第194回 お金を軽んじさせる戦略

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第194回「お金を軽んじさせる戦略」


安田

給与のデジタル払い?つまりSuicaとかで払えるってことですか。

久野

そうですね。PayPayとか。

安田

じゃあ給料日にチャージされる感じ。

久野

そうそう。給与日にチャージ。

安田

法律では現金で払わないと駄目なんですよね。

久野

そうです。そこを改正して払えるようにしようと。外国人にも便利になります。

安田

なぜ外国人には便利なんですか。

久野

日本で外国の方が口座をつくるのはめちゃくちゃ大変なんですよ。

安田

そうなんですか。

久野

よく笑い話になるんですけど。外国人実習生が日本で口座をつくるために、100均にはんこを買いにいくわけですよ。だけど外国人のはんこなんか売ってないじゃないですか。

安田

確かに(笑)100均にはないでしょうね。

久野

外国人のはんこをつくるネットの専門業者がありまして。そこで注文しないと銀行口座がつくれない。

安田

はんこって意味不明ですよね。なぜサインではいけないのか。

久野

はんこがあっても簡単には出来ないんです。そもそも日本語しか通じないので。誰かが付いていってやってあげないと成立しない。

安田

働きに来てもらう気があるのかないのか。

久野

ほんとそう思いますよ。こんなことを続けてたら誰も来なくなっちゃいます。

安田

給料のデジタル払いがOK になれば、銀行口座も必要ないってことですか。

久野

そういうことですね。

安田

現金で払えばいいんじゃないですか。

久野

本来は現金支払いなんですよ。「同意があれば銀行口座に振り込んでもいいよ」っていう立て付けで。

安田

なんと!銀行振込みも本当はダメなんですか。

久野

原則ダメで本人の同意があればいい。だけど普通は「銀行に振り込んでよ」って思うじゃないですか。

安田

そりゃ思いますよ。

久野

現金でぜんぶ渡されても危ないだけだし。入金するのも面倒くさいし。

安田

なぜ銀行振込みがダメなんですか。

久野

法律がすごく昔に作られてるので。「現物払いを禁止する」というところから来てるんです。白菜とかで給与を払っちゃいけないよっていう。

安田

昔過ぎませんか(笑)小判とかそういう時代の話じゃないですか。

久野

その頃から法律が変わってないっていう認識ですね。

安田

銀行口座なんてなかった頃の法律だと。

久野

後から追加したんですよ。同意があれば振り込んでもいいよって。

安田

日本の法律ってそういう「つぎはぎ」が多いですよね。丸ごと変えちゃえばいいのに。

久野

それが日本のスタンダードですね。

安田

でもついに電子マネーがOKになると。

久野

そうです。PayPayで払える。

安田

ビットコインで払ってもいいんですか。

久野

今のところ駄目ですね。将来はどうなるか分からないですけど。

安田

どういう基準なんですか? 

久野

業者の選定も含めて基準をつくるのはこれからです。手数料なんかは細かくいろいろ制約していくと思います。

安田

なぜデジタルがOKになったんですか。外国人のため?

久野

やっぱり利便性が増しているので。PayPayで保険の手数料を払えたり。

安田

そうなんですか!

久野

はい。自動車税の納付もできるようになってきました。銀行を介さずいろんな引き落としができるようになっていきます。

安田

PayPayやSuicaを発行してる会社は日銀みたいになりますね。通貨発行権を持つってことですよね。

久野

そこはちゃんと規制されていくと思います。監査なりして、ちゃんと見合った金額が円で確保されていないといけないとか。

安田

そりゃそうですよね。私がSuicaの社長だったら、2億ぐらい自分のSuicaにチャージしちゃいそうです。

久野

そういう人はよく捕まってます(笑)

安田

つまり今回の施策は利便性を高めるためですか。

久野

そういう建前ですね。

安田

本当は違うんですか。

久野

日本人は今あまりお金を使わないじゃないですか。

安田

シビアな世の中ですからね。

久野

アメリカではゲームに近い感覚でお金を使うんですよ。キャッシュをあまり使わないので。

安田

クレジットカードか小切手ですよね。

久野

そう。ポイントに近い感覚になるので、より使いやすい。

安田

つまりデジタル通貨を普及させるのは、日本人にお金を使わせることが目的だと。

久野

もっと使うようになっていくんじゃないか、という目論見でしょうね。

安田

Suicaはお金という感じがしないですもんね。ピッと鳴るだけなのでコンビニでけっこう使っちゃいます。

久野

ポイント感覚だと痛みを伴いづらいんですよ。

安田

確かに。気が付いたら減ってて「チャージしなきゃ」みたいな。

久野

たぶん政府はタンス預金を減らしたいんですよ。資産運用にも慣らしていって、お金の概念を変えていきたい。

安田

日本人って変な現金信仰心がありますよね。札の向きを整えたり。新札にわざわざ両替したり。

久野

そうなんですよ。

安田

給料がPayPayやSuicaになったら価値観が変わるかもしれない。

久野

そういう狙いは大きいと思います。

安田

そんなことまで考えてる人がいるんですね。

久野

世界はもうキャッシュレスに向かってますから。

安田

日本も早くそうなってほしいです。紙や金属を持ち歩くのは不合理極まりない。

久野

これがキッカケになるといいんですけど。

安田

なぜ日本はキャッシュレスが浸透しないんでしょう。

久野

まだ手数料が高いというのもあります。いまどき現金しか使えなかったら私は行かないですけど。

安田

行かないですよね。その店じゃなきゃいけない理由がない限り。

久野

若い子ほどそういう感覚になってきてるので、手数料も安くなっていくと思います。

安田

私は使ったことがないんですけど、PayPayってそんなに便利なんですか?

久野

PayPayはすごく便利ですよ。人にお金を渡せますし。

安田

どこがやってるサービスですか。

久野

ソフトバンクじゃないですか。

安田

ソフトバンクですか・・・なんか怖いですね(笑)突然なくなりそう。

久野

大丈夫です。もはやソフトバンクは潰せません(笑)何兆と赤字を出しても潰れないんです。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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