します。満員の自由席から流れてきたパターン、子連れのパターン、外国人観光客のパターン、老人のパターンetc……
この膨大なパターンこそ、「もっといろんな話でみてみたい」というニーズのあらわれに他なりません。なぜこの類話はこうまで私たちを惹きつけるのでしょうか。
それは、現代において数少ない、「リアルな勧善懲悪活劇」だからです。
「スカっと系」といわれる、悪いやつが出てくる人間関係トラブルの話はネット上にあふれています。ですが、私たちはそのウソくささというものに飽きています。設定に慣れ、展開に慣れ、それが事実かどうかが疑わしいことにも慣れきっています。
一方、新幹線の話はどこか生臭くリアルです。
類似の体験として、交通機関や映画館などで、他人が(自分の場合もあるでしょう)席を間違えたことでちょっとした緊迫感を感じたことがある人は、世の中の相当な割合でいるはずです。
また、新幹線という舞台も秀逸です。これが地元の人か電車に詳しい人しか知らないような、どこかの特急の指定席ではダメです。誰もが帰省など、なんだかんだで年一回程度は乗る機会があるかもしれないくらいの場所、そんなポジションは新幹線をおいてほかにありません。
そして決定的なのが、試練の存在です。あなたが正当な権利者であることを知らされて、「あ、間違えました!すみません」という相手ではいけません。
正気を疑うほどに図々しいとか、日本語が通じないことを武器にするとか、風景を見たがる子どもを盾にするとか、敵は様々な妖術を使って対抗してきます。それを、苦難の果てに指定券というエクスカリバーで最終的には打ち破る、そんなちょうどいい難易度が設定されたゲーム。
それが「新幹線指定席のトラブルの話」です。
水戸黄門も暴れん坊将軍もどこかに行ってしまった令和で、信じられるヒーローは自分の社会的権利だけなのです。
















