その92 スーパーマーケット・ファンタジー

近ごろ思うところあって夕食を自作しているのですが、
スーパーマーケットという場所は、
まあ、なんというかファンタジックな場所なのですねえ。

当方、ただの初老のオッサンですので
スーパーにはちょくちょく赴くわけですが、
荷物持ちで行くのか、自分で作るつもりで行くのかでは
こんなに違う風に見えるのかと思います。

もう切ってある肉、もうさばいてある魚、小分けにしてある野菜。
店内は広くなくとも、豊富な食材はあらゆるジャンルを網羅しており、
一般にジャンルとしてある食材ならあらかたそろっているに違いありません。
おまえは日本は初めてかといわれるかもしれませんが、
味なのか香りなのか
パッケージ以外の違いがわからない醤油が並んでいるところを見ているだけで、
ちょっと大げさにたとえていえば、
広大なテーブルの上を数々の料理が占めている王様の食卓にいる気分に
近いものを感じます。

といいますのも、王様だって
そんな料理を全部食べられないことは最初からわかっていて、
並べられていること自体に意味を感じているはずです。
同じように、
消費者が扱いきれるのかわからない種類の醤油が提案されていること、
それ自体が贅沢なのです。

食材の内容についていえば、
その「ステータス」がすごいです。
工業製品でいえば、原料の入手から最終製品までの工程があるところ、
スーパーにあるのはほとんどすべてが最終製品に近いフェーズの品々です。
というか、どこかの町やどこかの国の農業や漁業のスタートから
近所のスーパーの棚にいたるまでの旅の長さからすれば、
焼くだけのパンや煮るだけの魚の切り身は
控えめにいっても半完成品、ほぼ完成品といって差し支えありません。

しかしながら一方で、
主婦(夫)にとってはメニュー作りという大きなテーマがあり、
日々毎回、家族に出す食事の献立を考えることがいかに負担であるか、
などといったことが長年絶えることなく語られています。

これは主婦(夫)ではないわたくしにはちょっとわかる気がいたします。

おそらく、毎日の献立に悩まれるみなさんは
「セミプロ」なのです。
プロの飲食業の方であれば、自分の好き嫌いを抜きにはしないまでも
お客さんを惹きつけ、
かつコストを意識したレシピを構築しなければならないでしょうし、
わたくしのようなほとんど何もできない素人であれば
ただ作るのに時間がかからず食えれば良いのです。

ある程度技術的引き出しがあり、自分が食べたいものであることは当然として、
できれば家族にもウケたい……などという複数の方向性があることで、
かえってアクションがまとまらず混乱してしまう、
これが主婦(夫)という「セミプロ」が抱える献立問題の内実ではありますまいか。

 

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著者自己紹介

「ぐぐっても名前が出てこない人」、略してGGです。フツーのサラリーマン。キャリアもフツー。

リーマン20年のキャリアを3ヶ月分に集約し、フツーだけど濃度はまあまあすごいエッセンスをご提供するカリキュラム、「グッドゴーイング」を制作中です。

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