第2回 トゥモローゲートが考えるSNSの功罪

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第2回 トゥモローゲートが考えるSNSの功罪

安田

前回、西崎さんは起業前、ワイキューブの競合でもあった人材コンサルティング会社で働かれていたという話が出ました。社名をお聞きして思い出したのですが、けっこうゴリゴリの営業会社だったイメージがあるんです。


西崎

ああ、そうですね、確かにそれは否めません(笑)。

安田

西崎さんも当時はちゃんと会社の風土に従って、ゴリゴリの営業マンだったんですか?


西崎

それも否めないかもしれない(笑)。

安田

笑。言われてみればSNSでのトゥモローゲートも、割と営業会社のイメージですよね。営業ノウハウ系のコンテンツも多いし。ただね、先日大阪のオフィスにお邪魔したでしょう? そのときに私、驚いたんです。全然営業会社っぽくないじゃないかと。


西崎

確かにそうかもしれませんね。実際営業社員は全体の23割程度で、クリエイティブ系の社員の方が多いんです。SNSだと営業会社という印象を持たれることが多いんですが、実態はクリエイティブチーム主体のブランディング支援会社でして。

安田

そうですよね。オフィスも全体的にスタイリッシュな造りで、すごく静かでしたし、「いいアイデアをひらめくための場所」という感じがしました。営業目標の書かれた垂れ幕も貼ってなかったし(笑)。このギャップ、つまりSNSでの印象と実際のオフィスとの印象の差は、意図的なものなんですか?


西崎

意図的と言えば意図的なんですが、今後の課題でもあります。というのも、これはSNSの功罪なんですが、YouTubeXなどは、やっぱり営業系コンテンツの方が数字が伸びるんです。だからそういったコンテンツに注力してきたのがこれまでで。

安田

なるほど。それは端的に、視聴者に営業系の人が多い、パイが大きいってことなんですかね。


西崎

仰るとおりです。Xの発信でも営業社員のポストの方がバズりやすかったりして、フォロワーも自然と増えていく。そうすると皆さんのタイムラインに出てくるトゥモローゲートの投稿も、営業系のものに占められていく。そういう流れですよね。

安田

なるほどなぁ。そして実際、営業系のコンテンツを通じてトゥモローゲートは有名になった。それが要するに功罪の「功」ですよね。一方の「罪」というのが、つまり実態とのギャップだと。


西崎

そういうことです。うちは営業会社として有名になりたいわけではなく、やはりクリエイティブやブランディングで評価いただきたい会社なので。そこを少しずつ軌道修正していきたいなと思っているんです。

安田

ということは、営業系コンテンツは減らしていくんですか。


西崎

ええ、実際最近はYouTubeでも、営業系の発信を控え始めています。その分、制作チームの1日密着とか、顧客との打ち合わせを全公開するとか、そういう方向に力を入れていて。これは先日田端さんからいただいた「トゥモローゲートって結局なんの仕事してる会社かよくわからない」という指摘の影響もありますが(笑)。

安田

なるほど、そういうことも踏まえた方向転換だと。ちなみにクライアント側から「ウチのこともSNSを使って有名にしてくれ!」というような依頼はないんですか? つまり、トゥモローゲートのSNSノウハウを使わせてくれという。


西崎

ああ、そういうご依頼をいただくこともありますよ。SNSマーケティングだけじゃなく、ホームページをかっこよく作り変えてほしいとか、パンフレットだけでいいから作ってくれとか。ただ、現在はそういうお話は全部お断りしているんですよ。

安田

えっ、そうなんですか。それはなぜ?


西崎

以前はそういう単発のお仕事も受けていたんです。採用ホームページを作ったり会社案内を作ったり。でもそれで出せる成果って短期的なものなんですよね。採用サイトのPVを上げるとか、説明会に学生をたくさん呼ぶとか、何人内定を出すとか。

安田

採用ブランディングの会社として、それらができれば充分な気もしますけれど。


西崎

う~ん、でもやっぱり入社して終わりじゃなくて、しっかり定着して働き続けてもらわないと意味がないと思うようになって。

安田

なるほど、なかなか欲張りですね(笑)。ということは、サイトのPVや説明会動員、内定数などじゃない別の指標を置くようになったんですか?


西崎

仰るとおりです。今は採用に限らず会社全体のブランディングをさせてもらっているということもありますが、課題解決の軸は3つあります。1つは当然、「売上」ですよね。

安田

ブランディングをした結果、ちゃんと売上が上がったかどうかを見るわけですね。


西崎

そういうことです。そして2つ目は今も話していた「採用」ですね。どんな人が必要なのかを分析し、それに沿った採用活動を行う。そしての先の3つ目が、「定着」です。そこも軸の一つとして置かせてもらっています。

安田

なるほど。会社のビジョンや方向性を理解し、同じ方向を向いて頑張るためのブランディングということですね。


西崎

まさに仰るとおりです。現在はこの3つの軸すべてでお手伝いできる案件のみお受けしている形です。

安田

今のお話を聞いて思い出したんですが、実はワイキューブが潰れるまでの最後の数年、「ブランド事業」というのをやっていたんです。つまり、顧客向けのブランディングと社内向けのブランディングを両輪でサポートするもので、何となく今のトゥモローゲートさんと似ているような。


西崎

確かにそうかもしれません。ここでも偶然の一致が(笑)。

安田

本当ですね(笑)。ともあれ、当時はSNSなんてものはなかったですから。あの時代は広告を出すか、突拍子もない事をしてマスメディアの取材を受けるか、くらいしか目立つ方法がなかった。そういう意味では西崎さんがやっていることは今っぽいな、新しいなと感じます。


西崎

ありがとうございます。とはいえSNSはあくまで入り口の入り口に過ぎませんからね。実際、課題も山積みなわけで、ぜひ安田さんのお力を借りて解決していければと。

安田

う~ん、なるほど。なかなか荷が重いですけど、頑張ります(笑)。

 


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

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1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数18万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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