第131回 自分の商品を誰に売るのか考える

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

 

1ヶ月くらい前だったでしょうか。
YouTubeである動画がふと目に留まり見てみました。

その動画は私の仕事や趣味に全く関連のない動画だったにも関わらず、妙に私の興味を引く魅力があり、気がつくとチャンネルの登録までしていました。

すると、YouTubeは当然そのチャンネルと関連のありそうな動画をおすすめしてくるようになる訳ですが、そこである事に気がついたのです。

それが「似たような動画にも関わらず、おすすめの動画には全く興味が湧かない」という事実。

私が登録したチャンネルの動画とYouTubeのおすすめ動画。
この2つは似たような動画のはずなのに、なぜか後者は見る気にならない。

こんな経験をしたことがあるのは私だけではないような気がします。

では、なぜ似たような動画でも、見たい動画と見る気にならない動画に分かれるのか?
この答えには商売においても同じことが言える、重要なヒントが隠されているような気がするのです。


私が登録しているチャンネルの動画とYouTubeのおすすめ動画。
この2つの動画を比べてみた時に気がつく、唯一の違い。

それは、登録したチャンネルは私に新しい価値を教えてくれた「初めての存在」であるということ。そして、おすすめに出てくる動画とは既に価値を知った私にとって「その他大勢の存在」でしかないということ。

私たちは商売を考える時、自分の商品を必要としているお客さんに対して商売をしようと考えがちです。もちろん、この考え方を否定するつもりはありませんし、間違っているとも思いません。

ただ、ここで重要だと私が思うのは、その商品を必要としているお客さんとは既にその商品の価値を知っているお客さんであり、冒頭に挙げた動画と同じく、既に価値を知っているお客さんに商品を売ろうとしている限り、お客さんにとっての「初めての存在」にはなれない、ということ。

私は自分にカクテルの楽しさを教えてくれたお店の存在を、未だによく覚えています。
これも私にとってカクテルを楽しむ価値というものを教えてくれた「初めての存在」だからであり、初めての存在にはある種親近感にも似た、特別な感情を持ちやすいからだと思うのです。

そう考えるのであれば、確かに商品の価値を知っている人に対して商売をした方が一見、楽そうではあるものの、その思考ではお客さんにとって自分の商品が特別な存在となるのは難しく、逆に言うなら、商品の価値に気づいていない人に対して商売をすれば、決して売るのは楽ではないものの価値を伝えることさえできれば、自分の商品は特別な存在になれるということ。

すでに商品の価値を知っている人を対象に商売を考えるのか。
まだ商品の価値を知らない人を対象に商売を考えるのか。

どちらが正解という答えはありませんが、私自身の経験もふまえて考えるのであれば、やはり後者の選択をすることでお客さんにとって特別な存在になれる商売をした方が自分も楽しく、同時にその他大勢との競争から抜け出せる確かな選択ではないかとYouTubeの体験を通して改めて感じたのです。

 著者の他の記事を見る

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

感想・著者への質問はこちらから