第57回「アラブでアニメやゲームが人気だと聞きましたが本当ですか? 現地の様子について具体的に教えて下さい。」

日本人は中東を「イスラム教の国々」と一括りにしてしまいがち。でも中国・北朝鮮・日本がまったく違う価値観で成り立っているように、中東の国だって様々です。このコンテンツではアラブ首長国連邦(ドバイ)・サウジアラビア・パキスタンという、似て非なる中東の3国でビジネスを行ってきた大西啓介が、ここにしかない「小さなブルーオーシャン」を紹介します。

  質問  
「アラブでアニメやゲームが人気だと聞きましたが本当ですか? 現地の様子について具体的に教えて下さい。」

   回答   

はい、本当です。
ポップカルチャー分野の人気は年々高まりを見せており、関連ビジネスは、質的にも量的にも今後ますます伸びていくと予想されます。

【ポップカルチャーの祭典、MEFCC】

2022年3月4日から6日までの3日間、UAEのアブダビでMEFCC (Middle East Film & Comic Con)というイベントが開催されました。MEFCCとは2012年にドバイで始まった地域最大のポップカルチャーの祭典で、今回が10回目の開催となります。
その名の通り映画やコミックを始めとして、その他のホビー要素すべて(ホラー/SF/ファンタジー小説、アート、アニメ、マンガ、ゲーム、その他おもちゃ等)をひと所に集めて紹介するイベントです。

集客力は高く、『ゲーム・オブ・スローンズ』など有名作品の俳優や、業界の有名人が参加し、日本からはスタジオジブリの元制作デスクの木原浩勝氏が訪れていたようで、2022年はコロナの影響にも関わらず48,000人を動員しています。
近隣諸国だけでなく、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカなど世界中から人が集まりました。

日本からはバンダイナムコがゲームブースに出展し、直近で発売された『エルデンリング』や『スカーレットネクサス』『リトルナイトメア2』といったタイトルを最新のゲームステーションでPRしました。

その他にもコスプレのコンペやゲームトーナメント、各ジャンルの作家達によるワークショップなどが盛況でした。

(↑民族衣装とスパイダーマンの融合)

実写映画やアニメ作品を含めて様々な作品のコスプレイヤーを確認できますが、少し驚いたのは日本でもアニメ放映前のタイミングで『チェンソーマン』のコスプレイヤーがいたことです。
「ファンなら当然」という見方もありますが、アニメから入るわけではなく漫画もチェックしているということで、関心度の高さを示す例だと思います。

こちらの動画の中では現地のコスプレイヤー達が見られます。様々な作品のキャラクターになりきっていますが、日本のアニメでは『鬼滅の刃』『ジョジョの奇妙な冒険』などのコスプレイヤーが確認できます。

【今後盛り上がると思う理由】
ワークショップでは、作品集の出版やショートムービー制作のノウハウが共有されました。
また、コスプレではコンペで勝ち上がると、25,000ディルハム(=約90万円)が賞金としてもらえます。
私のサウジ人の友人も出展側として参加しており、ライブやコスプレショーが盛り上がっているイベント会場の様子が動画で送られてきましたが、そこにはマニアックな人だけでなく、ライトなファンや一般人がたくさん映っていました。
この種のイベントはもはや一部の熱狂的なファンだけのものではなくなっていて、いわゆる「オタク」や「オタク趣味」が世間的に認知され、ノーマルになってきているのを感じさせます。
このようにユーザーの裾野が広がっていくにしたがい、ビジネス規模は拡大していくでしょう。

【どのように展開していけばよいか】
日本アニメとゲームに関しては、日本の作品に対する認知度と信頼性は高く、あとはどうやって現地と接点を持つかがカギとなります。
そういった課題はあるものの、現地でのポップカルチャー熱が盛り上がるにつれて、関連事業に対する問い合わせは増えていくでしょう。
現に、私のところにも既にいくつか事業案件が持ち込まれています。

現地の要望にできる限り対応するとともに、こちらからも提案という形で仕掛けていくことができれば、ビジネス的にもより大きな可能性が広がるのではないかと考えています。
日本の財産であるポップカルチャーをどうやって輸出につなげていくかという戦略を練ることは、アラブに関わる日本人としてやりがいのある仕事の一つです。

 

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 この記事を書いた人  

大西 啓介(おおにし けいすけ) 

大阪外国語大学(現・大阪大学)卒業。在学中はスペイン語専攻。
サウジアラビアやパキスタンといった、どちらかと言えばイスラム感の濃い地域への出張が多い。
ビビりながら中東ビジネスの世界に足を踏み入れるも、現地の人間と文化の面白さにすっかりやられてしまった。

海外進出を考える企業へは、現地コネクションを用いた一次情報の獲得・提供、および市場参入のアドバイスを行っている。
現在はおもに日本製品の輸出販売を行っているが、そろそろ輸入も本格的に始めたい。

写真はサウジアラビアのカフェにて。

【お知らせ】
ポッドキャスト始めました。
中東や東南アジアを中心に、海外の文化(ときどきビジネス)について喋る番組です。
番組名: Friday Airport Lounge
毎週金曜17時更新
https://anchor.fm/friday-airport-lounge

 

2件のコメントがあります

  1. ドバイに来年の3月のアートイベントに参加する元アニメーターです。
    荒木伸吾プロで動画を描いておりました。
    和紙と筆ペンで似顔絵や
    キャプテンハーロック
    銀河鉄道999
    ドクタースランプあられちゃん
    を描くことになってます。

    どうしたら、現地のファンが歓ぶでしょうか。

    似顔絵や画材も持って行こうかと。

    オコソズキンは

    紫色だけどヒジャブのようなので身につけようかと思ってます。

  2. コメントありがとうございます。
    一般的な回答としては、「大きいもの」は喜ばれると思います。単にインパクトが大きいだけでなく、目立つものや派手なものはアイキャッチになりますからSnapchatやTikTok、instagramといったSNSで拡散される傾向にあります。
    また、可能ならライブパフォーマンスを通じてゼロから作品が生み出される制作過程を見せるのも手だと思います。モニターを使えるなら手元を映してもらって、実際の作業風景やスピード、技が見られると面白いのではないでしょうか。
    日本(とそこから来るもの)に対してある種の憧れを持つ方もいるので、作品のタイトルなどは漢字やカナをそのまま使うのも良いかと思います。
    オコソズキンについては現地文化へのリスペクトだけでなく、昔の日本文化との類似性を感じさせる良い選択だと思います。特にアラブ女性はより日本に親しみを感じるかもしれません。

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