第174回 休日に休んでしまう国

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第174回「休日に休んでしまう国」


安田

日立とパナソニックの週休3日は違う?

久野

違いますね。日立は週休3日になっても給料は下げないので。

安田

パナソニックは下げるんですか。

久野

下げます。ただ日立の場合は働く時間は同じです。つまり1日あたりの労働時間を長くするってことですね。

安田

なるほど。1日の労働時間を長くして、そのぶん休みを増やすのが日立。

久野

そうです。パナソニックは丸々休みにしちゃうけど、その代わり給料も減る。

安田

これは社員が選べるんですか?

久野

パナソニックは選択制ですね。

安田

そりゃそうですよね。給料が減るんだったら。

久野

おそらく日立も選択制だと思います。

安田

社員からしたらどちらが望ましいんでしょう。

久野

社員さんに聞いてみないと分かりませんが、Yahoo!ニュースでは週休3日制自体がめちゃくちゃ不評です。

安田

え!週休3日が不評なんですか。

久野

不評ですね。前向きな意見としては「自己研さんする時間が増える」「ワークライフバランスだよね」って話になるんですけど。

安田

後ろ向きな意見としては?

久野

休みが増えると「お金使うじゃん」みたいな。

安田

自分で選択できるんだから選ばなきゃいいだけでしょう。なぜネガティブな意見が多いのか不思議です。

久野

日立やパナソニックの社員が言ってるわけではないので。

安田

関係ない第三者がそう言ってるってことですね。

久野

これから週休3日が広がってく過程で、「そういうことが心配だよね」というネットの世界感ですね。

安田

自分の会社が週休3日になってから言えよって感じですけど。

久野

そうですね。ただ、やっぱり給与が減るのは不安でしょう。

安田

選ぶ人ってどれぐらい居るんでしょうね。

久野

利用したい人が64.9%みたいです。なので多いのは多いです。

安田

とりあえず1回休んでみて、副業でもしてみればいいんですよ。副業の収入が増えてきたら休みを増やしてもいいし。

久野

いま副業をやろうと思うと、本業が忙し過ぎてできないらしいです。

安田

体も精神状態も本業でへとへとっていう。だからこそ先進的な取り組みだと思うんですけど。会社が選択肢を与えてくれるんですから。

久野

嫌だったら、やんなきゃいいだけですからね。

安田

そうですよ。何が問題なんだろうって感じです。

久野

「選んでいいよと言いながら、無理やり休ませて給料下げるんだろう」みたいな。そういう意見が多いですね。

安田

かなりうがった見方ですよね。

久野

まあ正直、企業側にはそういう思いもあると思いますよ。

安田

あるでしょうね。でも選択肢をつくるのが第一歩で。

久野

私もそう思います。

安田

「副業やってみたらすごく稼げた」「ちょっと収入減ったけど、こっちの方がハッピーだ」みたいな人が出てきて。だんだん休みを取る人が増えていく。

久野

大手はしがみつかれても困るでしょうし。利害は一致してる気がします。

安田

もしかして休みたくない社員が多いんですかね。

久野

どうでしょう。

安田

休日でも家で「何もしなくていい」というわけにいかないし。「外で仕事をやってる方が楽」って人もいるかもしれませんよ。

久野

奥さんはうれしいかもしれないですけどね。家のこと手伝ってくれたら。

安田

逆に手伝いもせずに、休みが増えてゴロゴロされても困るでしょう。

久野

そうですよね。

安田

久野さんが社員だったら週休3日を選びますか?

久野

私だったら週休3日にして、1日はぷらっと外に出るんじゃないですか。

安田

どっちのパターンがいいですか。給料を下げて休みを増やすか、他の日にたくさん働くか。

久野

ファーストステップとしては、給与が減らない方がいいですかね。

安田

ほう。

久野

でも実際はどうなんでしょう。ちょっと言い方が悪いですけど、土日に遊んでる人が大半じゃないですか。それが1日増えたところで、勉強したり働いたりするのか。

安田

ダラダラする日が増えるだけだと。

久野

だって稼ぐ努力とか、稼ぐ準備とか、してない人ほとんどじゃないですか。

安田

そうですね。

久野

ただ休みが増えるだけってのは、一番恐ろしいですよ。

安田

たとえば、おいしい店を食べ歩くのも、勉強といえば勉強になります。目的によりますけど。

久野

そういう意識で外食しに行かないですよ。ここの地域ブランディング見に行こうとか。そんな話にならないですもん。

安田

まず自分で会社なり商売なりを、立ち上げるのがいいかも。そしたら気になると思うんですよね。

久野

先にやらないと意識が変わらない気がします。

安田

ですよね。

久野

安田さんならまず会社をつくりますか?

安田

私だったら給料を下げて会社をつくりますね。他の日にたくさん働くのは無理です。1日10時間も拘束されるなんて気が狂います(笑)

久野

そもそも安田さんは会社員に向いてないですよ(笑)

安田

この先、週休3日を導入する会社は増えていくんでしょうか。

久野

まずは様子見じゃないですかね。

安田

まだ様子見ですか。

久野

世間の評判とか、導入した会社がどうなっていくかとか。様子見してる会社は多いと思います。

安田

中小企業はどうなると思いますか。

久野

大手がやり始めると中小企業は従わざるを得ないところがあります。

安田

完全週休2日制もそんな流れでしたよね。

久野

はい。ただ、いったん短くしたものは長くできない。それが日本の恐ろしいところ。

安田

一旦上げた給料を下げられないのと同じですね。

久野

そうなんですよ。「やっぱやめた」みたいな話にはできない。だからかなり慎重だと思います。

安田

今でも世界一祝日が多い国と言われてます。

久野

これだけ休みが増えてくると、ガンガン働いてるアジアの国と戦っていけるのかどうか。

安田

時間で成果を出そうとしてるうちは勝てない気がしますけど。

久野

それが本質ではあるんですけど。日本人は空いた時間に投資する感覚がないから。休みが増えると遊びに行っちゃう。この構造を変えるのが先だと思います。

安田

ひとり1社、自分の会社をつくればいいんです。

久野

かなりハードルは高いと思いますよ。だけどそこを変えないと日本の未来はないでしょうね。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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