第102回「TIPA」

このコラムについて
世の中の情報は99%が「現在」または「過去」のものでしょう。たった1%の未来情報をつかめる人だけが、自分のキャリアやビジネスを輝かせるのです。でも、未来情報なんか手に入らないよ!と思ったアナタ。ご安心を。もしアナタが古い体質の会社に勤めているなら超ラッキー。そんな会社の経営者ならビジネスがハネるかも。

未来コンパスが、あなたの知らない未来を指し示します。

 第102回  「TIPA」

2020年にレジ袋が有料になりましたが、食品の包装容器などに使われるプラスチックはまだ沢山あります。
日本バイオプラスチック協会によると、世界のプラスチック生産は2019年には4億トンにのぼり、このうちリサイクルされているのは10%弱。回収されたプラスチックゴミの約80%が埋め立てられ、中には海や山へと投棄されているものもあります。海に流れたゴミはいずれマイクロプラスチックとなり、生態系に悪影響を及ぼすことが指摘されています。

この問題を生分解性プラスチックで解決しようとしているのが、TIPAです。


国際登録第1639179号(権利者:TIPA CORP. LTD)
【商標】

【指定商品/役務】(抄訳)
包装用プラスチックフィルム,生物分解性包装材 など


プラスチックは安価かつ容易に加工ができる上に、物質の安定性にも優れているため、広く普及しました。生分解性プラスチックはその安定性をあえて損なわせる点に特徴があります。
1980年代から研究・開発が積極的に進められ、農業用マルチフィルムなどに使用されています。しかし、微生物の働きにより分解される生分解性プラスチックは、環境により分解までに要する期間が異なるため、分解時期を予測するのが難しいという問題があります。長期保管中に分解が進み、使用不能となる可能性もゼロではありません。
このため、生分解性プラスチックを普及させるには、どの時期までプラスチックとしての機能を持たせ、どこで寿命を迎えさせるかを事前に想定することが必要だと言われています。例えば、釣りのルアーや農業用マルチフィルムは目的が達成され次第すぐに分解スタートするのが望ましいですが、ICカードなどは有効期限まで10年近くの寿命が必要といった具合です。

未来コンパスが指すミライ

TIPAが面白いのは、食品やアパレルの包装容器を一つのメインターゲットにし、一般消費者に対して「堆肥として使う」という“処理方法”を訴求している点です。
温度・湿度が適した土に混ぜると半年で崩壊が始まり、1年以内に完全に分解されるとのこと。家庭菜園をしている家庭では自宅用の堆肥として、そうでない家庭では回収にまわし農家の堆肥として使われます。

この堆肥化アピールのメリットはいくつかあります。
まず、一般消費者へのアプローチのため、ブランディングの一環として、環境意識の高いクライアント企業に採用されやすい点です。ハイブランドとの相性が良く、ステラマッカートニーなどに採用されています。
また、おそらくコストを抑える効果もあると思われます。ルアーとICカードの例のように、生分解プラスチックは対象製品の寿命を考えてデザインされることが望まれているため、用途毎に少量多品種になりがちです。ですが、寿命を待たずに堆肥化できるとなれば、厳格な品種分けは必要ないですし、過度な品質管理も不要になるでしょう。

エコに関するビジネスはなかなか普及が難しいですが、海外の企業は、消費者に商品が届くまでの全体の仕組みづくりが上手だなと感心させられます。技術力で勝り、仕組み作りにも長けている企業がミライでは生き残りそうです。

 

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 この記事を書いた人  

八重田 貴司(やえだ たかし)

外資系企業/法務・知財管掌。弁理士。
会社での業務とは別に、中小・ベンチャー企業への知財サポートをライフワークとする。クライアント企業が気づいていない知的財産を最大化させ、上場時の株価を上げたり、高値で会社売却M&Aをしたりと言った”知財を使って会社を跳ねさせること”を目指す。
仕事としても個人としても新しいビジネスに興味があり、尖ったビジネスモデルを見聞きするのが好き。

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