【vol.278】航空業界のトレンドや近未来(パーソナライズ)

GlobalPicks 〜海外の情報を読み解いて、ビジネスに付加価値を投薬する方法〜 著者:小出 紘道


先週に引き続き「航空業界のトレンドや近未来」についての記事を読んでみたいと思います。
「Future Travel Experience(未来の旅行体験)」という名前のサイトの記事です。

今回の記事はコレ

10 technology trends that can enhance airline and airport operations in 2023
(2023年、航空会社と空港のオペレーションを強化する10のテクノロジートレンド)
(https://www.futuretravelexperience.com/2023/01/10-tech-trends-that-will-shape-passenger-experiences-and-business-performance-in-2023/)

10個のテクノロジートレンドは下記の通りです。

1.Automation and robotics
2.Artificial Intelligence and Machine Learning
3.Metaverse, digital twin and NFT
4.Personalisation
5.New approaches to retailing
6.Urban Air Mobility
7.Biometrics and digital identity
8.Private Networks
9.Return to collaboration with startups
10.Sustainability

 

4.Personalisation
(パーソナライズ)

Travellers increasingly expect end-to-end personalisation at every step of their journey. At CES 2023, Delta Air Lines demonstrated how it is responding by showcasing Delta Sync – its vision for more personalised travel, which brings together an ecosystem of digital services and experiences.

旅行者は、旅のあらゆる段階において、エンド・ツー・エンドのパーソナライゼーションをますます期待するようになっている。CES 2023でデルタ航空は、デルタ・シンク(デジタル・サービスと体験のエコシステムを統合し、よりパーソナライズされた旅行を実現する同社のビジョン)を展示し、その対応策を示した。

アメリカのデルタ航空が、機内の体験を個別にパーソナライズするようなサービス(機能)を発表したことを皮切りに、今後各エアラインが「パーソナライズ」という切り口で競争するだろう、という指摘ですね。

「パーソナライズする」ことって、多くの場合、一見「絶対的な正義」であり「いつでも正解」なような気がするものだと思います。
とにかくカスタマー側の自由度を高くして便利にすることで「あなたに適したカスタマイズ対応」していることを演出するわけです。

ここからは完全に個人の見解です。
個人的に、この「パーソナライズこそ絶対正義」の法則がそのまま航空業界に当てはまるとは思っていません。
特に空の旅を「非日常」と捉える多数にとっては「正義」かどうかすら怪しいと思います。

飛行機による「非日常の提供」とは、一定の「不自由」によって成立していると思っています。
「エアラインが顧客に合わせる(パーソナライズ)」ことよりも、「ちょっと不自由でも顧客側がエアラインの規定や制約に合わせる」ことによって、絶妙なバランスのもとに「非日常感が醸成される」側面がある産業だと思います。
「公共交通×エンタメとしての航空業界」の側面です。

例えば、パーソナライズすることで「好みの食事」や「好みの畿内エンタメ」やWi-Fi環境を「地上にいるときと同じように」楽しめる、というのは一見「大正義」のように思えます。「自由と日常性とパーソナライズ」の概念です。ただ、これはどちらかというと「非日常性価値を提供する」というよりは「日常性を機上に延長していく」という戦略ですよね。

一方で、空の旅を「非日常」かつ「公共交通×エンタメ」捉えている旅行者の目線としては「機上だから一定不自由は仕方ないけれど、その分非日常性と貴重な体験を手に入れること」に重きを置きたい、という関係性も存在しうるわけです。

このように感じている顧客の比率が一定以上いると思いますので、単純に「パーソナライズ」して「日常と同じように不自由なく過ごせること」を突き詰めていく戦略が「大正解」ではない可能性があると思っています。
 

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「本コラムと、本業ビジネスとの関係」(著者・小出紘道より)

本業ビジネスでは「マーケティング&戦略コンサル」の仕事と、「高付加価値情報提供サービス」の仕事をしています。本コラムは後者の「高付加価値情報提供サービス」の初級編としての入り口となればいいな、と思ってます。世界の誰かが”既にかなり研究したり、結論を出している”にも関わらず”日本では流通していない数値情報や文字情報”がたくさんあります。それらの情報を、日本のマーケットにフィットするように編集・分析すれば「競合他社」や「競合他者」を出し抜ける可能性が高まります。法人向けのサービスとなっていますので、詳細はFace to Faceでお伝えしますね。

著者情報


小出紘道 (HIROMICHI KOIDE)
◆株式会社シタシオン ストラテジックパートナーズ 代表取締役社長 http://citation-sp.co.jp
◆株式会社シタシオンジャパン 取締役会長 http://www.citation.co.jp
◆株式会社 イー・ファルコン 取締役 http://www.e-falcon.co.jp
<いわゆる経歴>
・2000年 株式会社東京個別指導学院に新卒で入社して、11ヶ月だけ働いてみた(→早めに飽きた) ・2001年 イギリスに行って、University of Londonで経済と国際関係を学んだり、Heriot-Watt Universityで経営学(MBA)をやってみた(→めちゃくちゃ勉強した)。この間に、イギリス人の友人とロンドンで会社を作ってみた(→イマイチだった) ・2003年 シタシオンジャパン社でマーケティングをやり始めてみた(→ろくにエクセルも使えなかった) ・2007年 シタシオンジャパン社の代表取締役社長になって経営をやってみた(→やってみてよかった) ・2018年 シタシオンジャパン社の社長を仲間に託し、引き続き会長としてコミットしつつも、シタシオンストラテジックパートナーズ社を設立してみた(→今ここ)
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