日曜日には、ネーミングを掘る ♯132「フォントの話」

今週は!

のっけからお金の話で恐縮であるが、
32年間やってきた私の個人事務所の売上が、
去年、過去最高を記録した。

とはいえ、税金やなにやらを引かれると、
正味の額は知れたものになるのであるが、
この年齢(59歳)になって
まことにありがたいことである。

と、まあ、こんなことを、先日、
10年以上付き合いのあるM社長と話した。

いやいや、すごいじゃないですか。
30代40代のコピーライターは、
そのあたりの話、
きっと聞きたいんじゃないですか。

そうかね。そういうもんかねぇ。

少々戸惑いながら答える。

でも、なんでこれまでやってこれたのか、
正直、自分でもよくわからないんだよ。

へー、そんなもんですかね。
僕、なんとなくわかりますよ。

Mさんは、そう言っていくつかの
理由を挙げてくれたのであるが、
そのうちのひとつが、
私がつくる企画書や提案書の
フォント(書体)についてだった。

佐藤さんのフォント、
毎回、違いますもんね。

たしかに。私はアウトプットに使用する
フォントを1つと定めていない。
「うちはメイリオ」というように
決めているところも多いが、
そのやり方は、どうも好かない。

なぜかというと、
クライアントからお題としていただく課題
(理念なり、ネーミングなり)には、
それらが発する声のようなものが
あると感じるからである。

大きな声、
高らかな声、
どっしりとした声、
柔らかな声、
囁くような声、

僕は、その声を聴き、
声に合ったフォントを選ぶ。
そして声が届きやすいように
級数と太さと字間を調整しながら、
企画書や提案書として仕立てていく。
余計な要素はできるだけ削ぐ。

それは、僕にとって
長年し慣れた当然のことなのだが、
MSゴシックと図版に
まみれたプレゼンシートより、
少しだけ着心地が良いのかもしれない。

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