第248回 個人ラーメン1000円の壁

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第248回「個人ラーメン1000円の壁」


安田

ラーメン店の廃業がすごく増えているそうです。

久野

1000円の壁と言われてますね。

安田

そうなんです。1000円でも元が取れないぐらいなのに、値上げができない。

久野

海外に行くと、もう2000円とか、下手したら3000円とかが当たり前なんですけどね。

安田

日本では「安い国民食」みたいになっていて。日高屋とか安いラーメンを出してるじゃないですか。個人店のラーメンとは別物だと思うんですけど。

久野

別物でしょうね。原価も全然違うでしょうし。

安田

回転寿司と高級寿司が棲み分けているように、ラーメンにも高級路線があってもいいと思うんですけど。

久野

ぜんぜんいいんじゃないですか。

安田

だけどそういう記事を書くとめっちゃ叩かれるんです。

久野

どうして叩かれるんですか。

安田

「勝手なこと言うな」って叩かれるみたいです。「ラーメンは安くて美味しいものだ」「今の価格を維持してほしい」って勝手なこと言うんです。

久野

もう1000円以下は無理ですよ。私たちは大手のラーメンチェーンとも付き合ってるんですけど。とんでもなくオートメーションになってます。

安田

でしょうね。個人店なんてみんな手作業ですから。

久野

個人のラーメン屋って、仕込みに7時間8時間かけてやってるわけじゃないですか。これを同じ値段にしたらやばいことになりますよ。本当に。

安田

大手は全部ロボットがやってますからね。

久野

そうなんです。人件費がとにかく高くなっているので。しかも材料費もめちゃくちゃ上がってる。

安田

「高くても美味しいラーメンが食べたい」って人もいるじゃないですか。サッカーの本田圭佑さんが「2000円払ってでも食べたい」「応援したい」って書き込んで。

久野

叩かれましたよね。

安田

はい。あの本田さんでさえ叩かれるわけです。「あなたはお金持ちだからいいですね」って。自分が安く食べたいなら日高屋で食べりゃいいのに。

久野

お金のことを言う人に限って、あんまり義理人情ないじゃないですか。

安田

おっしゃる通り。そんなに好きなら高めに払ってあげればいいのに。

久野

ファンがついている店はどんどん値上げした方がいいと思います。

安田

ですよね。実際に人数を抑えてコースで出す「ゆったり1時間半」「予約OK」というラーメン屋があるらしいです。料金は3500円。

久野

予約ができて、ゆったりコースで食べられるなら、ぜんぜん払いますよ。列に並ぶコストを考えたら安いですよ。

安田

きちんと接客してくれて、通常のラーメン店では味わえないようなメニューが用意されていて。個人店はそっちに行かないともう生き残れない気がします。

久野

個人店で1000円以下のところはホントにやばいと思います。普通に考えたら。

安田

最低でも1500円ぐらいに設定しないと。最低賃金もどんどん上がっていくし。円安で材料費も上がっていくし。

久野

家賃も光熱費も上がっていきますよ。

安田

1000円にして、1050円にして、1100円にして、みたいなことをやるよりも、一気に1500円とか2500円に上げた方がいいですよね。

久野

はい。お客さんをちゃんと絞って、商品力やサービス力を磨く方が絶対いいと思う。

安田

正直に言って、1100円とか1200円だったら、ただ値上げしただけで何にも変わらないと思うんですよ。

久野

でしょうね。単なる値上げで終わりそう。

安田

それよりは一気に値上げして、「今までとは違うサービスや商品」を提供した方が長続きすると思うんですけど。

久野

間違いないですね。そもそもラーメン屋さんは我慢し過ぎですよ。毎日毎日、休む暇もなく仕込みをして、ラーメンを出し続けて。

安田

今後どうなっていくと思いますか?ラーメン業界は。

久野

全体の3%ぐらいが高級店になって、ほとんどは今のまま何も変えずに1年、2年経ってしまうケースの方が多いと思います。

安田

値上げしないと人も雇えないですよ。家族経営で頑張るんでしょうか。

久野

家族で頑張ってる店って意外と潰れちゃったりするんです。

安田

体力勝負ですからね。家族が倒れたら終了ですよ。

久野

精神的にも経済的にもキツくなっていきます。

安田

やっぱり値上げするしかないですよ。

久野

行列ができる店は絶対に値上げした方がいいと思う。本当に食べたい人が食べれなくなっちゃいますもん。

この対談の他の記事を見る



久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

感想・著者への質問はこちらから