vol.114【無限億の泉(2011)|『円』は、命の尊さを伝えてくれるカタチ:縄文と母に学んだこと】

 この記事について 

自分の絵を描いてもらう。そう聞くと肖像画しか思い浮かびませんよね。門間由佳は肖像画ではない“私の絵”を描いてくれる人。人はひとりひとり違います。違った長所があり、違った短所があり、違うテーマをもって生きています。でも人は自分のことがよく分かりません。だからせっかくの長所を活かせない。同じ失敗ばかり繰り返してしまう。いつの間にか目的からズレていってしまう。そんな時、私が立ち返る場所。私が私に向き合える時間。それが門間由佳の描く“私の絵”なのです。一体どうやってストーリーを掘り起こすのか。どのようにして絵を紡いでいくのか。そのプロセスをこのコンテンツで紹介していきます。

『無限億の泉(2011)|【円】は、命の尊さを伝えてくれるカタチ:縄文と母に学んだこと』

 

生きるためにやむなく熊を殺す熊うちの名人が、やはり生きるためにやむなく人を殺す熊のために命を落とす物語。宮沢賢治の『なめとこ山の熊』
動物も人間も同じ目線で語られる考え方は、【円】で世界観を表現した縄文思想にさかのぼれると言われます。

日本の根底に縄文がある、という考えが共有されるようになりましたが、長い間、縄文を扱うのは学問の本道から外れると言われていました。
しかし、2018年に、東京博物館の平成館での「縄文―1万年の美の鼓動」が、日本での縄文ブームの火付けに。縄文文化や縄文思想が注目されて、テレビや本などの資料から身近に触れることができるようになりました。

私自身も、その頃から何度も縄文時代の資料に触れるようになり、自分の両親の田舎である秋田県にも縄文遺跡が残されていることに遅まきながら気がつきました。

そして、動物も人間も同じように尊ぶ縄文の考え方は、今の秋田を生きる人の中に自然に残されてきたのだと、母の言葉を振り返って気がつきました。私自身は、東京に生まれて2歳で神奈川に引っ越し育ってきたのですが、子供時代に飼った動物たちの生死から知らず知らずのうちに、宮沢賢治のような命への考え方を教わっていました。

あるとき、両親の田舎に帰った時に可愛がっていた手乗りインコを一緒に連れていきました。人懐こく誰にでもなれるインコだったので、田舎のお姉さんたちにもすぐ懐いて、たちまちスターになりました。みんなでインコを囲んで夢中になっていたときに、それは起こりました。田舎の飼い猫が、忍び寄ってパクリとインコを食べてしまったのです。ハッと思った時にはもう、インコは死んでいました。「なんで食べちゃうの。ひどい!大っ嫌い!!」泣きじゃくるわたしたちに、母も一緒に涙していましたが、「猫がいる家で、インコを外に出していた私たちがいけない。自然豊かなところで放し飼いの猫でだから本能のままに飛びついたと思うよ。猫を恨んではだめだよ」と、猫を責めませんでした。

猫は猫で、皆に叱られてすぐ自分が間違ったと気がついて、可哀想なくらいしょんぼりとしていたのを覚えています。

実は、その猫も友達でした。私も姉も、田舎に帰るたびに一緒に遊んでいた大切な友達でした。大切な友達に、大切な友達を食べられてしまったのがショックで、その後田舎でどう過ごしたのかはまったく覚えていません。しかし、その時の母の言葉は痛烈に覚えています。

猫の気持ちを考えてごらん。猫の自然から考えれば、猫は悪くないのだよ。だから、許してあげなさい。

宮沢賢治や縄文のように、動物も人間も同じく考える目線が心に染み渡った出来事でした。

平等に感じることは、表現に置き換えると、
なめらかで凹凸のないイメージに表現することができます。
ふんわりと穏やかで優しい感覚です。
全てを同じように包むような世界観です。

その後、【存在、エネルギー】をテーマにする私の絵の中で、円は重要なカタチになりました。最近の縄文文化の資料や本を見て、縄文人が円にこだわっていて、石や貝塚、土手、木などで、そのカタチを表現しようという記念物は、みんな円と関わりを持っていることを知りました。考え方、思想がカタチにあらわれるのは、縄文人も現代に生きる私たちも変わらないのかな、となんだか身近に感じてしまいました。

日本人は、動物だけでなく、身近にある、石、木、水、火月、太陽など自然の中に存在するモノを尊敬して生きて来たと思います。他国から、流れ着いた様々な物も含めて、受け入れながら文化を築いてきた日本。

それは、縄文時代から円の中に、様々なものとの平等なつながりをみることができる、日本人のDNAのように感じます。

円は様々な意味を表現できるカタチなので、また別の物語にも取り上げます。

 

今回完成した作品 ≫『無限億の泉』

 

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 著者の自己紹介 

ビジョンクリエイター/画家の門間由佳です。
私にはたまたま経営者のお客さんが多くいらっしゃいます。大好きな絵を仕事にしようと思ったら、自然にそうなりました。

今、画廊を通さないで直接お客様と出会い、つながるスタイルで【深層ビジョナリープログラム】というオーダー絵画を届けています。
そして絵を見続けたお客様から「収益が増えた」「支店を出せた」「事業の多角化に成功した」「夫婦仲が良くなった」「ずっと伝えられなかった気持ちを家族に伝えられた」「存在意義を噛み締められた」など声をいただいています。

人はテーマを意識することで強みをより生かせるようになります。でも多くの人は自分のテーマに気がついていません。ふと気づいても、すぐに忘れてしまいます。

人生

の節目には様々なテーマが訪れます。

経営に迷った時、ネガティブになりそうな時、新たなステージに向かう時などは、自分のテーマを意識することが大切です。
また、社会人として旅立つ我が子や、やがて大人になって壁にぶつかる孫に、想いと愛情を伝えると、その後の人生の指針となるでしょう。引退した父や母の今までを振り返ることは、ファミリーヒストリーの貴重な機会となります。そして、最も身近な夫や妻へずっと伝えられなかった感謝を伝えることは、絆を強めます。そしてまた、亡くなった親兄弟を、残された家族や友人と偲び語らうことでみなの気持ちが再生されます。

こういった人生の起点となる重要なテーマほど、大切に心の中にしまいこまれてカタチにしづらいものです。

でも、絵にしてあげることで立ち返る場所を手に入れることができます。

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