「ポジティブなDXと、ネガティブなDX。」〜お医者さんは、なやんでる。 第104回〜

第104回 「ポジティブなDXと、ネガティブなDX。」

お医者さん
お医者さん
最近は「DX」という言葉が当たり前に使われるようになったな。あらゆる業界の会社が「今はDX!」と言っている印象だ。
お医者さん
お医者さん
その一方で、実際にどんな変革を進めればいいのか、どんなゴールを設定すればいいのか、具合的なところはよくわからないんだよな。
確かに、DXという言葉だけが独り歩きしている感じはしますよね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そうそう、まさにそういう感じだ。単にデジタル化すればいいって話でもない気がするし……って、君は一体?
はじめまして。ドクターアバターの絹川と申します。お医者さんの様々な相談に乗りながら、「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ああ、知り合いの医者から聞いたことがある。よくいる医療コンサルと違って、ユニークな提案をいろいろしてくれるとか。
ありがとうございます。専門は電子カルテの導入ですが、カフェの店長経験なんかもありまして。そういう意味では、普通のコンサルの方とはちょっと違うのかもしれません。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ふうん。ちなみに、いま言っていたDXについてはどう思うんだい?
そうですね。コンビニやスーパーでは無人レジが当たり前になってきていますし、タクシーをスマホアプリで呼べるようになったりと、DXによって世の中は着実に変わってきてますよね。
絹川
絹川
医療業界でも、院外薬局から薬が郵送されたり、診察費用が登録カードから自動決済されるシステムなんかも出てきています。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
うん、たしかにそういう話はよく聞くんだ。だから自分たちも何かやらなければならないと思うんだけど、全体のビジョンと言うか、ゴール設定がよくわからんのだよ。
それは非常によい視点だと思います。ビジョンやゴール設定がなく、「ただデジタル化すればいい」という考えで進める人もいますが、それは本来の意味のDXではないと思いますね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
うん、やっぱりそうだよね。でも、じゃあどんなビジョンやゴール設定をすればいいんだろうか。
個人的にオススメするのは、「患者さんの利便性向上」と「スタッフの生産性向上」の二本立てです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
利便性向上と、生産性向上。
はい。前者で言えば「Webで事前に問診票を提出してもらうことで病院での待ち時間を削減する」、後者で言えば「患者さんが自分で精算できるセルフレジを取り入れることで作業量を減らす」というようなことです。
絹川
絹川
つまり、「患者さんがより便利になること」もしくは「スタッフがよりラクに働けること」のためにデジタル技術を使う、という考え方です。逆に言えば、そういった結果に結びつかない部分は無理にデジタル化する必要はない、と割り切るわけです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ああ、なるほど、DXするかどうかの「基準」を作るわけだ。確かにこれだけで随分と見通しがよくなる。
仰るとおりです。ゴール設定という意味でも、「利便性向上によって患者数を何人増やそう」とか「生産性向上によってスタッフ満足度をこれくらいアップさせよう」といった風に、具体的な設定がしやすくなります。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
確かにそうだ! 期間を区切ってゴールを変えていけば、いろいろな検証ができそうだね。
そうなんです。DXを「人員削減」や「経費削減」の手段と見る向きもありますが、今話したようなポジティブな目標を掲げたほうが、結果的に得るものは大きいと思いますね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そうだね。それでいい結果がついてこれば、余裕ができて新しいことも試せると。
私の知っている病院では最近、待っている患者さんに対するドリンクサービスを始めたと言っていました。それは、スタッフの生産性が上がって余裕ができたからです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
それは素晴らしい。スタッフの生産性向上が患者さんの利便性向上に繋がることもあるってことだね。うん、なんだかDXというものの印象が随分と違ってきたな。ワクワクしてきたよ。
はい。ぜひ楽しみながらDXを進めてください!
絹川
絹川

医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。


著者:ドクターアバター 絹川 裕康

株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。

感想・著者への質問はこちらから