第12回 なぜストレスで胃に穴が開くのか。

この対談について

健康人生塾の塾長にしてホリスティックニュートリション(総括的栄養学)研究家の久保さんと、「健康とは何か」を深堀りしていく対談企画。「健康と不健康は何が違うのか」「人間は不健康では幸せになれないのか」など、様々な角度から「健康」を考えます。

第12回 なぜストレスで胃に穴が開くのか。

安田
今回は「胃」についてお話を聞かせていただきたいと思います。よく「ストレスで胃に穴が開く」って言いますけど、あれは本当なんでしょうか?

久保
ええ、本当ですよ。
安田
それってどういうことなんですか? というのも、ストレスって心の病みたいなもので、実体はないですよね。なのにどうやって胃に穴を開けられるんでしょうか?

久保
確かに、辛いとか大変だという「気持ち」が、物理的に「胃に穴を開ける」はずはないと思いますよね。
安田
そうなんですよ。心理的なものと胃に穴が開くことと、一体どうつながるんですか?

久保
まずストレスとは何かについて考えてみましょうか。野生動物の場合、最大のパフォーマンスを出すために体の中で起こる反応を「ストレス反応」と言ったりしますね。
安田
え? 最大のパフォーマンスを出すのが「ストレス」なんですか?

久保
ええ。それは「どういうときに最大のパフォーマンスが必要か」と考えるとわかりやすいです。たとえば草食動物にとっては、肉食動物に食べられそうになったときですよね。まさに生きるか死ぬかの極限状態。
安田
ああ、なるほど。そういう危機的状況の時に、力を出し切るためにストレスを発生させると。

久保
ええ。自分の体から最高のパフォーマンスを引き出すためには、必要のない部分を徹底的に削ぎ落とす必要があるんです。たとえば免疫力とか。
安田
なるほど。確かにライオンに食べられるって時に、風邪の菌と戦ってる場合じゃないですもんね(笑)。

久保
そうなんです(笑)。他にも、食べ物を消化して栄養を取り入れる、という機能も捨てます。
安田
体の中にある全てのエネルギーを「生き延びること」だけに使うわけですね。

久保
はい。免疫・消化・吸収など平常時であればとても大事な機能を、徹底的に削ぎ落とす。そして今を生きるために死に物狂いでパワーを出すことに集中する。それこそが「ストレス反応」なんです。
安田
は~、なるほど。そしてその話を聞けば、冒頭の「ストレスで胃に穴が開く」というのも不思議ではなくなりますね。

久保
そうなんです。過去の実験でも、「動物にストレスを与え続けると胃潰瘍ができる」という結果が出ていますね。
安田
心が病んでいるから胃に穴が開くのではなく、危機的状況により体のいろいろな機能がストップした結果、胃に潰瘍ができる。そういうメカニズムなんですね。

久保
とはいえ、自然界の動物たちは、比較的短い時間で危機からは解放されるじゃないですか。逃げ切ったり、戦いに勝ったりして。だから一時的に失っていた機能も元に戻り、その後は普通に暮らせます。
安田
だけど人間にとっての危機的状況は、すぐに改善されないことも多い。結果、長時間ストレスにさらされ、胃に穴が開いてしまうと。

久保
そういうことです。仕事であれ恋愛であれ家庭であれ、簡単に解決できない問題ばかりですからね。ストレス社会と言われる所以で。
安田
つまり「ストレス」は生物学的には正常な反応であり、悪いものではない。ただ、不自然に長くストレス状態が続けば、自分の体に深刻なダメージが現れてしまうと。

久保
はい、私はそう思いますね。
安田
なるほどなあ。でもどうして人間はこんなに長い時間悩み続けちゃうんでしょうね。

久保
そもそも野生動物は、感染症や怪我など以外で病気になることはないんです。でも人間は、感染や怪我に加え「心の病」が大きなウエイトを占めている。
安田
ああ。動物は「あの岩陰にライオンがいるかも」とか「数年後もちゃんとエサが食べられるかな」なんて考えないでしょうけど、人間は考えますもんね。それは人間に「危機予知能力」が備わっているからなんでしょうか。

久保
ああ、なるほど。頭がいいからこそ、考えなくてもいいことまで考えてしまうわけですね。そしてそれがストレスに繋がってしまうと。
安田
情報過多な状況もよくないと思います。最近特に、ストレスを煽るような情報が多くないですか? 人を不安にさせる情報が溢れているというか。

久保
仰る通りですね。人間のストレスを長期化させている一因だと思います。
安田
でもそもそも人間って、他の動物に食べられる心配もないわけで、そういう意味では一番危機意識を持たなくても大丈夫な動物じゃないですか(笑)。それなのに他のどんな動物よりストレスを感じてるって、なんだか皮肉ですよね(笑)。

久保
食物連鎖の一番上に立ってしまったが故に、本来しなくてもいい「余計な心配」ができてしまったんでしょうか(笑)。
安田
本当ですねえ。文明も発達し、平和になり、食べ物もたくさん手に入れられるようになったというのに、人間はいったい何をしているのか…。悩ましいですね(笑)。

久保
また新たなストレスが生まれてしまいましたね(笑)。

 


対談している二人

久保 光弘(くぼ みつひろ)
健康人生塾 塾長/ホリスティックニュートリション研究家

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仙台出身、神奈川大学卒。すかいらーくグループ藍屋入社後、ファンケルへ。約20年サプリメントの営業として勤務後、2013年独立し「健康人生塾」立ち上げ。食をテーマにした「健康人生アドバイザー」としての活動を開始。JHNA認定講師・JHNA認定ストレスニュートリショニスト。ら・べるびい予防医学研究所・ミネラル検査パートナー。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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