第137回 子どもの「意思」の育て方

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第137回 子どもの「意思」の育て方

安田

私からすると、藤原さんはすごく理想的な子育てをされているように思うんです。よく「子どもに自分で決めさせる」と仰ってますよね。私は今、2回目の子育て中なんですが、そのあたりをぜひ教えてほしいなと。


藤原

いやいや、理想的だなんてとんでもない。あくまで私個人の一例に過ぎませんよ(笑)。

安田

それを聞きたいんです。例えば、決めることが苦手な子もいるじゃないですか。あるいは、判断を任せるといつもラクな方を選んでしまうとか。


藤原

ああ、判断を委ねすぎると、そうなってしまうリスクは確かにありますね。

安田

そうですよね。そういう意味では、ある程度の年齢までは、親が「これをやりなさい」と導くことも必要な気がするんです。藤原さんは何歳ぐらいから子どもに決めさせていたんですか?


藤原

おそらく小学生くらいの頃からだったと思います。少しずつ自我が芽生え始める頃というか。

安田

ああ、確かに。うちの子もちょうど小学1年生なので、そろそろそういう時期ですね。でもいきなり「自分で決めなさい」と任せるのも、少し難しい気がしていて。


藤原

もちろん、「全部自分で決めろ」と突き放すわけではないんです。「あなたはどう思う?」と問いかけることを意識する。日常の小さなことでも、まずは自分の意見を持たせることがスタートかなと。

安田

ははぁ、なるほど。いきなり決めさせるのではなく、決断の前提となる「自分の意見」を持たせるところから始めるんですね。


藤原

そうです。決めるためには、まず自分がどうしたいのかを知る必要がありますから。だから「どうしたいの?」と問いかける癖をつけて、日常的にボールを投げていた気がしますね。

安田

「自分で決めろ」ではなく、「君はどう思うんだ」と。でもすんなり聞き入れられない時もありますよね。例えば塾に行かせていて「自分で考えたけど、やっぱり辞める」と言い出したり。


藤原

ああ、ありますよね。

安田

「もっと遊びたい」とか「ゆっくりしたい」という理由でそう判断してしまう。親から見れば「そうしない方がいい」と思うんですが、でも本人から「よく考えて決めた」と言われてしまったら、受け入れるしかないのかなと。藤原さんはどうしていました?


藤原

そういう時は、まず「なぜそう決めたのか」をしっかり聞きますね。その内容に納得できたら、基本的にはその意思を尊重してたように思います。

安田

は~、そういう時も尊重するんですね。でも親としては不安になりませんか?


藤原

なりますなります。だから同時に、「自分で決めたことには責任が伴う」ということも伝えていました。辞めるにしても続けるにしても、その結果は自分が引き受けるんだよ、と。

安田

結果の責任までセットで伝えるんですね。でもそれって子どもは理解できるんでしょうか。


藤原

難しい言葉ではなく、子どもに伝わる言葉で話すことが大事だと思います。それを繰り返すことで、だんだんとそういう意識を持ってくれればいいなと。

安田

とはいえ後から「あの時自分で決めたんだろ」と言われても、それはそれで困ることもあると思うんです。例えば私、親に自転車を買ってもらえなかった過去があるんですね。

藤原

そうだったんですか。なぜ買ってもらえなかったんでしょう?

安田

それが親が言うには、私が三輪車に乗りたがらなかったらしいんです。嫌いだから乗りたくないと。なのでその後「じゃあ自転車も強要しない方がよいだろう」と親は判断した。結果、私は高校になるまで自転車に乗れなくて(笑)。「そこは無理やりでも乗せてくれよ」と後から思いましたけどね(笑)。

藤原

それは大変でしたね(笑)。

安田

とはいえ当時の私が頑なに三輪車を拒否したのも事実で、親はそれを尊重してくれただけとも言える。だから難しいなと思うんですよ。例えば「学校をやめる」とか、親から見たら絶対やめたほうがいいことでも、子どもが頑なに譲らなかったら尊重した方がいいんでしょうかね。

藤原

私自身の話で言えば、最終的には任せようとしていましたね。でもそのまま黙って見過ごすわけではなくて。「お父さんはこう思うぞ」と意見は伝えます。例えば「今学校に行かない選択をすると、後でこういうことに困るかもしれない」と。その上で、「それでもそうしたいなら尊重するけど、どうする?」と問うんです。

安田

なるほど。本人に決めさせるけれど、意見やリスクについてもしっかり説明すると。

藤原

そういうことです。もっとも、先々で間違えたと気付いたら、またそこで考えればいいだけなんですけどね。

安田

なるほどなぁ。実は、私も藤原さんの真似をして「自分で決めていいよ。でも責任は自分で取れよ」と子どもに言ってみたんですよ。当然喜ぶだろうと思ったら、意外にもすごく寂しそうな顔をして。結局、「だったら言う通りにする」ってなっちゃったんです。

藤原

ああ、なるほどなぁ。その寂しさもわかる気はしますね。ただ仮に「お父さんの言う通りにする」としても、そうすると決めたのは本人じゃないですか。

安田

そうなんですかね。親の意見に流されているだけのようにも見えて。

藤原

だからこそ「あなたはどう思う?」と問い続けるんです。それでも「わからないから決めてほしい」と言われたら、「じゃあこう決める。でもお父さんが決めたからって、何か起きた時にお父さんのせいにするなよ?」と伝えます。

安田

ああ、そうか。自分が決めたという感覚を持たせることが大事なんですね。うーん、社員に対してなら同じようにできるんですが、子ども相手だとどうしても不安で(笑)。

藤原

わかりますよ(笑)。ただ、相手が子どもでも大人でも、基本は同じだと思います。もちろん年齢に合わせて伝え方は変えますが、自分の意見を持ち、自分で決め、その結果を引き受けるというプロセスは変えなくていいんじゃないかと。

安田

20歳までは親が責任を持つとしても、その関わり方は続けると。

藤原

ええ。親として責任から逃げるつもりはありません。でも自分の行動を自分で決めて責任を持つことへの意識付けは、少しずつでもやっていくべきだと思っています。

安田

助言はするけれど「最終的には親が決めない」というスタンスが重要なんですね。決断の手前にある「意思」を確認し続けるというか。

藤原

そうです。最終的に親が介入するにしても、その前に「あなたの意思はどうなの?」と問うこと。それが自分で決めさせるということだと思います。

安田

いやぁ、すごく納得できました。素晴らしいアドバイスをありがとうございます。今日からまたやってみようと思います。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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