あのイーロン・マスクさんが「リモートワークしたいなら会社を辞めろ」って通達したみたいです。
凄いですよね。言えちゃうところが。
久野さんはこの発言に違和感はないですか。
やっぱり経営者の人は、本音ではこうやって言いたいんじゃないですか。
イーロン・マスクって世代の中でも最先端の経営者じゃないですか。月に行こうかって人なのに「出社しろ」なんて言うんですね。
やっぱり成果が上がってないんじゃないですか。
成果が上がってなきゃ給料を払わなければいいだけで。アメリカなら解雇だってできますし。
だから最後通告なんじゃないですか。
なるほど。解雇前の最後通告だと。
最低40時間はオフィスに出勤しろって話でしたね。
工場で働いている人たちに対する「気兼ね」があるとか。
いや、そういう感じじゃないと思う。
単純にパフォーマンスが落ちていると。
一旦リモートワークをやり始めると、できるかも分からないのに「完全フルリモートでいいですか」って人が増えるんです。
リモートが当たり前になっちゃうってことですか。
こっちは仕事ができる前提で雇ってるわけじゃないですか。
そりゃそうでしょうね。
だけど仕事ができなくても「オフィスには行けません」みたいな話になってくる。「来い」って言われたら来ないとまずいと思うんですよ。
「来い」って言ったら来るでしょう。
「来い」って言っても来なかったり、家でダラダラしてるのが目に付いてるんじゃないですか。だからイーロン・マスクもこんなこと言うわけで。
在宅ワークで効率がアップした会社は47%もあるそうですよ。
ちょっと怪し過ぎる数字ですね。
久野さんの感覚としては、リモートを取り入れて生産性が下がってる会社の方が多いですか。
いろんな会社を見ててそう思います。人によるっていうのが正しい答えじゃないですか。
まあ人によりますよね。
こういう数字って誰に聞いたのかも大きくて。リモートワーク賛成派の人に聞くと「リモートワークで効率上がりました」って言いますから。
この手の記事って情報源がめっちゃ曖昧ですよね。
データをどこで切るかですよ。メディアもPVを稼がなきゃいけないので、どうしてもこういう極端な記事になるんです。
聞き方によっても変わりますよね。
結局のところ「どういうデータがほしいか」ってことですよ。
「人によって違う」というのが正しい表現だと。
職種によっても違います。たとえば1人で業務をこなすクリエイティブのような仕事だったら、家にいた方が効率いいじゃないですか。
確かに。
だけどマネジメントが絡むような仕事はきつい。
マネジメントできないってことですか。
たとえば成果が出ない時にどういう対応をするのか。
ちくちく嫌味を言うとか。
そういう人はオンラインではマネジメントできないです。
音声を下げられちゃいそうですよね(笑)
よほどのスキルがないと難しいですよ。
イーロン・マスクも「ムリだ」という結論を出したってことですか。
そう思います。
イーロン・マスクが言うと影響が大きそう。
大きいと思いますよ。
大企業のマネージャーは「それみたことか」って感じでしょうね。あのマスクでさえこう言ってるじゃないかみたいな。
そういうところが一番ダメなんですけど。
ダメですか。
イーロン・マスクが凄いのはこうやってハッキリ言っちゃうこと。日本の場合は世論を見てはっきり言わないわけじゃないですか。そこが大きな違いですよ。
確かに。こんなこと日本の経営者が言ったら叩かれますもんね。
2、3人の反対が出たら「全員が反対してます」ぐらい言われて。「ちーん」みたいな感じになっちゃう。
マスクさんがここまで言うと、日本企業にも影響が出ますか。
もう会社によっては戻りつつありますよ。
やっぱりリモートは無理だと。
完全には戻らないんですけど。「やっぱりこの業種は難しい」とか「この職種はムリだ」とか。企業ベースでいろいろ考えて戻していくと思います。
人によって違うという話でしたけど、どういう人がリモートに向いてるんですか。
自分で仕事が完結できない人は厳しいです。何でもかんでも聞いてくるような人。
そんな人が、そもそもリモートを希望するんですか。
いや、結局そういう人のほうが、リモートを希望しますね。
だって近くに上司がいないと仕事できないんでしょ。
ぐちゃぐちゃ言われたくないんですよ。
ぐちゃぐちゃ言われたくないけど、必要なときには教えてほしいと。
そう。で、あたかも色々考えてるかのように家でダラダラ過ごしてる。会社だったら詰められるんですけど。
リモートは詰めにくいですよね。
オフィスだったら「ちょっと時間かかり過ぎだよ」ぐらい言うじゃないですか。
意外と優しい言い方ですね。
詰める定義もどんどん下がってきてますから。昔はOKだったのが今だと完全にアウトになってて。だからこれぐらいの言い方しかできない。
それでも来させて管理した方がやりやすいってことですか。
数字で判断できる営業とかなら、リモートでもいいと思うんですけど。間接部門は目の前で見ていないと何やっているか分からないので。
考える仕事はどうですか。本当に考えてるかどうかなんて分からないですけど。
自分で完結できるかどうかじゃないですか。会社にいても考えない人はいますし、家でも主体的に考える人は考えるし。
新人でもない限り、自分では「完結してる」と思ってるんじゃないですか。
そこが問題なんですよね。
何か基準を設けるとか。
スキルによってリモートを許可制にするしかないです。
それで納得しますかね。
いや、しないでしょう。言われて気がつく人は既にやってるので。
確かに。
結局できない人がリモートを希望してくるんですよ。だからイーロン・マスクも怒ってるわけで。
久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。