経営者の自由

社員はたくさんの不自由を抱えている。まず出社の時間が決まっている。誰の部下になるのか、誰の上司になるのか、どんな仕事をするのか、何月何日が休みなのか。それらを自分で決めることはできない。その代わりに会社が潰れても責任を負わなくていい自由がある。有給休暇という夢のような自由もある。

経営者は自由そうに見えるが実は多くの不自由を抱えている。まず会社を辞める自由がない。勝手に転職するわけにはいかないし、赤字で自分の給料がゼロになっても働き続けなくてはならない。どんなにお金がなくても社員の給料は払い続けなくてはならない。社員分の社会保険料まで払わなくてはならない。

その代わり社員にはない大きな自由が与えられている。まず会社や事業を終わらせる自由がある。どんな事業をやるかも自由だし誰を顧客にするかも自由だ。会社に行く必要もないし、誰かの命令を聞く必要もないし、一切仕事をしなくても文句を言われる筋合いもない。社員から見たら夢のような話である。

要するに社員も経営者も自由であり不自由なのであるが、その種類が違うということ。社員は不自由と引き換えに責任からの自由を手に入れ、経営者は不自由と引き換えに経営の自由を手に入れている。問題はこの自由を行使できていない経営者である。不自由だけを背負わされてがんじがらめだ。

まず地域や業界に縛られている。人の問題に縛られている。顧客からの要望に縛られている。結果、自由なはずの経営者がとても不自由になっている。その原因は不景気でも人不足でも業界事情でもない。自由を放棄してしまった自分の問題なのである。社員でありながら報酬や休暇を放棄しているのと同じだ。

経営者には仕事を選ぶ自由がある。場所を選ぶ自由もあるし人を雇わない自由もある。儲からないなら仕事を変えればいいのである。商品を作り直せばいいのである。人が来ないなら来たくなるように仕事や待遇を変えればいい。あるいは人など雇わず儲かる事業を考えればいい。何をやるのも自由なのだから。

確かに経営者には逃れられない不自由がある。だがそれは問題の本質ではない。問題は不自由と引き換えに得たはずの自由を行使していないことだ。「この地域は」「この業界は」「この人不足は」「うちの社員は」と文句を言うのは筋違いである。なぜならそれは自分自身が選んだことなのだから。

 

 

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