小さなブルーオーシャンを追え
第4回『互いのリスペクトで成り立つ関係』

ほとんどの人が聞いたこともない木型というビジネス。シュリンクし続ける業界において、過去最高の利益・利益率を生み出し続ける株式会社ノダ。その秘密に迫ります。

小さなブルーオーシャンを追え
〜木型屋が見つけたブルーオーシャン〜

第4回『互いのリスペクトで成り立つ関係』

安田

現地の企業はもちろん、日本製と同じ品質を求めますよね?

野田

もちろんそうです。特に日系企業は「日本と同等品質」でなければ認めてくれないところが多い。

安田

売価は日本製と同じなんですよね?

野田

日本製と同じぐらいの金額で販売してます。

安田

ということは、価格優位性はないわけですよね。

野田

製品の価格自体は変わりませんが、納期のメリットがあったり、あとは送料とかもバカにならないんで。

安田

なるほど。だから同じ価格でも勝っていけると。

野田

品質さえしっかりしていれば。

安田

だから、立ち上げには、日本の職人さんが現地に行かなきゃいけない。

野田

そうです。最初はやっぱり行かなきゃいけない。1年くらい日本人の職人が張り付いて、次は現地採用した人材を日本に連れてきて、育ったら送り返す。

安田

何年ぐらいあれば、現地のスタッフだけで回せるようになるんですか?

野田

だいたい2〜3年ぐらいあれば。

安田

2カ国目、3カ国目も同じパターンですか?

野田

いえ、 2カ国目とか、3カ国目になってくると、現地人材同士で育て合います。

安田

じゃあ、たとえばタイを立ち上げる時に、ベトナムの子がタイに行って、みたいなこともあるんですか?

野田

あります。第3国研修という制度があって、タイを立ち上げる時にベトナムの人が手伝いに行くと、日本から補助金が出るんですよ。

安田

そんな制度があるんですか?

野田

はい。たとえばフィリピンは3番目に出した国なんですけど、ここに関してはほとんど日本人は行ってません。

安田

そうなんですか。

野田

工場長だけは行くんですけど、従来だったら2〜3人日本人を置くのが1人だけ。ベトナムとタイの子らが現地に行って、フィリピン人の教育をしてくれました。

安田

なるほど。今はベトナム・タイ・フィリピンが完成していて、今後はさらに国を拡大していこうってことですよね。

野田

はい。そうです。

安田

客観的に見たら「すごくいい子たち」なんだろうなと、思うんですけど。

野田

現地の子ですか?

安田

はい。だって、わざわざフィリピンまで行ってくれるわけですよね。本当だったら日本から行かなきゃいけないところを、代わりにやってくれる。

野田

そうですね。

安田

最近、日本国内では、いろいろ問題になってるんですよ。

野田

何がですか?

安田

海外から研修と言いつつ連れてきて、半分詐欺みたいな感じで働かせて、あんまり給料も払わず、利用するだけ利用して、みたいなケースが多い。

野田

そういうのって、本当に一部の極端な例っていう気がします。

安田

でも実際、職場から逃げ出す人も多くて、社会問題になってるんですよ。

野田

ウチは海外人材に関しては、かなり離職率が低いです。国内の人材も、今はほとんど辞めないですね。

安田

でも普通に考えたら「ノダさんのために頑張ろう」みたいには、ならないと思うんですよ。何か特殊なことをやってるんですか?

野田

もちろん日本でのメンタルケアも徹底しますし、あとはカルチャーですね。

安田

カルチャー?

野田

日本の文化とか企業風土に触れる場を、定期的に設けてます。食事会とか。

安田

食事会ですか?

野田

そうです。日本のスタッフと触れ合うことで安心するじゃないですか。「本体側はこんな感じだから、この会社は安心して働ける」と感じて帰ってもらえる。

安田

それだけで、そんなに変わるもんですか?

野田

とても大事なところだと思います。あとは、日本で学んで帰っていく人材は、給与面でも優遇しています。

安田

優遇?

野田

そうです。日本で学んだ分レベルも上がってるし、日本語も覚えて帰りますんで。

安田

じゃあ、日本で研修を受けた子は、現地にずっといる子より給料が高い?

野田

やっぱりスキルが高いですし、リスクも背負ってやって来てくれますんで。

安田

ちなみに、日本で研修してる間の給料は、日本人と比べてどうなんですか?

野田

3分の2は国から助成金として出していただけるんで、僕らは3分の1を出すんですけど、それは日本の最低労働賃金プラスアルファって感じですね。

安田

だいたい、いくらぐらいなんですか?

