第90回「非接触かつ広範囲」

このコラムについて
世の中の情報は99%が「現在」または「過去」のものでしょう。たった1%の未来情報をつかめる人だけが、自分のキャリアやビジネスを輝かせるのです。でも、未来情報なんか手に入らないよ!と思ったアナタ。ご安心を。もしアナタが古い体質の会社に勤めているなら超ラッキー。そんな会社の経営者ならビジネスがハネるかも。

未来コンパスが、あなたの知らない未来を指し示します。

 第90回  「非接触かつ広範囲」

イスラエルのテクノロジー企業がすごいとは耳にしていましたが、はじめて彼らの特許に触れました。
技術力の高さはもちろんですが、明細書に書かれている用途がユニークだなと感心しました。


特表2021-529623号(出願人:ネティーラ テクノロジーズ リミテッド)
【発明の名称】生理学的パラメータを検出するサブTHz及びTHzシステム並びにその方法


ネティーラ社は、ミリ波レーダーを用いて、非接触で人間の生体反応を検知する技術を開発したイスラエルのスタートアップです。小型の半導体デバイスに内蔵されたレーダー送受信機により、2メートル離れた人間の心臓や肺の動きを捉えることが可能です。

もともとのターゲット市場は車載用途。
たとえば、シートに埋め込まれたデバイスが、ドライバーの心拍数や呼吸速度を計測し、カメラの映像とあわせて、ドライバーの状態を推測します。「睡眠」の状態と判断すると起きるように警告を出したり、「疲労」と判断すると運転についての注意などを出したりします。将来的には、運転制御システムと連携し、車を駐車させたり、自動運転に切り替えさせたりする判断の“きっかけ”の役目も期待されています。

もちろん医療用もコアターゲットです。パンデミック以降、医療関係者へのコロナ感染を防ぐための非接触ニーズはかつてないほど高まっており、この分野での成長も見込まれています。

未来コンパスが指すミライ

さて、生体反応を検知する技術はこれまでも沢山ある中で、ネティーラ社の技術は「非接触」かつ「広範囲検知」がポイントです。この点を深堀りすると、医療用途やドライバーの状態確認にとどまらない新たなビジネスが見えてきます。

車内の子供置き去り事故の防止
置き去りによる子供の死亡事故。真夏になると毎年耳にする嫌なニュースです。
ネティーラ社の製品が組み込まれれば、「非接触」なので子供にデバイスをつける必要がありません。イコール「付け忘れ」がそもそも起こりません。また、広範囲に子供を検知できるので、車内の大部分をカバー可能です。
仮に車内に子供を置いたままにしても、異常があるとすぐにアラームが届き、最悪の結果を避けられます。

実はこの技術、ドライバーの状態確認を目的として、モーターショー(展示会)ベースでは既に車に搭載された実績があります。車には当然に搭載されるミライが来るかもしれませんね。結果として、子供の置き去り事故が大きく減ってくれることを期待します。

 

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 この記事を書いた人  

八重田 貴司(やえだ たかし)

外資系企業/法務・知財管掌。弁理士。
会社での業務とは別に、中小・ベンチャー企業への知財サポートをライフワークとする。クライアント企業が気づいていない知的財産を最大化させ、上場時の株価を上げたり、高値で会社売却M&Aをしたりと言った”知財を使って会社を跳ねさせること”を目指す。
仕事としても個人としても新しいビジネスに興味があり、尖ったビジネスモデルを見聞きするのが好き。

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