日曜日には、ネーミングを掘る ♯128「“CLOSED”」

今週は!
所属するブランドファーマーズ・インクにて、 半年ほど前から進めていた企画があった。
東京・神楽坂のバーのオーナーで、 酒育をテーマとした一般社団法人の 主宰者でもあるTさんを 中心としたプロジェクトで 地場のオーセンティックバーを中心に、 お客さまとお店をつなぐコミュニティを 立ち上げようというものであった。
事業形態や運営方法など いろいろ具体的に決まりかけたところ、 このコロナ禍、飲食業界の苦境。 オーセンティックバーも、 “それどころではない”状況となり、 つい先週、無期限延期となった。
これから先どうなるかは見えない。 が、再び動き出すことを願い、 ここにコミュニティのネーミングと 発足趣意文を書き残して置きたいと思った。
以下、文中の「わたし」とは、Tさんである。
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バーでつながる、いいお客と、いいお店。
Bar Community “CLOSED”
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Bar Community “CLOSED”は、 わたしがオーナーを務めるバーにいらした 一人のお客さまとのやりとりが 発端となっています。
その方がみえられたのは、 とある日の夕暮れ時のことでした。 カウンターに座ってジントニックを 注文されるとおもむろに 話しかけてこられたのです。
「不躾にすいませんが、 近くに一人で食事ができるお店があったら 紹介していただけないでしょうか」
お話をお聞きすると、関西圏からの出張で、 この辺りに宿をとるのははじめて。 ホテルに荷物を預けて、 街を散策する途中で看板を 見つけてくださったということでした。
食べログや情報誌でなく、 バーの一店主を頼ってくれたことが なんだかとても嬉しく、 わたしは自分が気に入って通っている 近くのお店を3軒ばかりご紹介しました。 いずれもカウンターが主体で、 店主の顔が見えるお店です。
バーを経営していると こうしたことは時々起こるのですが、 この方の場合はそこで終わりませんでした。 それから数時間後、 ふたたび顔を出してくださったのです。
「紹介いただいたお店、とても良かった。 宿に帰る前に、一言お礼を言いたくてね。 どうもありがとう。で、ついでに一杯だけ」
なんとも愉快なご様子で、 こちらまで幸せな気持ちになりました。
バーはよく止まり木といわれますが、 わたしたちはおいしいお酒を 振る舞うだけでなく、 いいお客さまといいお店をつなぐ 結び目となれるのではないだろうか。
そんなことを思って、 オーナー仲間の何人かに声を掛けると、 皆同じような経験があり、 それぞれ自分の店を構える街場で やってみたいという話に 発展していった次第です。
コミュニティの名前である“CLOSED”は、 なにもかもがオープンにアカラサマに なっていく世の中へのちょっとした反骨心、 ささやかな抵抗の意を込めています。 偉そうな物言いになってしまいますが、 わかってくれる方々とお店だけの コミュニティにしたいと思っているのです。
バー店主たちのわがままを どうぞお許しください。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
バーの灯りよ、今宵も、明日も。

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