野田

国が定めてるんで、僕らが出してる分に関しては「ざくっと1日3,000円ぐらい」ですかね。30日だと9万円。

安田

じゃあ、月給は、その3倍になるってことですか?

野田

まあ、だいたい、それぐらいじゃないですかね。

安田

27万ってことですか?

野田

たしか、それぐらいだった気がします。

安田

結構多いですね。

野田

そうですね。その分、賞与はないですけど。

安田

なるほど。研修中の家賃なんかは、自分で払うんですか?

野田

それは会社が負担します。

安田

じゃあ結構、お金貯まりますね。

野田

貯まると思います。だから来たいっていうのも、あるでしょうね。

安田

「日本に行きたい!」って言う人、結構多いんですか?

野田

多いですね。僕らが「ヨーロッパやアメリカで働きたい」という感覚に近いと思います。

安田

憧れみたいな?

野田

1年間ワーキングホリデーみたいな感覚で来て、単純に給料もいいし、帰ってからの職場も保証されてる。

安田

帰ったら当然、現地に合わせた給与になるわけですよね。

野田

もちろんそうです。

安田

日本国内にいた頃よりは、下がりますよね。

野田

もちろん下がります。

安田

そこで不満は出ないんですか?

野田

出ませんね。

安田

現地の他の企業よりは高いから、不満が出ないってことですか。

野田

他の企業といいますか、日本に来る前よりは上がりますんで。

安田

なるほど。で、その後、給料は上がって行くんですか?

野田

海外に進出する企業は「定期的に人材を替える」というスタイルが多いんですよ。

安田

定期的に入れ替える?

野田

はい。どういうことかっていうと、給料上がっていきますから3〜4年ぐらいしたらいろいろ理由をつけて辞めてもらい、新しい人材に入れ替える。

安田

ノダさんはどうなんですか?

野田

僕らは「残ってもらってなんぼ」だと思ってるんで、終身雇用というか、できるだけ長く働いてもらえるように環境づくりに力を入れてます。

安田

たとえば、どのような?

野田

その最たるものが、給料を高くする努力です。

安田

とはいえ、日本国内にいる社員さんのほうが、給料高いわけじゃないですか。現地の人からしたら「俺たちは日本人の下で使われてる」みたいにならないですか?

野田

ならないですね。たとえば日本人と同じように「ずっと日本で働きたい」っていう子も何人かいるんです。

安田

国に帰らずに、そのまま日本で働くということですか?

野田

そうです。そういう子は長期ビザを取ってあげる。職人として日本に根付く子もいるし、日本人と同じようにマネージャーになって行く人もいる。

安田

国籍では差別しないと?

野田

国籍は関係なく、勤務地に応じてしっかりと給料を払う。待遇もスキルに応じて変えていく。それがグループ全体の方針なんで。

安田

じゃあ、国内のノダの社員さんは「俺たちのほうが上だ。日本人だから」みたいな感覚ってないんですか?

野田

ないと思いますね。

安田

じゃあ、現場では結構、仲良くやってるんですか?

野田

めちゃくちゃ仲がいいと思います。

安田

へえ〜。

野田

それはたぶん「自分らが彼らに助けられてる」っていう意識が強いからだと思うんですよね。

安田

助けられてる?

野田

はい。凄くハードワークだった所に彼らが来てくれて、自分らの環境がよくなったのを肌で実感してるんで。

安田

なるほど。

野田

だから、お互いに尊重しあったり、リスペクトしあいながら、関係を保ててると思います。

安田

じゃあ、日本の社員さんは「助けてくれた」ことをリスペクトして、海外の子も「育ててもらった」ことをリスペクトして、上手くバランスが取れてる?

野田

それがなかったら、たぶん上手くはいかないです。

安田

海外から来ている人と、日本の社員さんとの飲み会って、結構あるんですか?

野田

うちはホントに多いんですよ。

安田

そういうのって、日本の若者は「嫌だ」って人が増えてるんですけど。どうなんですか?向こうの若い子は。

野田

海外のメンバーはかなり積極的に、100パー参加してくれますね。お酒飲んでたら「あんまり言葉通じなくてもわかり合える」ことも多いですし。

安田

仲良くやってると。

野田

仲良くやってますね。

安田

じゃあ、「もし疑う人がいたら、現場見てくれていいよ」と。

野田

もちろん。いくらでも見てください。歓迎します。

・・・第5回(最終回)へ続く・・・


野田 隆昌 (のだ たかまさ)
株式会社ノダ 代表取締役
https://www.kigataya.com/
ノダの海外ノウハウをシェア!個社ごとに職場見学会を実施。

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